スカーレット家長男の憂鬱【リメイク版】   作:社畜マークII

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あいよ!ドブ小説の天ぷら一丁!☝️ 


2話

 

「アルク様にはこのお部屋を使っていただこうかと考えております」

「うわぁ…」

 

咲夜さんに始めに案内をされたのは、とんでもなく金のかかってそうなバカでかい部屋だった。シャンデリアはキラキラと光を反射し、調度品のツボは厳かに佇んでいる。ベッドに関しては、10人は川の字で寝れそうなほどにデカい。さらには、物語でしか見たことないような動物の頭の剥製が、所狭しと壁から生えている。

 

いや、凄いけどさ、ほんとに凄いし、本来これを享受すべきだった元の身体の持ち主であるアルク君には悪いんだけど。

 

「落ち着かない…」

「…申し訳ありません、こちらの部屋はお気に召しませんでしたか?」

「いや、なんというか、今までが今までだっただけにこんなに広い部屋だと自分には勿体無いように思えて」

 

そういうと、思案するように咲夜さんは考えている。なんか余計なこと言ってしまったかもしれない。咲夜さんにとっては、ポッと出のよくわからない主人の弟だからな。こいつめんどくせーな、とか思われていそうで怖い。見たことないほど美人だけど、鉄面皮だから何考えてるのかわからないし。

 

「ご不満な点は部屋が広すぎる点だけでしょうか?」

「あっ、まぁ、後はベッドもデカいとか、ツボ壊しそうで怖いとか、動物の剥製が怖いとかもありますけど…」

「…かしこまりました。少々お待ちください」

 

そう言った瞬間、部屋の広さと家具の配置、サイズ、調度品の種類が変わった。

 

「へ?」

()()()()()()()()、内装の方はこちらで選び直させていただきましたが、よろしかったでしょうか?」

 

いやいや、何勝手に進めようとしてるんだ。おかしいとこいっぱいあっただろ。瞬間移動とか、超能力とかそんなチャチなもんじゃねぇぞこれ。()()()()()()()()()()()()

 

「お待ちください」と、言ったと同時に結果だけが残ったような、そんな印象を抱かざるを得ないほどに部屋の変化が速かった。

 

「咲夜さん、今のは…」

「メイドの嗜みでございます」

「えぇ…、それで説明つくのか今の…」

 

もし、この人と敵対関係になった場合はなすすべなく殺されてしまうかもしれない。ナメた口きかないようにしなきゃな。俺は諦観した顔でそう考えつつ、内装を確認する。先ほどと違い、シックな雰囲気になっており、より機能美を追求した仕上がりになっている。余計なものも無いし、絶対にこっちの方が良い。

 

「完璧です。ありがとうございます」

「恐縮です。それでは、他の部屋の案内に戻りましょう」

 

そういえばこの館の案内をするって言ってたな。めちゃくちゃ広そうだし、これはワクワクしてきたな。武器庫とかあればぜひ見てみたい。この広さだし、屋内プールとかあってもおかしくないだろうな。

 

「まずは、お食事をとる食堂の方からご案内いたしますね」

「あっ、はい」

 

まずいまずい、考え事してあんまり話聞いてなかった。「ご主人様の弟(中身はドブクソ野郎)」でしかない俺は、一挙一動が仇となる可能性がある。シャキッとしないとな、俺の命がいくらあっても足りやしない。

 

「アルク様にお聞きしたいことがあるのですが」

「…?なんでしょうか」

「あの地下室では何を召し上がってらっしゃったのですか?何かお好きなものがございましたら、私にお申し付けください」

 

地下室での食事…、まぁカチカチのコッペパンが標準装備として、ほぼ味のないスープと萎びた野菜、豆を炒めたものとかかな。傍目から見たら虐待のような食事内容だが、精進料理か、ダイエット食か何かだと思えば別段辛くもない。前の世界ではもっと酷い食事だったし。と、前の世界云々は掻い摘んで咲夜さんに伝える。

 

「…そうですか、肉料理と魚料理ならどちらがお好みですか?」

「強いていうなら肉ですかね、本で見たハンバーガーという料理を食べてみたいです」

「今夜はハンバーガーを用意いたします」

 

一瞬不快気に顔が歪んだが、取り繕うようにこちらに食の好みを聞いてくる咲夜さん。この人は良い人のようだな。察するに俺の、ひいてはアルク君の父親である、あの暴力男に対して憤りを感じたのだろう。

 

あ、そういえばあの父親はどうなったんだろうか。なんかナチュラルに頭から存在を消してたけど、俺がここに居ることができるという事は、最低でも追放か拘束はされていそうだな。

 

「お気遣いありがとうございます、ところで僕もお聞きしたいことがあるのですが…」

「はい、なんなりと」

「お父様は何処に…何処かに出張でもされているんですか?」

 

