トレセン奇譚   作:ライト鯖

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Aブロック第二回戦

第一試合

ミスターシービーvsエイシンフラッシュ

第二試合

カツラギエースvsスペシャルウィーク

Bブロック第二回戦第一試合

シリウスシンボリvsメジロマックイーン

第二試合

タマモクロスvsメジロラモーヌ



Aブロック二回戦第二試合 カツラギエースvsスペシャルウィーク

 

ある山中。

 

気を失ったデュランダルは、呪詛師率いる呪霊集団にその身体を持ち上げられ、どこかへ運ばれようとしていた。

 

「よし。良いぞ。転送してくれ」

 

呪詛師が、転送系の術式を持っている呪霊に声をかけた。

それとほぼ同時に、彼らは此方へと向かってくる呪力を関知し、其方へ全員が注意を向けた。

 

「何...」

 

呪詛師が言い終えるよりも速く、ドガンと岩の砕けるような爆音が響き、土煙が舞い散る。

 

そして、土煙が多少散り、視界がクリアとなった呪詛師は、目の前にいた筈の巌のような呪霊の姿が無くなっていることに気が付いた。

 

「は...?」

 

崩れた土の形からして、何かが飛んできたことを理解した彼は、その視線を飛んでいっただろう方角へと向ける。

見ると、飛翔物らしきモノはなく、ただ巌の呪霊が、大木の幹にめり込んでいるのみであった。

 

「誰だ...」

 

背後に気配を感じ、彼は咄嗟に屈む。

頭上を何かが掠める気配。

視線を前方へと向けると、人影、いやウマ娘のシルエットがまだ薄く残る土煙の先に浮かんでいた。

 

その影は、デュランダルを持ち上げていた低級呪霊を一瞬にして祓い、デュランダルを横抱きしていた。

 

「何者だ!貴様は!」

 

叫ぶ呪詛師。

丁度、土煙が晴れ、ウマ娘の姿が明らかとなる。

黒く真っ直ぐな髪と、唯一曲がる流星を湛える、クールビューティーなウマ娘は、呪詛師を一瞥し、こう口を開いた。

 

「カルストンライトオ、最速です」

「最速う?」

 

呪詛師は訝しみながらも、警戒心を滲ませる。

 

「そのウマ娘、どうするつもりだ?」

「決まっている。学園に帰るんだ。一緒に」

「この数を相手にして?」

「そうだな。さすがに私一人でこの数は厳しい」

 

バカ正直な奴め、と呪詛師は嘲笑った。

 

「だから帰る」

「は?」

 

呪詛師が何か言う前に、カルストンライトオは、凄まじい速度で駆け出しており、一瞬でその後ろ姿は小さくなるのだった。

 

「な!速...!追え!追うんだ!」

 

呪霊らに追わせ、自身も速度の出せる呪霊に乗り、追いかけようとしたが、追い付かず、どんどと突き放されていくのみであった。

 

「遅っ。遅いな。思った時には走り出し、思った時には妨害していなければならないのに」

 

デュランダルを抱えるカルストンライトオは、背後に見えなくなった呪詛師らに聞こえる筈もない持論を喋りながら走っていた。

 

彼女の術式はサクラバクシンオーのものに似ているが、条件が異なる。

カルストンライトオの術式は、障害物にぶつかる、若しくは方向転換を行わない限り無限に加速出来る、という術式だ。

無限、とはいっても身体の耐えられる範囲までではあるが、最大速度は音速を越える。

 

「ん...」

 

丁度、直進が不可能となり、減速せざるを得なくなったタイミングでデュランダルの瞼が動いた。

 

「起きたか、デュランダル」

「ライトオ...さん..?」

 

はっとした様子でデュランダルは頭を上げた。

 

「私気を?!」

「そうだ。ぐでーんと倒れていたぞ」

「貴方が助けてくれたのね..」

 

事態を呑み込んだデュランダルは、ペコリとバランスを崩さない範囲で小さく頭を下げる。

 

「ありがとう。ライトオさん」

「丁度直線が多かったからな。手伝いに行こうと思ってチョクシンしただけだ」

「...もう、連絡位くれれば良いのに」

「その間に到着出来る」

「障害物がなければ、でしょ?」

 

呆れたように、しかしどこか安堵した表情で、デュランダルはカルストンライトオと軽口を交わすのだった。

 

同時刻。

トレセン学園

 

『さあ!第二試合はスペシャルウィークさんvsカツラギエースさんです!』

 

やる気満々といった様相のスペシャルウィークが入場し、カツラギエースも闘志たっぷりに続く。

 

「よろしくな。スペ!」

「はい!負けませんよ!エースさん」

 

試合開始の号令と共にカツラギエースは、拳に炎を纏わせ、足を大きく踏み込んだ。

 

鐡火(てっか)!」

 

呪力の籠った炎が火花と散り、彼女の拳がスペシャルウィークを襲う。

 

「てやあっ!」

 

スペシャルウィークも拳を繰り出し、両者の拳と呪力が衝突した。

飛び散る火の粉と迸る呪力。

二人は笑みを湛えたまま、次の行動に移る。

 

