トレセン奇譚   作:ライト鯖

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トーナメント決勝戦 ミスターシービーvsシリウスシンボリ

 

「お互い万全だね。シリウス」

「ああ。..考えてみれば、今まで殆ど手合わせしたことがなかったな。私達」

「確かに。良い機会だね。ここでキミに勝って、アタシが玉座に座るとするよ」

「あんたが積極的なのも珍しいな。玉座なんて狭苦しいモンを望むとは、どういう風の吹きまわしだ?」

「挑んでくる相手がいるって、分かってるからね。その為だよ」

「ハッ。エースに首ったけだな。両想いたあ羨ましい」

 

ミスターシービー、シリウスシンボリ両者共に挑発的な笑みを絶やさず、舞台上で向かい合い、言葉を交わしていた。

 

「キミは片思いなのかな?」

「さあな」

「ま、アタシも今は考えてることは同じかもしれないけどね」

「そうかもな。だが、なればこそ、負ける訳にはいかねえな」

「勝つよ。アタシは。シリウス」

 

二人は、表情そのまま、構えを取った。

 

『それでは、トーナメント決勝戦を開始いたします!.....始め!』

 

ミスターシービーは、シリウスシンボリが自身に触れないよう、先んじて攻撃を仕掛ける。

濁流がシリウスシンボリを襲った。

 

「っと」

 

当然、この程度の攻撃、シリウスシンボリは軽々と躱した。

地面への着地と同時に足を踏み込み、ミスターシービーへ強襲する。

術式の対象とするには触れなければならない以上、現状としてはシリウスシンボリの体勢不利というべきだろう。

 

"砲水"

巨大な水球が放たれ、シリウスシンボリは再び回避を強いられる。

ミスターシービーは、彼女を近付けさせないつもりだ。

 

「チッ。このままじゃ埒が明かねえな」

 

シリウスシンボリは、仕方ねえ。と溜め息を付き、足を止め、掌印を結んだ。

 

「領域展開」

"磁荷磁戒"

 

必中による術式付与が可能である領域を展開。

だが、当然ミスターシービーとて無抵抗なわけがない。

彼女も領域を展開するかと思われた。

だが、ミスターシービーの取った構えは、抜刀の姿勢であった。

 

「何?」

「"簡易領域"」

 

シリウスシンボリは思わず眉を動かし、驚きをもってミスターシービーを凝視する。

 

「いつの間にそんなもん習得してたんだ」

「見て覚えたんだ。キングとも何度か鍛練で手合わせしてもらったしね」

「相変わらずの天才ぶりだな」

 

呆れるような笑いを浮かべながら、シリウスシンボリは言葉を続けた。

 

「だが、領域展開でもなきゃ、そう長時間持ちこたえはしないだろ」

 

シリウスシンボリの指摘通り、ミスターシービーの簡易領域は磨り減るようにしてその範囲を、徐々にであるが縮めていた。

彼女自身、それを否定はしない。

 

「まあね。でも、習得したばっかの領域で押し合いするよりは良いかなって。

いくら呪力は回復してもらえるといっても、一日に三度も領域展開したら脳の負担が大きくなりすぎちゃいそうだし」

「私への当て付けか?」

「まさか」

「だろうな。まあ、あんたの懸念も尤もだ。だが、いつまでそんなことを心配していられるかね」

 

言葉を交わし会いながらも、二人は既に行動を開始しており、まずは、ミスターシービーがシリウスシンボリの攻撃を避けるところから攻防が始まった。

 

「簡易領域、こっちの必中を無意味にされちまうのは厄介だが...はあっ!」

 

舞台に攻撃を加え、瓦礫を生み出したシリウスシンボリは、二つを手に取り、それぞれに順転と反転を投擲と同時に付与。

一秒の差を設けて放たれたそれらは、反発し、運動エネルギーとの矛盾により後発の瓦礫は失速、落下。

先発の瓦礫は、後押しされる形で、速度を跳ね上げ、ミスターシービーへと向かった。

 

「..!」

 

