Aブロック第二回戦
第一試合
ミスターシービーvsエイシンフラッシュ
第二試合
カツラギエースvsスペシャルウィーク
Bブロック第二回戦第一試合
シリウスシンボリvsメジロマックイーン
第二試合
タマモクロスvsメジロラモーヌ
ある山中。
呪霊の親玉に呼び出されたその男は、呪霊からの説明を聞きながら、張り付けたような笑みを浮かべていた。
「なるほど。だから実行日を変えたい、と」
「ああ。さすがに月末までは待てなさそうだ」
「ふーむ。確かに、明日にでも一級術師が押し寄せて来てもおかしくはないね」
「そうだ。だから時期を早めたい。そっちの都合はどうなんだ?」
「此方は日付をずらせない。....しかし、まあ、問題はないよ。トレセン学園をしっかり無力化してくれるなら、別に今でも良いくらいだしね」
「助かるよ。学園を破壊することは目的の一つだ。必ず達成するさ」
「そうかい。なら、好きにやれば良いさ。ああ、ただ、代わりに一つやって欲しいことがある」
その怪しげな男は、呪霊の親玉との交渉を終えると、さっさと転送系の術式を持つ呪霊に送られ、帰っていくのだった。
「相変わらず要件だけだな」
呪霊の親玉は、男を見送った後、そう呟いた。
「やり易いではありませんか」
側に控えていた呪詛師は、そう言って笑う。
「そうなんだが。どうにも温度差を感じるんだよ」
「まあ、熱量が同じである必要はありますまい。何せ彼は"アレ"、"宿儺の指"を、貸し出してくれたのですから」
呪詛師の言に、呪霊の親玉も頷く。
「確かに、そうだな。指は計画において重要な戦力となってくれるだろうからなあ」
ニヤリと笑った呪霊は、指を取り出し、天に翳して、恍惚と仰ぎ見るのであった。
トレセン学園。
特別舞台の修復が終わり、メジロラモーヌとタマモクロスが舞台で既に戦いを始めていた。
タマモクロスの術式、投射呪法によって繰り出されるスピードとメジロラモーヌのカラスの追いかけっこの様相となっている。
「良いわね」
フッと、一瞬妖艶に微笑み、メジロラモーヌはカラスの全てをタマモクロスに向かわせた。
挟み撃ちどころか、全方位を囲まれたタマモクロスであった為、回避を迫られる。
さすがに全てのカラスをいなすことは難しく、トップスピードではないため振り切ることも出来ないからだ。
「くっそ!やらしいタイミングやな!」
加速を打ち切らざるを得ず、彼女はふわりと空中で減速した。
「ふっ!」
隙を狙っていたメジロラモーヌは、そのタイミングに合わせて彼女の上へと飛んでおり、模造の斧を振りかぶっていた。
「しまっ!」
どっと地面に叩き付けられたタマモクロスであったが、追撃はどうにか躱して、再び術式を発動させていた。
「今度は捉えさせへんで!」
「あら、さっきよりも速いわね」
タマモクロスは、トレース可能なギリギリで術式を運用することで、急加速を行ったのだ。
そして。
最高速度に到達したタマモクロスは、メジロラモーヌに真っ向、正面から挑むのだった。
「はあああ!」
「"
縛りによって強化されたカラスがタマモクロスを襲ったが、タマモクロスはそれを上手く躱した。
(読まれていた?!)
