トレセン奇譚   作:ライト鯖

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Aブロック第二回戦

第一試合

ミスターシービーvsエイシンフラッシュ

第二試合

カツラギエースvsスペシャルウィーク

Bブロック第二回戦第一試合

シリウスシンボリvsメジロマックイーン

第二試合

タマモクロスvsメジロラモーヌ




Aブロック 二回戦第一試合 ミスターシービーvsエイシンフラッシュ

 

「はあ!」

 

剣を振るい、呪霊の群れを、息を切らせながらも捌き続けるデュランダル。

しかし、一級呪霊に対して有効打を与える隙を得られず、拮抗状態となっていた。

 

「オゲンブリックスラッシュ!」

 

(先程から技名を叫んではいるが、術式やらが発動しているようには見えんな...ただの剣技か?)

 

怪しげな風貌の男、呪詛師は、デュランダルの戦闘を安全圏から眺めながら、分析をしていた。

 

「...っ!」

 

ギリギリの所を剣で受け、僅かにバランスを崩した所を、一級呪霊の攻撃が飛んでくる。

デュランダルは、肩に呪霊の爪にひっかかれ、剣を取り落としてしまった。

 

「しまっ..」

 

咄嗟に剣を拾おうとするも、呪霊に阻まれ、むしろ距離を離されてしまう。

 

「君、何で術式使わないの?」

 

呪詛師は、落とされた剣を拾い、状態を確かめながら心底不思議そうにデュランダルに尋ねた。

 

「もしかして、術式ないタイプ?」

「...今は必要ないだけよ。剣、返して貰えるかしら?」

「返すと思う?」

 

ニヤリと笑いながら呪詛師は剣の切っ先をデュランダルの方へと向けて見せた。

 

「必要ない、ねえ。そんな余裕ないと思うけど」

 

呪詛師は、呪霊らをまずけしかけ、デュランダルの行動選択肢を狭めさせる。

左右への回避は不能となったタイミングで、自身がデュランダルから奪った剣でもって、斬りかかりに行った。

 

「美味しい所はいただいとかないとなあ!」

 

呪詛師は、既に決着はついたとばかりに油断しているようで、止めは自分が、と前に出たのだろう。

だが、デュランダルは振りかざされる剣を躱す素振りを一切見せていなかった。

呪詛師がその違和感に気付いた瞬間、デュランダルは、残されていた剣の鞘を自身の前へとかざしていた。

 

眩授光明(がんじゅこうみょう)

 

彼女がそう唱えると同時、木々によって薄暗かった周辺が、稲妻が轟いた時のように、白く輝いた。

 

「なっ!?」

 

呪詛師は、強い光に視界を奪われ、混乱と共に身体のバランスを崩した。

デュランダルに足を払われていたのだ。

 

「返して頂くわ」

 

呪詛師が思わず目を、手で覆ったことで再び地面に落ちた剣を、今度こそデュランダルは拾い、取り返すことに成功したのだった。

 

「貴様...術式を...!何故...?!」

「言ったでしょう。今は使う必要がなかった、と。呪霊相手には大して意味がないもの。私の術式は」

 

デュランダルの術式は、触れたモノを一瞬強く光らせる、という術式である。

呪力消費もそれなりに大きい割には大して意味のない術式であるため、使い処が非常に限られている。

こと、呪霊との戦闘においては余り意味を為さないタイミングが多い。

むしろ、対人戦においては撹乱として光る術式だ。

しかし、一度使えば対策されやすいという難点も抱えている為、呪詛師が直接デュランダルに攻撃を加えるタイミングまで、使用してこなかったのだ。

 

「さて、形勢逆転、かしら?呪霊に指示を出しているのも貴方なのでしょう?」

 

デュランダルは、切っ先を呪詛師の喉に付けながら、ゆっくりと、顔を持ち上げた。

 

「トレセン学園の生徒を執拗に狙っているのは貴方?それとも他にも仲間はいるの?」

「はっ...やっぱ勘づかれてるのな..」

 

呪霊は、動かず、行く末を見守るようにして待機している。

恐らく、低級は呪詛師に操られて、等級の高いのは呪詛師が重要な協力相手なのだろう、人質として呪詛師が効いている様子だ。

 

「話して貰うわよ。洗いざらい全部ね。それとも、この剣の切れ味を体感してみる?」

「...言うはずないだろう」

「そう...まあ、連行するから良いわ。どうせ話したくなるでしょうし」

 

デュランダルは、呪詛師の喉を地面に下ろし、剣を背中へと移動させた。

 

「さ、拘束するから、大人しくなさい」

 

しかし、呪詛師はなおも、余裕な態度を崩していなかった。

 

「くくく...」

 

怪しげに笑ったかと思うと、こう、高らか叫んだ。

 

「隠す意味は無さそうだ!!」

 

瞬間。

幾つもの巨大な呪力が沸き上がるようにして現れ、デュランダルもそれを感知していた。

 

「まさかまだ?!」

 

剣を構えたデュランダルの目の前にある茂みから、新たな呪霊が姿を現す。

 

「消エなあああ!」

(言葉を...!)

 

デュランダルの剣は、呪霊の身体を斬ることに成功する。

 

「ワルキューレの剣戟!」

 

更に背後へと、身体を捩り、剣を振り抜いた。

 

「私が気配に気付かぬとでも...っ?!」 

 

振り抜いた筈の剣は、呪霊の身体に押し止められていた。

 

「気付かれても問題ないからだよ」

 

流暢に、その巌のような見目をした呪霊は言葉を発した。

 

(嘘でしょう。この呪具自体がかなりのモノで、私の膂力も合わさっているのに、無傷どころか..)