避けることは出来ず、ミスターシービーは瓦礫を呪力で強化した素手でキャッチする。

それを確認したシリウスシンボリは、ニヤリ、と笑った。

 

「触れたな」

「?...あ、しまった!」

「領域内で、私の術式が付与されたモノに触れると、そいつにも術式効果は付与される。

こいつは領域の環境効果に該当

簡易領域は術式効果そのものを中和しているわけじゃあないからな。

これで...」

 

言いながらシリウスシンボリは、自身にも術式を付与し、引き合う引力で一挙にミスターシービーとの距離を詰めた。

 

「はあっ!」

 

強制的に受けざるを得なくなったミスターシービーは、防御体勢を取り、シリウスシンボリの攻撃を受ける。

 

「っ...!」

(重い!)

 

引力の影響もあり強力な一撃となった攻撃に、ミスターシービーの体勢が崩れた。

 

「はああっ!」

 

 

その隙を逃さずシリウスシンボリは更に攻勢をかけ、先ほど使った瓦礫の残りを引力でもって、礫となし、自身の直接的な攻撃と同時にミスターシービーへ向ける。

ミスターシービーは、それに対して、前方への跳躍で対応、どうにか回避した。

 

シリウスシンボリは後ろを取られる形となり、急ぎ振り替えるも、既にミスターシービーは眼前に迫っていた。

 

「くっ!」

 

今度はシリウスシンボリが受ける番となる。

 

(そうか。領域内では地面も術式対象になるが、簡易領域の範囲はその限りじゃねえ。だからシービーは術式対象となっても動けてやがるって訳か)

 

現状を分析しつつ、次なる一手に彼女は動く。

 

「なら!」

 

シリウスシンボリは自身に術式反転を付与。

地面に付与されている術式を一瞬解除し、即座に再度付与。

これにより、爆発的な斥力で速度を上げ、天井高くへ飛び上がった。

 

「磁砲」

 

呪力をただ飛ばす技術、それに術式を絡めることで、磁力の砲弾のようなもの、言うなれば電磁砲ならぬ、呪力砲を放った。

 

「術式反転・閼伽」

 

ミスターシービーは、不味いと判断し簡易領域を捨てて迎撃に出た。

 

莫大な正のエネルギーが廻る水の塊と、磁力と呪力の合成されたエネルギー、二つの衝突は巨大な衝撃波を生んだ。

 

「はっ!相殺されるとはな!だが、剥がしたぞ」

 

ミスターシービーは、必中となった術式を受け、その場から動くこと叶わなくなる。

 

「やばっ」

「勝たせて貰うぞ!シービー!」

 

シリウスシンボリの攻撃をどうにか受けこそしたが、術式対象とされた以上、ミスターシービーが圧倒的に不利である。

 

「仕方ない、か..」

 

ミスターシービーはこうなった以上は仕方がない、と掌印を結び、唱えるのだった。

 

「領域展開」

"天翔法雨"

 

シリウスシンボリの領域、その半分ほどがミスターシービーのそれに塗り変わる。

領域の押し合いとなったのだ。

 

「残念だったな。シービー」

「さすがに無理があったみたい」

 

ミスターシービーは自嘲を込めた苦笑を浮かべた。

 

「でも、これで漸く反撃に出れる」

「だろうな。だが、させねえよ」

 

再び磁力砲を放ち、シリウスシンボリは攻勢を弛めない。

 

「砲水!」

 

だが、再び相殺。

今度はミスターシービーの方からシリウスシンボリに向かって飛び上がった。

 

「どうせ術式対象なら!」

 

"閼伽"

可能な限りシリウスシンボリの間近へ迫り、術式反転を放った。

 

「なっ!...」

 

ミスターシービー自身も術式を被弾したが、シリウスシンボリにはそれ以上のダメージとなった。

 

「やられた...シービー。分かっちゃいるつもりだったが、あんたも大概イカれてるな」

「あはは。自分の術式だと思ったよりダメージ少ないみたいで良かったよ」

「ったく..」

 