「もらった!」
どうにか防御体勢を取ったメジロラモーヌが持つ斧、その柄とタマモクロスの拳が衝突。
一瞬の後に斧は折れ、拳はメジロラモーヌの身体へと届いていた。
「くっ..!」
「どや?ウチの全力は」
「見事ね...してやられたわ。けれど...」
タマモクロスは背後に迫る気配に気付き、振り返る。
だが、遅かった。
先程、タマモクロスをカラスに包囲させた際に、一羽だけは、戻さず、宙を旋回させていた。
そして、それを今、"神風"発動と共に急降下させ、タマモクロスを襲わせたのである。
「がっ...!」
両者共に強力は一撃を受け、一進一退の攻防、という情勢になっていた。
「くそっ!ならもういっちょ」
加速するタマモクロス。
だが、今度はそれを許されない。
「くっ!カラスが...!」
そう何度も同じ手は通用しないと、諦め、彼女は戦略を変更する。
メジロラモーヌに直接触れ、フリーズを起こさせることを狙うこととした。
「だりゃああ!」
一気に方向転換をし、加速を犠牲としながらも、メジロラモーヌに直接触れんと、駆ける。
しかし、そこでシンボリルドルフの声が、場内に響き、タマモクロスは動きを止めることとなる。
『緊急連絡だ。タマモクロス、ラモーヌ、申し訳ないが、一度中断して欲しい』
「なんや?」
「どうしたの?」
二人共が、解説席にいるシンボリルドルフの方へと視線を向けた。
シンボリルドルフは、会場中の視線を受けながら、舞台に降り立ち、メジロラモーヌに近付く。
「今しがた連絡が入ってね。ラモーヌ、君の妹、メジロアルダンがピンチらしい」
「....」
「なんやなんや何があったんや?」
近くにいたタマモクロスにも話は聞こえており、訝し気に尋ねた。
「タマモクロスも、すまないね。大事なところで」
「ええってええって。それで、アルダンがどないしたんや?」
「詳しくは分からないのだが、どうも任務先で予定にない等級の高い呪霊が出現したらしいんだ。補助監督から救援の依頼があった」
「それで?」
「等級の高い術師は、この大会に出ていない者は全て出払っている。つまり、出場者位しか向かえる者がいないんだ。それなら、やはり姉である君に、と」
「確かに、誰かが棄権せねばならなくなるものね」
メジロラモーヌは冷静にそう言い、シンボリルドルフがそれに頷く。
「その通りだ。それに、姉である君ならば急な形でも連携を取りやすいのでは、と思ったのでね、申し訳ないが中断させてもらったんだ」
「そう。分かったわ。場所は何処かしら?」
メジロラモーヌは静かに頷き、尋ねる。
「車を校門に待機させてある。彼が目的地まで送ってくれるよ」
「そう。タマモクロスさん。申し訳ないわね」
「かまへんかまへん!はよ行ったり」
豪快にそう手を振るタマモクロス。
シンボリルドルフも、改めて彼女に向き直り、謝罪した。
「感恩戴徳。すまない。納得しがたいことだろうに、心から感謝する」
「ウチらはこんなんばっかある立場や、しゃーないよ。それより、ラモーヌ、気いつけや」
「あら。お気遣い感謝しますわ」
ざわざわとざわめく観客席にアグネスデジタルより報告が入る。
『えー、ラモーヌ選手が任務に赴かざるを得なくなる状況が発生したようで、今試合は、タマモクロス選手の不戦勝ということとなったようです』
『納得出来ない者もいるかもしれないが、人手の足りない中で開かれる大会だ。緊急の事案があればこうしたこともある。どうか、呑み込んでくれると、ありがたい』
こうして、二回戦の第二試合は消化不良のまま幕を閉じることとなってしまったのだった。
その少し後。
とある廃ホテル。
「チヨノオーさん。逃げてください...」
四肢を触手のような物体に拘束され、薄汚い色合いをした呪霊に捕らえられてしまっているメジロアルダンは、共に任務へと来ていたサクラチヨノオーに逃げるよう促していた。
共に任務に来ていたサクラチヨノオーも、満身創痍といった状態である。
彼女達は、任務を終えた瞬間を狙ったかのようにして突然現れた呪霊に襲われ、暫くは抵抗していたものの、疲弊もあって、遂には拘束されてしまったのだ。
「アルダンさんを置いてはいけません..」
「チヨノオーさん...ですが..」
呪霊は二人の葛藤等待ってはくれず、サクラチヨノオーにも触手が伸びる。
「!!」
「チヨノオーさん!」
最早、躱すことも出来ぬほどになっていたサクラチヨノオーは、あえなくその腕を触手によって束縛されてしまった。
だが。
ズドン、と大きな衝撃と共に、サクラチヨノオーを捕らえていた触手が弾け跳び、彼女は解放される。
「?!...」
「姉さま!」
メジロアルダンは、サクラチヨノオーの後背、少し離れた場所に立つ、姉、メジロラモーヌの姿をその目に捉えた。
「ラモーヌさん..?!」
サクラチヨノオーも気付き、振り向く。
「どうして...」
メジロアルダンの驚く声には応えず、メジロラモーヌはカラスを跳ばし、彼女を拘束する触手を破壊した。
「ちょっとした気まぐれよ。アルダン。まだ、動けるかしら?」
「っ..はい!姉さま」
「そう。よろしくてよ。...ただ、無理はしなくていいわ」
「ありがとうございます」
メジロラモーヌは優しげな笑みを溢しながらも、普段と変わらぬ調子で、しかし、妹に対する情愛も覗かせながら、そう言葉を紡ぐのだった。
少し離れた場所で、その様子を観察する影が一つ。
「...チッ。邪魔が入ったか。メジロアルダンの術式を潰せたら良かったんだが...メジロラモーヌまで出てきたのではな...仕方がない、か..」
ぶつくさと言いつつ、影、彼女達を襲った呪霊に指示を出していた呪詛師、はさっさとその場を後にする。
呪霊は、もう直ぐに祓われるだろう、と見切りを着けたのである。
そして、その予想は当たっており、ものの5分と経たずに、メジロラモーヌの"神風"の直撃を受け、呪霊はあえなく、祓われるのだった。