トレセン奇譚   作:ライト鯖

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Aブロック第一回戦

シード枠

ミスターシービー

第一試合

カレンチャンVSアドマイヤベガ

第二試合

スマートファルコンVSエイシンフラッシュ

第三試合

スペシャルウィークVSサイレンススズカ

第四試合

カツラギエースVSキングヘイロー 

 

Bブロック第一回戦第一試合

シリウスシンボリVSナリタトップロード

第二試合

トウカイテイオーVSメジロマックイーン

第三試合

タマモクロスVSオグリキャップ

第四試合

ヤエノムテキVSサクラバクシンオー

シード枠

メジロラモーヌ



Aブロックシード戦 ミスターシービーvsアドマイヤベガ

 

 

「アヤベさん、応援してますね!」

 

控え室でナリタトップロードは、アドマイヤベガに、そうエールを送っていた。

 

「ありがとう。貴方の分も、勝ってみせるわ」

 

そのアドマイヤベガの返答に、ナリタトップロードは少し驚いた顔をし、続いて、とても嬉しそうにはにかんだ。

 

「ふふっ。ありがとうございます。頑張って下さい」

「ええ。今年はあのうるさい覇王様がいないのは残念だけれど、私は私で、やりきってみるわ」

「はい!長期任務らしいですが、そろそろ戻ってくるでしょうし、優勝して驚かせちゃいましょう!」

「優勝...フフッ。ええ。そうね。あの人の前に立ちはだかる王様になるわ」

 

どちらが出場するのか分からないほどに元気よく息巻くナリタトップロードと、堪えきれず小さく吹き出すアドマイヤベガ。

二人の間に流れる空気は、とても柔らかく、かつてのアドマイヤベガからは想像も出来ない程だった。

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

「はい!客席で目一杯応援しますから!」

 

小さく、「じゃあ」と手を向け、アドマイヤベガは控え室を出でた。

そうして、舞台がもう見える程の所まで通路を進むと、対戦相手のミスターシービーと鉢合わせる格好となった。

 

「よろしくね。アヤベ」

「ええ。お願いします。シービーさん」

「ウララに回復して貰ったんだ?良いの?決勝まで長いけど」

「消耗したまま、万全の貴方に勝てると驕れる程ではありませんから」

 

アドマイヤベガの返答に、ミスターシービーは楽しそうに微笑し、舞台へと繋がる通路を出でるのだった。

 

『さて、シード戦となりました。如何でしょう。万全に回復したアドマイヤベガ選手とミスターシービー選手の対決ですが』

『奇想天外。シービーはその自由さ故に、アドマイヤベガは術式の面で想定外を出し得る。単純な実力で言えば、一級術師のシービーだろうが、アドマイヤベガ次第であるいは』

『なるほど。ありがとうございます!さて、ではお二方、準備はよろしいでしょうか?』

 

ミスターシービーは手を振り、「オッケー」と、アドマイヤベガはチラリと視線を向け、「ええ」とだけ応えた。

 

『では、Aブロック一回戦シード枠、開始です!』

 

「油断はしないよ」

 

言葉通り、ミスターシービーはいきなり、巨大な水球を練り上げ、アドマイヤベガに真っ向、向かわせた。

 

「たて」

 

アドマイヤベガは冷静にたて座、つまり盾を出現させ、自身の正面を防御する。

知識と想像力によって星座の神話や、或いは星座の象る事物を呪力で顕現させる彼女の術式は、手数が強みだ。

それ故、彼女は、攻め続けることを選択した。

 

「鷲!」

 

水球を防いだ直後、鷲へと盾を変貌させ、ミスターシービーへと逆襲させる。

 

"水蛟(みずち)"

 

だが、ミスターシービーは蛇のようにうねる水流で鷲の勢いを殺し、そのまま呪力体である鷲を躱して、直接アドマイヤベガへと攻撃の手を向ける。

 

(あの呪力体は狙うだけ無駄。むしろ術者本体を!)

「そう来るわよね」 

 

アドマイヤベガは、その動きを予想していた。

 

「私の術式、一度解除し、再出現させる場合、私の周囲1メートル以内じゃないと出現させられないんですよ」

「!」

 

ミスターシービーの眼前に鼓星(オリオン座)が出現し、彼の棍棒による攻撃を受けてしまう。

 

「...!」

 

咄嗟に腕で防御したものの、オリオンの力は想定以上に強く、後ろに飛び退く形で勢いを相殺せざるを得なかった。

 

「まだまだ!英仙(ペルセウス)

 

ゴルゴンの頭で、ミスターシービーの動きを止めようとしたアドマイヤベガだったが、此方は上手く視線から逃れられてしまった。

 

"瑞水瀑布(ずいすいばくふ)"

 

ミスターシービーは空中へと回避の為に飛び上がっており、そのままそこから、滝のような水流をアドマイヤベガへとぶつける。

 

「っ...!」

 

盾は間に合わず、ペルセウスの背後に

隠れる形でやり過ごしたものの、ノーダメージというわけには行かない。

 

「獅子」

 

だが、アドマイヤベガは攻撃の手を緩めない。

 

「おっと」

 

軽やかな身のこなしで獅子の爪を踊るように避けるミスターシービーに、アドマイヤベガ本人も、加勢せんと、駆け出した。

しかし。

 

「砲水」

 

最初のモノよりも巨大な水球が、大砲のようにして撃ち込まれたことで、アドマイヤベガの足は止まってしまう。

 

「やあっ!」

 

そして、ミスターシービー自身が空を回転しながら跳躍し、アドマイヤベガにその足を向けた。

 

(一撃一撃が重い!)