スペシャルウィークから数メートルの距離を取ったカツラギエースは、ライターを取り出し、火を付ける。

 

火刃薙(ひばな)

 

そして、刀のような形状にライターの炎を増幅、変化させ、構えた。

 

"糧食転呪"

スペシャルウィークは術式を発動させると同時に仕掛けた。

左方向へ飛んだかと思えば、反復横飛びでもするように次は右へと飛びフェイントでカツラギエースと距離を詰め、拳を向けたのだ。

 

「はっ!」

「なんの!」

 

カツラギエースの方は、スペシャルウィークのパンチを頬に掠らせながら、炎の刃を下から振る。

スペシャルウィークも刃を掠め、体勢を崩した。

 

「はっ!」

 

カツラギエースが、すかさず隙を付き、刃を振り下ろした。

 

「あっ...!」

 

防御こそしたものの、斬撃を受け、服に刃の跡を残したスペシャルウィークは、腹の辺りを抑えながらどうにかカツラギエースと距離を取った。

 

(...さっきのスズカさんとの試合で消耗し過ぎたのかも...回復をしておくべきだった...?)

 

大会中、最終戦含め合計二回、ハルウララの術式による呪力の回復が行えるルールであるが、スペシャルウィークは、トーナメント決勝に向けてその機会を残しておく判断をしていた。

しかし、彼女が思っていたよりも、サイレンスズカとの戦いで磨耗していたようだ。

 

(お昼ご飯だけじゃ足りなかったかも..)

 

ここぞとばかりに襲い来る、カツラギエースの猛攻をいなしながら、スペシャルウィークは若干の後悔を心中で滲ませる。

それ程までにカツラギエースの気迫が凄まじかったのだ。

 

雨炎石火(うえんかせき)!」

 

投げ捨てられた幾本もの火の付けられたマッチが火球を形成し、飛び行く。

スペシャルウィークはそれらを躱しながら、舞台上を飛ぶように移動。

そして、カツラギエースの真上へ飛んで、足を振り下ろした。

 

「っ!」

 

カツラギエースは腕で防御するも、その威力に足下がひび割れる力で踏み止まらなければならなかった。

 

「やるな。スペ!」

「まだまだ行きますよ!」

 

スペシャルウィークはそう言って畳み掛ける。

隙を与えてはならないと判断したからだ。

だが、ここで彼女は気付く。

数秒前まで、手に握っていたはずの炎の刃が、カツラギエースの手から消えていることに。

 

炎鎖(えんさ)

 

スペシャルウィークの背後から炎が延びてきて、鎖のように彼女の身体に巻き付いていく。

 

「しまっ..」

 

スペシャルウィークが自身の真上に来た時、カツラギエースは咄嗟にライターを投げ、この布石としていたのだ。

 

「鐡火!」

 

拳をモロに受け、スペシャルウィークは苦しげに顔を歪める。

 

「くうっ...」

「まだまだあ!」

 

それでもカツラギエースは油断しない。

準一級術師として並ぶ、スペシャルウィークを警戒しているが故に。

 

「はあっ!」

 

更なる一撃は確実に防御しつつ、術式による莫大な呪力で炎の鎖を断ち切る。

そして。

 

(呪力に余裕がない...から、賭けるしかない!)

 

爆発的な呪力をその身体に迸らせるスペシャルウィーク。

術式による強化を最大限に引き上げ、一気に決着を付ける決意をしたのだ。

 

「やあああああっ!」

 

舞台が割れる程の踏み込みで、カツラギエースの方へ飛び込む。

 

「マジか」

 

その強大な呪力に思わず目を見張るカツラギエース。

防御姿勢こそ取ったものの、冷や汗が頬を一筋、伝う。

そして衝突。

舞台が衝撃により割れ、それによる土煙が立ち上る。

観客席からは、二人の姿が見えなくなった。

 

『一体、どうなったのでしょうか..』

 

煙が晴れると共に、客席はどよめきに包まれていく。

立っていたのは、カツラギエース。

スペシャルウィークは、場外にいた。

 

スペシャルウィークの攻撃が届く直前、カツラギエースは炎鎖を発し、彼女の動きを阻害しようとしていた。

当然、スペシャルウィークの呪力は強く、濃いが故に、殆ど意味はなさなかったが、軌道を僅かにずらされた。

カツラギエースはそれによって、躱しきることに成功し、同時に"鐡火"で攻撃を加えた。

スペシャルウィークは食らった拳とずらされた軌道によりバランスを崩し、そのまま場外へと落ちてしまったのであった。

 

『ス、スペシャルウィーク選手、場外!カツラギエース選手の勝利です!』

「ありがとな!スペ。最後のはヤバかった。すげえな、あれ」

 

カツラギエースは立ち上がったスペシャルウィークと握手をし、そう讃えた。

 

「ありがとうございました。エースさん。次も勝ってくださいね!」

「ああ、シービーにも勝ってやるさ。ルドルフと戦うのは、アタシだ」

 

不敵に笑うカツラギエースを観客席から満足そうに見やるのは、ミスターシービー。

微笑みながら、彼女は呟いた。

 

「...いつものエースだ。フフッ...やっとだね。エース。全力で、やろう」

 

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