 

「オリビエの飛翔(はばたき)!」

 

斬るのがダメならと突きを繰り出すが、ガキン、と岩肌にぶつけたような音と共に剣が弾かれてしまう。

 

「殺すなよ?そいつ"も"人形にしちまおう。スペアはあった方が良いからな」

 

呪詛師が、デュランダルの剣を弾いた巌の呪霊にそう注文をした。

 

「分かっている。気絶でもしてもらおうか」

 

デュランダルは、呪霊の攻撃を見きろうと、目の前の呪霊に集中した。

 

「キいェえあア」

 

それ故に、背後から襲い来る呪霊への反応が遅れた。

 

「しまっ...!」

 

低級とは言え、意識していなかった背後からの奇襲を受け、グラリと身体の重心が揺らいでしまう。

そしてそこに、巌のような呪霊の振り下ろした拳を受ける。

デュランダルは、頭に受けたその二つの衝撃によって、視界が揺らぎ、そして、フラリ、と転んだように勢いよく、地面に倒れ落ちるのだった。

 

 

同刻

トレセン学園

 

『さあさあ、二回戦の初戦はこの方々!ミスターシービー選手vsエイシンフラッシュ選手!』

『観客も選手も、食事を挟んだおかげか、元気溌剌といった様子だな。シービーは連戦に近い形となるが、果たしてそれがどうでるか』

 

アグネスデジタルの興奮気味で送られる実況と、シンボリルドルフの解説をバックに、ミスターシービーとエイシンフラッシュが舞台へと上がる。

 

「よろしくね。フラッシュ」

「ええ。Lasst uns ein gutes Spiel haben. 良い試合にしましょう」

 

『では、二回戦第一試合、開始です!』

 

"十劃呪法"

 

エイシンフラッシュは模造刀でミスターシービーの体躯を6:4に分割した点目掛け、突きを繰り出した。

 

「ふっ!」

 

ミスターシービーは軽やかに躱し、そのまま蹴りで、エイシンフラッシュを狙う。

エイシンフラッシュも、これは楽々と避けてみせた。

 

"玉水法律術(たまみずのほうじゅつ)"

 

「バン!」

 

手を鉄砲を模した形とし、指先から水球を高速で発射する。

 

「っ!」

 

水球は予想外のスピードであったため、エイシンフラッシュは完全に避けきることが出来ず、彼女の頬を掠めていった。

 

「冗談みたいだけど速いでしょ?水を圧縮して放つと速度も威力も上がるんだ」

 

言いながらミスターシービーはエイシンフラッシュとの距離を詰めており、エイシンフラッシュは咄嗟に模造刀を振り抜き威嚇。

ミスターシービーの動きを封じた。

 

「砲水」

 

だが、ミスターシービーは間髪いれずに遠距離攻撃を仕掛ける。

後方へ飛び退き避けるも、空中で身動きの取り辛い状態となり、そのタイミングをミスターシービーに付かれてしまう。

 

「瑞水瀑布」

 

巨大な水流がエイシンフラッシュを覆い尽くし、観客席に貼られた結界に激流が衝突、激しい衝撃が、結界越しに観客席にも伝わる。

 

勝負は決したかに思われたが、エイシンフラッシュは場外へと飛ばされてはおらず、どうにか着地し、それと同時にミスターシービーに向かって、模造刀を構え、飛びかかっていた。

 

(バカ正直に突撃しても、いなされるだけ。なら...)

 

ミスターシービーに直接攻撃を仕掛けるかのような動きを見せながら、模造刀を握るのとは反対の手を握り締め、瞬時に地面へ振りかぶる。

 

「十劃呪法 瓦落瓦落!」

 

周辺の舞台は舞い散る瓦礫へ様変わりし、ミスターシービーの視界を遮った。

 

(撹乱?...でも、呪力の濃さで君の動きは分かっている)

「後ろ!」

 

振り向き様に水球を発射したミスターシービーの視界に、エイシンフラッシュは写っていなかった。

彼女が破壊したのは、拳大の瓦礫。

それも、砕かれてからでも分かるほどにかなりの呪力が籠められた。

 

(まさか...!)

 

バッと上を見上げたミスターシービーは、影に覆われていた。

 

(飛び散る瓦礫にも呪力が走っているから、上に飛んだことに気付けなかったのか..!)

 

エイシンフラッシュは瞬時にミスターシービーの背後へ回り、呪力を籠めた瓦礫を落とし、同時に、かなりの高さまで打ち上げられていた他の瓦礫に紛れるように、跳躍していた。

この数秒にも満たない攻防で、エイシンフラッシュに勝利の女神が微笑んだ。

 

(仕方ない...呪力を出来るだけ温存しときたかったけど...)

 

かに思えた。

 

「術式反転 "閼伽"!」

 

広範囲に術式反転、閼伽を、降り注ぐ瓦礫やエイシンフラッシュを受け止める皿のようにして発動し、それによって瓦礫に籠っていた呪力は打ち消され、エイシンフラッシュもダメージを負わされてしまった。

 

「瑞水瀑布」

 

空中で身体の自由を奪われる形となったエイシンフラッシュは、その水流を凌ぐことは出来ず、直撃。

場外へと吹き飛ばされるのだった。

 

『エイシンフラッシュ選手場外。勝者、ミスターシービー選手!』

『善戦健闘。エイシンフラッシュは等級も上なシービーによく食らい付いた戦いだった。シービーの反応があと少し遅れていれば分からなかったかもしれないね』

 

「楽しかったよ。フラッシュ」

「私も...良き学びとなりました。ありがとうございます」

 

エイシンフラッシュの差し出した手をミスターシービーが握り、二回戦第一試合は幕を閉じるのだった。

 

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