トレセン奇譚   作:ライト鯖

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Aブロック第一回戦

シード枠

ミスターシービー

第一試合

カレンチャンVSアドマイヤベガ

第二試合

スマートファルコンVSエイシンフラッシュ

第三試合

スペシャルウィークVSサイレンススズカ

第四試合

カツラギエースVSキングヘイロー 

 

Bブロック第一回戦第一試合

シリウスシンボリVSナリタトップロード

第二試合

トウカイテイオーVSメジロマックイーン

第三試合

タマモクロスVSオグリキャップ

第四試合

ヤエノムテキVSサクラバクシンオー

シード枠

メジロラモーヌ



Bブロックシード戦 メジロラモーヌvsヤエノムテキ

 

「よろしくお願い致します。ラモーヌさん」

 

ヤエノムテキは慇懃に頭を下げ、メジロラモーヌと向き合った。

 

(バクシンオーさんのスピードに反応すら出来なかった私が果たして何処までやれるか...いや、何を弱気な!勝つ。勝たなければ!)

 

彼女は、内心の動揺も、逡巡もおくびに出すことはなく、しっかりと、メジロラモーヌを見据えていた。

そして、そんな彼女を見透かすように、メジロラモーヌは微笑する。

 

「よろしくてよ。さあ、貴方の愛を見せてくださる?」

 

『Bブロックシード戦、開始です!』

 

ヤエノムテキは、先制を仕掛ける。

とはいっても、攻撃を直接しかけたわけではない。

 

"金剛八重垣流"

 

彼女が幼い頃より修練に励んできた武道の一流派である。

そこに彼女が自身の手で、呪力と呪術を絡め、独自に磨き上げ、呪い相手にも通用する戦い方へと昇華させた。

かの流派は守護に重きをおくものであり、ヤエノムテキによるその我流とも言える呪術を絡ませる修練は、流派の目的に叶うとして、師範も協力している。

 

八重礎石(やえのそせき)

 

シン・陰流簡易領域の基となった、彌虚葛籠から着想を得た技であり、掌印をシン・陰は刀を構える動作としているように、彼女は自身の、金剛八重垣流の構えを掌印に相当させたのだ。

これは、長い修練を積んだ果てに彼女がたどり着いた一つの極致であり、シン・陰を除き簡易領域を唯一体系化させたと言えるだろう。

とはいっても、不完全なモノであり、オート迎撃などは備わっていない。

単純に自身の身体能力強化や、領域に対抗、若しくは相手の術式を弱めるためのものでしかない。

だが、しかし、メジロラモーヌ、彼女との戦いに置いてはかなりの効果を発揮するだろう。

 

「はあっ!」

 

オート迎撃がないとは言っても、八重礎石の範囲内に入ってきた呪力は、彼女の感知するところとなるため、あるとないとでは反撃や回避に大きな違いが産まれる。

ヤエノムテキは、メジロラモーヌの飛ばした烏からの攻撃を防いでいた。

黒鳥操術

メジロラモーヌの術式である。

烏を自在に操ることが出来る、というものだ。

自身の周囲にはばたかせていた6羽の烏を、ヤエノムテキに向かわせる。

 

「はあっ!」

 

次々飛び来るカラスを払いきったヤエノムテキは、構えを整え、拳を繰り出した。

ヤエノムテキは、術式も持ってはいるが一対一での戦闘では意味のない、マーキングした相手の視界に干渉し、敵と味方の姿が入れ替わって見えるようになる、という術式である。

故に彼女は、金剛八重垣流で以て戦う他ないのである。

 

ヤエノムテキの拳を、自身の得物を模造した斧を模した武器で受け止めたメジロラモーヌは、そのまま得物を振り抜き、ヤエノムテキに直撃させる。

 

「くっ!」

 

ヤエノムテキはそこで退くことなく、低くなった姿勢を利用し、足払いでメジロラモーヌの体勢を崩すことを狙う。

だがこれは避けられてしまい、逆に斧を振り下ろされる格好となり、危機に陥ってしまった。

どうにか転がるようにして避けたヤエノムテキは、バク転で素早く立ち上がる。

 

「あら、良い動きをなさるのね」

「まだまだこんなものではありません!」

 

メジロラモーヌの追撃を、ヤエノムテキは呪力で固めた拳で相殺する。

 

「"金剛八重垣流"の技術と、私の呪力で!」

 

勢いそのまま彼女は正拳突きを繰り出した。

 

「!」

 

斧で受けたメジロラモーヌだったが、数メートル程足を滑らせ、後背へ退かされる。

 

「覚悟!」

 

踏み込み、ウマ娘の脚力で飛び込むヤエノムテキ。

 

「良いわね。でも...」

 

ゴウッと風を切る音を立て、烏がヤエノムテキとメジロラモーヌの間に飛び込み、ヤエノムテキの拳を受け止めた。

 

「余り、烏を減らしたくはなかったのだけれど...負けては、見られないものね」

 

メジロラモーヌがそう呟くと同時に、一羽の烏がヤエノムテキに向かって突進を始めた。

 

「八重礎石!」

 

構えを取るヤエノムテキに、メジロラモーヌは微笑を向ける。

 

