トレセン奇譚   作:ライト鯖

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Aブロック第二回戦

第一試合

ミスターシービーvsエイシンフラッシュ

第二試合

カツラギエースvsスペシャルウィーク

Bブロック第二回戦第一試合

シリウスシンボリvsメジロマックイーン

第二試合

タマモクロスvsメジロラモーヌ



Bブロック二回戦第一試合 シリウスシンボリvsメジロマックイーン

 

とある山中

 

「で、結局逃げられたと?」

 

冷たい声に、先刻デュランダルと戦っていた呪詛師は肩を振るわせた。

 

「申し訳ありません...」

「今更無為に戦力を削るわけにはいかんし、今回は助けてやろう」

 

彼を見下ろす巨大な、ゆうに三メートルは越えようかという呪霊、はそう言うと、呪詛師の肩に手を置いた。

 

「次は、ないぞ」

「はい...」

 

しかし、だ。と呪霊は、呟く。

 

「既に奴等に勘づかれているというわけだな」

「...偵察自体は二級か準一級位の術師が一人だけだったので、まだ本格的に察知しているというわけではなさそうです」

「だが、今回のことで本気になるだろうな。次は、大勢力で来るぞ。貴様が取り逃した故にな」

「っ...すみません」

 

返す言葉もなく呪詛師は消沈する。

 

「実行日をずらすしかあるまい。拠点を移動もせねばならんだろうが、警戒を強められても厄介だ」

 

呪霊はそう言うと、背後に控える別の呪霊に命じる。

 

「"彼"に連絡を取ってくれ。今回のことを報告し、日程の調整をせねばならん」

 

背後に控えていた呪霊は、頷き、術式によってマーキング先へと瞬間移動をするのだった。

 

 

同刻 トレセン学園

 

『さあ、Bブロックの第二回戦第一試合です!お二方、ご準備はよろしいですか?』

「問題ありませんわ」

「こっちもだ」

 

シリウスシンボリ、メジロマックイーン両者が寸分の隙も感じさせぬ佇まいで、開始を待つ。

 

『では、開始!』

 

「玉犬!」

 

開始と同時にメジロマックイーンは玉犬を放ち、シリウスシンボリに先制を仕掛ける。

 

"磁界標術(じかいひょうじゅつ)"

術式反転。

襲い来た玉犬にシリウスシンボリが僅かに触れた途端、彼女と同じS極を付与されたことで玉犬は弾き飛ばされるようにして吹き飛んだ。 

 

「やはり、厄介な術ですわね..」

 

メジロマックイーンにとってこれは想定内であったようで、動じることなく次の一手を打つ。

 

「鵺!蝦蟇!」

 

玉犬を解除すると同時に出現させた蝦蟇の舌をシリウスシンボリに絡ませ、拘束した隙に鵺で電撃を浴びせようという腹である。 

確かに直接腕に巻き付けられていては幾ら術式を付与しようと、即座にほどくことは出来ない。

 

「やるな。だが!」

 

グン、と腕に力を込め、自身に絡まる舌を通して蝦蟇をN極に設定し、腕にがっちりと固めた上でシリウスシンボリは蝦蟇を自身の方へと引き寄せるようにして舌を引っ張り始めた。

 

「何を..」

 

グインと引っ張られ、宙を舞う蝦蟇。

それが、シリウスシンボリに向かう鵺に衝突するまで、数秒もかからなかった。

バチッと蝦蟇は鵺の電撃を受け、鵺はその衝撃で軌道を変えられる。

それにより、シリウスシンボリの真横を鵺が掠める形となったのだ。

 

「なっ...」

「アンタの攻撃をまともに受ける訳にはいかねえからな」

「...フッ。評価して頂けているようで光栄ですわ」

 

二人は、ジリジリと間合いを測る。

そして。

 

「はあっ!」

 

シリウスシンボリが仕掛ける。

メジロマックイーンに直接触れようと、懐は飛び込んできたのだ。

 

「玉犬!」

 

先程解除した玉犬を再び出現させる。

これは、あることを確認する為だった。

 

「おっと!」

 

軽々と玉犬の攻勢を躱すシリウスシンボリ。

それを確認したメジロマックイーンは、ニヤリと笑った。

 

「やはり、一度解けば..!」

 

そう、シリウスシンボリの磁極を付与する術式は、十種影法術の式神を対象とした場合、一度会場してしまえば対象から外れてしまうのだ。

これは、十種影法術における式神の解除は、影に落とし、その姿を消させる故に、術式対象と認識されなくなるのだ。

 

「なるほど。術式の相性ってのは分からんものだな」

 

シリウスシンボリは、そう興味深そうに笑った。

 

(これなら、やりようはある!)