 

ミスターシービーの飛び蹴りを腕で防ぐも、体勢を崩され、よろめいてしまう。

 

「ねえ。何で領域使わないの?」

 

攻撃を仕掛けながら尋ねるミスターシービー。

 

「万全の状態じゃなきゃ、貴方には勝てない。けれど、ここで出し尽くしたら、優勝出来ませんから」

「へえ?良いね!なら、もっと楽しもうか!」

 

アドマイヤベガの目に、未だ強い戦意の宿っていることにミスターシービーは純粋な子供のような目で喜びを現した。

 

「私も同じだよ」

 

彼女はそのまま、水流を練り、アドマイヤベガを呑み込ませた。

 

「あっ...!」

 

突然水中に投げ出されたような格好となったアドマイヤベガは、流れる濁流の中、咄嗟にうお座を顕現させ、自身の身体を濁流の外へと運ばせる。

 

「はあっ!」

 

そしてそのままペルセウスの剣でもって、ミスターシービーへ斬り込む。

 

「くっ!」

 

斬撃を受けたミスターシービーは、笑顔を崩さないながらも、一粒の汗を頬に流しており、ギリギリの回避であったことを、小さく物語っている。

 

「鼓星!」

 

ペルセウスの剣を投げ付けると同時、それをオリオンへと変化させたことで、圧倒的な腕力を有する高速度の物体がミスターシービーを襲うこととなった。

 

「やばっ」

 

呪力で最大限度まで身体強化しオリオンを受け止めるが、その力の強さに、彼女の身体は押されるようにして後退る。

 

(少しの隙を作れば、その間に畳み掛けられてしまう。強い...)

「でもっ!」

 

"術式反転 閼伽"

 

オリオンと組み合うその掌から反転させた術式を発することで、呪力体であるオリオンは耐えきれず、損傷を負う。

隙に、ミスターシービーはオリオンを躱し、再度、アドマイヤベガへ直接しかけに行った。

 

「瑞水瀑布!」

 

オリオンの解除が間に合わず、今度こそアドマイヤベガは、ミスターシービーの術式を完全な形でその身に受けざるを得なくなったのだった。

 

「....!」

 

しかし、彼女は膝をつくも、倒れない。

 

「やるね。なら、これで!」

 

ミスターシービーはその指を、アドマイヤベガに照準を合わせるようにして向けた。

 

「術式反転━━」

 

(私は...まだ...!)

 

よろめく身体を起こそうと踠くアドマイヤベガの耳に届く、一人の声援。

 

「アヤベさーーん!!」

(トップロードさん..)

「私は!」

(ここで負けたらもともこもない。こうなれば、一か八か!)

 

アドマイヤベガは、確実に勝つための手段を━━。

 

「ぐっ...」

 

だが、畳み掛けるようにミスターシービーの攻撃が襲う。

 

「お返しだよ」

 

アドマイヤベガは満身創痍となりながらも、どうにか構えは崩さず、掌印を維持していた。

 

「領域..展か...」

 

しかし、いくら呪力が回復したばかりといっても、領域による脳の負荷は治癒されるわけではない。

つい先程行ったばかりの領域展開を、再度強行することは、著しい負担を術者にかける。

そして、その負荷は、大きくダメージを負っていたアドマイヤベガに耐えられるものではなかったのだ。

 

「.....」

 

ドサッと、その場に力なく倒れてしまう。

 

『アドマイヤベガ選手、ダウン!10カウントを始めます!1...2...3...4...』

 

アグネスデジタルにより、カウントが進められていく。

 

『8...9...10...ノックアウト!アドマイヤベガ選手行動不能。ミスターシービー選手の勝利です!』

 

アグネスデジタルの実況と共に、観客席は盛り上がりを見せる。

アドマイヤベガは、しかし、悔しそうに、倒れながら拳を強く握り締めていた。

 

「アヤベ。良い試合だったよ」

 

ミスターシービーが、彼女に肩を貸し、立ち上がるのを手助けする。

 

「ありがとうございます..」

「またやろう。次も楽しみにしてるね」

 

ミスターシービーのあっけらかんとした様子に、思わずアドマイヤベガも緩んでしまい、「ええ」と自然、漏れ出るのであった。

 

 

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