「楽しかったわ」

 

同時に、ヤエノムテキは、拳で受け、払い除けようとした烏に逆に腕を弾かれていた。

 

「はっ..」

神風(バードストライク)

 

烏の命を対価とした縛りを術式によって烏に強制的に結ばせることで本来微弱な動物の呪力を爆発的に高めるその技は、ヤエノムテキの呪力では防ぎきることが出来なかった。

彼女は、腹に受けた衝撃に、自身の胴が吹き飛ばされたような錯覚を覚えながら、崩れ落ちるように、倒れてしまう。

近くに落ちた烏はまだ息があった。

完全に命を捨てさせてしまった場合、特級呪霊を一撃で祓える程の威力となり、致命傷を与えかねない為、大怪我程度で済むよう調整していたのである。

 

しかし、その衝撃は凄まじいもので、ヤエノムテキは立ち上がることが出来ないようだった。

 

『勝者は、メジロラモーヌ選手!!』

 

会場は盛り上がりを見せ、メジロラモーヌは悠々、退場していく。

ヤエノムテキもどうにかといった様子で立ち上がり、舞台から繋がる地下通路へと向かっていった。

 

『これにて一回戦は終了です!午後からはAブロック二回戦。ミスターシービー選手対エイシンフラッシュ選手からです!』

 

「...申し訳ありません...師範..また、私は..」

 

ざわめきを湛える会場の空気が漏れ聞こえてくる地下通路にて、ヤエノムテキは、師範にそう頭を下げていた。

 

「いや、お主は良くやっていた。激情に身を委ねることもなく、かといって固すぎたわけでもない明鏡止水と己の烈火を良く制御していた」

「ですが、結果は...」

「結果は結果。だが、負けたからといって謝る必要もあるまい。ヤエノ、お主は既に省みているのだろう。先程の戦いを」

「...はい」

「ならば、次を目指せ。立ち止まっている暇はないぞ。今回は試合だったが、明日からはまた実戦なのだからな」

「!...はい!」

 

ヤエノムテキは、拳を握り締め、己の決意を新たにするのだった。

 

ある山中

 

「はあ。全く、何故今日に限って任務が入っているのかしら...我が君に大会での活躍を見ていただきたかったのですが」

 

金色の美しい髪に、真っ直ぐな瞳、騎士然とした佇まいを心掛けているウマ娘、デュランダルは、自身が君主と仰ぐトレーナーに直接活躍を見て貰える機会であった学園内交流大会の日に、任務が入ったことを愚痴りながら、山道を歩んでいた。

 

(いえ、集中しないと。それに、任務を上手くやったと報告すれば、きっと褒めてくれる)

 

"我が君"からの褒め言葉を夢想しつつ、彼女は更に奥へとわけいっていく。

 

「さて、予測だとこの辺りのはず」

 

昼間であるのに木々によって遮られ、薄暗い空間。

彼女は突如嫌な空気を感じ、立ち止まった。

 

「何奴!」

 

持参した剣の呪具を抜いた瞬間、背後に気配が現れる。

 

「はっ!」

 

ビュン、と剣が空を斬り、そのまま、背後を襲った呪霊も真二つにされていた。

 

「低級呪霊...いや、しかし..」

 

気配の正体はこの程度の呪霊ではない、と周囲を警戒するべく、振り向いたデュランダルの真ん前に、怪しげな風貌の男が立っていた。

 

「いや~やっぱりトレセンの術師は適当な呪霊に奇襲させる程度じゃ意味ないね」

「何者だ!」

 

デュランダルは剣を構え、詰問する。 

 

「答えないよ。そっちこそ、何故、ここに来た?」

「答えるはずないでしょう」

「尤もだ。仕方ない。では、ここで倒れて貰うとしようか」

 

彼の言葉と共にどうやって気配を消していたのか茂みの奥から複数の呪霊、それも恐らく二級や準一級も含まれる、が飛び出し、デュランダルへと飛びかかった。

 

「我が聖剣の前に、この程度!」

 

素早く剣を一閃し、比較的弱い呪霊を一度に祓い、二級呪霊や準一級にも斬撃を与える。

 

「オリヴィエの飛翔(はばたき)!」

 

独自の技名を叫びながら、デュランダルは呪霊の攻撃を、跳んで避け、そのまま凄まじい勢いの突きを繰り出した。

 

「サロモンの断章!」

 

激しい動きの中でも崩れない、直線のごとき一閃で、準一級呪霊の身体を泣き別れとさせる。

 

「ははっ。強いなあ。これは...」

 

男がパチン、と指を鳴らすと、まだ残っていた幾らかの呪霊達は一旦動きを止め、デュランダルから距離を取る、そして、それを合図としたかのように、今度は一目で強力と分かる、恐らく一級呪霊が二体、現れた。

 

「何?!」

(くっ...この数を相手にしながらこの二体を...)

 

一筋の汗がデュランダルの頬を伝う。

 

「私は、騎士。聖剣デュランダル。呪いになど、負けはしない!」

 

自身に言い聞かせるように、そして奮い立たせるようにして彼女は名乗り、呪霊の群れに挑むのであった。

 

 

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