「鵺!」

 

再び鵺を出現させ、シリウスシンボリの動きを牽制。

そして、畳み掛ける。

 

「大蛇」

 

シリウスシンボリを呑み込ませんと地面から上空に向け大蛇を出現させた。

しかし、彼女は、大蛇に呑み込まれる直前、口の端に触れ、術式反転を付与。

反発により、宙を飛び、大蛇から逃れた。

 

「っ!まだ!不知井底!」

 

複数の羽の生えた蝦蟇、鵺と混合させた拡張術式、を発動。

再度の拘束を試みる。

 

「確かに、複数相手だと厳しいな」

 

だが、とシリウスシンボリは不知井底の舌を引きちぎった。

 

「こいつが通常より弱体だってのはリサーチ済みだ」

「そうでしょうね!」

 

メジロマックイーンの真の狙いは拘束になかった。

一瞬、意識を其方に向けたかったのだ。

 

「万象!」

 

不知井底解除から一秒と経たずに万象を発動、シリウスシンボリの頭上へ、落とした。

 

「はっ!こいつは...」

 

どうにか術式による反発を利用し逃れたシリウスシンボリだったが、その間隙を付かれ、鵺の攻撃を受けてしまった。

 

「くうっ...!」

(万象との同時発動はこの前まで出来てなかったが...やりやがる!)

 

電撃で麻痺させられた身体で、どうにか追撃をこそ躱したが、頬に一筋の汗が伝っていた。

 

(行ける!このまま押し通す!)

 

メジロマックイーンは、勝機を感じ、次なる攻撃に移ろうとしていた。

 

「...仕方ねえ」

 

だが、シリウスシンボリから感じられた強い呪力を感知し、警戒、距離を取る。

 

(次はどうせラモーヌかタマモだ。回復無しじゃあ厳しいだろう。しかも、鵺の電撃、中々どうして強力だ...だから)

「マックイーン。アンタの強さに敬意を表する」

「...?」

「私の奥の手、見せてやるよ」

 

言いながら彼女は、両手を独特な形に組んだ。 

掌印。

つまり。

 

「領域展開」

 

"磁荷磁戒(じかじかい)"

 

ガラスのように透き通った天蓋に写るは、満天の星空。そこで一際大きく、頂点に輝くシリウス。

そして、地面は方位磁針のようになり、グルグルと羅針が回転。

領域の完成と同時に、N極はメジロマックイーンを指し示し、止まった。

 

「領域...!」

 

領域展開。

つまるところ、シリウスシンボリの術式が必中となる。

それの意味するところはただ一つ。

 

「?!足が...!」

 

メジロマックイーンは、足を動かすことが叶わなくなっていた。

 

「私の術式を喰らったんだ。領域内では地面も術式対象になるからな。正確には、地面は私の一部として術式が付与されている」

 

つまり。

 

「私に付与された極と逆、というわけですか..」

「ああ。これで終いだ。降参するか?」

 

ギリ、と一瞬歯噛みしたメジロマックイーン。

しかし。

 

「まだ、私は...!鵺!」

 

彼女は、まだ、諦めることをしなかった。

 

「さすがと言うべきか。だが、残念」

 

鵺は、勢い良く地面に叩き付けられ、動けなくなってしまう。

 

「領域内での術式は必中なんだ。どうにもならないぜ?」

「これなら..大蛇!」

 

地面から出現する大蛇、確かにこれならば、既に地面に付いている、と言える。

しかし。

 

「おっと。確かにその手があったな。だが、触れなくても良いんだ。回避は余裕だ」

 

反発を利用した回避も、ギリギリではなく余裕を持って行われ、メジロマックイーンは悔しそうに俯いた。

 

「.....降参します」

 

苦渋であった。

しかし、もう取れる手段がないことも事実。

これ以上は、意味のないあがきである。

彼女はまだ、メジロ家に伝わる落下の情を習得出来ておらず、領域に抗う術は、持ち合わせていなかった。

まだ、本格的に呪術の道に踏み入れて、三年と経っていないのだ。

当然と言えるだろう。

 

『マックイーン選手降伏。シリウスシンボリ選手勝利!』

 

「お疲れさん。中々ヒヤッとさせられたぜ」

「ありがとうございました。まだまだ研鑽が足りていないと痛感致しましたわ」

「ま、領域使える奴なんて極少数だ。対策を後回しにしちまうのも分かるが、多少は身に付けといた方がいいぞ」

「ええ。そのようですね。おかげさまで、私はまだまだ強くなれそうです」

「そいつは楽しみだ」

 

シリウスシンボリは、そう微笑し、メジロマックイーンと握手を交わすのだった。

 

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