苦笑しつつ、シリウスシンボリはふらつきながらも体勢を立て直す。

そして、術式を発動させ、ミスターシービーの動きを制限する。

引力で再び引き寄せ、拳を振るった。

 

「はあっ!」

 

再び肉弾戦となり、二人は一進一退の攻防を繰り広げる。

 

(っそ。至近距離の閼伽でさっきまでの優位が覆えされちまった。...だが、ここで負ける訳には)

「はあっ!」

 

お返しとばかりに、隙を見つけたシリウスシンボリは、磁力砲を近距離で炸裂させた。

二人は、その衝撃に吹き飛ばされ、そのまま距離を取る格好となった。

しかし、先にその作戦を取ったミスターシービーは、やはり返される可能性を想定しており、僅かながら防御が間に合っていたようだった。

 

「それは想定内!」

 

間髪入れず、再び発射。

シリウスシンボリは、ミスターシービーが防ぐことを分かった上で、大きな隙を作るために実行したのだ。

 

水蛇(みずち)!」

 

自身の周囲をうねる水流で囲い、防御。

だが、シリウスシンボリは発射と同時に動いており、既にミスターシービーの頭上へと来ていた。

しかし、ミスターシービーは瞬時に首を上に向け、ニヤリ、と笑った。

 

「チッ...読まれてたか」

 

シリウスシンボリは、悟ったように言いながらも、なお、回避を試みることもせず、真っ直ぐに向かっていった。

もはや回避も間に合わない、と判断したのである。

 

そして、ミスターシービーの足下に溜まっていた水溜まりから、幾本もの槍か矢じりのような水滴が飛び出し、シリウスシンボリを襲った。

 

「ぐうっ!」

「はあっ!」

 

最後の一撃とばかりに、"閼伽"を撃ち込む。

シリウスシンボリがそれをもろに受けると同時、彼女の領域が崩れ始めた。

 

「呪力切れ..か...」

 

片膝を付き、一瞬、悔しそうに俯いたが、即座に普段の、挑戦的な彼女の顔を、シリウスシンボリは作り直し、そして、宣言するのだった。

 

「降参だ」

 

数秒遅れて、アグネスデジタルの実況が響き渡る。

 

『シリウスシンボリ選手、こ、降参!勝者、ミスターシービー選手!王者決定戦は、ミスターシービー選手と、シンボリルドルフ前年度王者の対戦と決まりました!』

 

「シービー。あんた、やっぱ変わったな」

「そう?アタシはアタシのままだよ」

 

ワッと盛り上がる歓声の中、シリウスシンボリにかけられた言葉に、ミスターシービーはキョトンとした顔で返していた。

 

「自爆めいたことまでして、勝ちに来るような奴だった記憶はねえな。レースならともかく、こっちの世界にそこまでの執着があったとはな」

「レースとおんなじだよ。さっきも言ったけど、挑んできてくれるのが分かってるからね。楽しみなんだ」

「結局、そこに繋がってる訳か。...見誤ったみたいだ。あんたのエースへの溺愛っぷりをな」

「あははっ。溺愛、か。そんなんじゃないよ。挑んできてくれるのは、キミでも良いんだよ?」

「はっ。言いやがる。だが当然、言われるまでもなく、だ。...ここまで来たんだ。あの皇帝サマの仮面、剥いでやれ。あんたもそれは目的の一つ、なんだろ?」

 

シリウスシンボリの言に、ミスターシービーは頷き、言う。

 

「そうだね。ルドルフの本気、久しぶりに見たくってね」

『シービー』

 

二人のやり取りも、解説席にいるシンボリルドルフには、戦闘の様子を記録するための機器を通して聞こえている。

彼女は、二人の会話を聞き、そう、挑戦者に呼び掛けた。

 

「なあに?ルドルフ」

『"生徒会長"として、君に勝つよ。私は』

 

それは一つの宣言だった。

ミスターシービー、シリウスシンボリ含む僅かな者にしか意味の通じない。

シンボリルドルフに取っての宣誓であり、ミスターシービーらにとってだけはある種の挑発にも取れる、そんな宣言を、してみせたのだった。

 

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