そう言うと、思案顔をする咲夜さん。まぁ言いにくいだろうな、一応おそらくだが前の当主とかだっただろうし、咲夜さんの前のご主人様だった可能性も高い。息子とはいえ、いや、息子だからこそ伝えづらい状態にあるのだろう、おそらくだが。

 

「…それに関しましては、後ほどレミリア様の方から説明の方があると思われますので、少々お待ちください」

「あ、わかりました。何か無茶を言ったようで、すいません」

「いえ、むしろこちらが謝意を示すべきかと。申し訳ありません」

 

なんか謝り合いみたいになり、少し気まずい空気が流れる。表情がほぼ変わらないということもあり、長い間ほとんど誰ともコミュニケーションを取ってなかった、自分のコミュ力の無さを恨まざるを得ない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな空気の中屋敷を歩いていると、デカい扉が現れた。咲夜さんはその扉を事も嘆きに開け、入室を促してくる。

 

「ここが食堂でございます」  

「ここも広いなぁ…」

 

なんか、教会の講堂ぐらいの広さがあるなこれ。もっと俗的に言うと、ショッピングモールのフードコートぐらい広い。屋敷について詳しくないのでわからないが、一般的な屋敷の食堂の広さじゃないだろこれ。サッカーや野球もこの広さなら余裕でできそうだ。

 

「あ、メイド長だ!!みんな、メイド長来たよ!持ち場にもどれー!」

「あわあわあわ」

「えー!まだ遊びたい!」

 

…羽を生やした幼女達が空を飛びながら戯れているんだが、俺は疲れているのだろうか。

 

いや、なんか本で見たような…確かこの世界には「妖精」とかいう種族が存在しているらしい。それを見た時は創作か何かだと思っていたが、実際に目撃してしまうとその存在を認めるしかないな。

 

「貴方達、主人のご令弟様の前で何をしているのですか!」

「へ?弟?」

「レミリア様の弟?」

「えー!可愛い!遊ぼー!」

 

こちらに集まってきた妖精達に対して、頭が痛いと言いたげなポーズをする咲夜さん。まぁ、全然気にしてないんで良いですよ。むしろ、親戚の子に群がられたときのような感覚になるので嬉しいまである。みんな良い子そうだし、時間が許すのであれば遊んであげるのも良いかもしれない。

 

「こんにちは、アルク・スカーレットと申します。今日から皆さんと同じ場所で暮らすことになりました。よろしくお願いします」

「敬語、敬語だよ」

「敬語きらーい!」

「そんなことより遊ぼ!」

 

1人の子がおもむろに横に移動してきたと思ったら、グイグイと腕を引っ張ってくる。なんだかモテモテだなぁ、反応に困ってしまう。と思いつつも、外面は微笑みで返しておく。

 

「僕も出来ることなら遊びたいんですが、まだやらなければならないことが残っているので、また後で遊びましょう」

「あとっていつ?」

「そうですね…」

 

チラっと咲夜さんを見る。その顔は、妖精達に対して怒りたいが、俺の前だからか抑えているようだった。しかし、一つため息を吐いたと同時に、「…少しだけ休憩をとることを許可します」と、言葉を発した。

 

「「「やった!」」」

 

3人同時に飛び上がり、ハイタッチを決める。仲が良いようでなによりだ。ところで、この子達は名前はなんて言うんだろう。固有名称が無いと会話がしにくいので、速やかに教えてもらいたいんだけど。聞いてみるか。

 

「そういえば、3人の名前を教えてもらってもいいですか?」

「名前…」

「名前なんて無いよ!」

「名も無き妖精メイド…」

 

え、それは不便だな、呼び方考えないといけないし。いや、俺がつけるか?いっそのこと。けど、なんかそれで不利益が生じたら嫌だしなぁ。うーんうーん、と考えていると妖精メイドの1人が袖を掴んできた。

 

「名前、つけて!」

「え」

「っ!それはいけません、名付けというのはその行為以上の意味を持ちます。貴方達もそれ以上我儘を言うのなら、()()()()してもらいますよ」

 

「…ごめんなさい、メイド長」

 

しゅん…と、俺の袖を離してトボトボ歩く妖精。うーん、なんか悪いことした気分だな。でも咲夜さんも止めてるし、どうしよう。やっぱり名付けはやめておこう、と思った俺だったが、泣きそうになっている妖精達の姿が目に入る。

 

…しゃーねぇなぁ、後で俺が咲夜さんに怒られるとしよう。

 

「君は()()()

「アルク様…!?」

 

魔力を紡ぎ、魂の輪郭をなぞるように言葉を発する。この百年以上の歳月で培った知識と魔力操作を使い、妖精の不安定な魂とあり方を固めていく。

 

名付けが特別であるということは知っていたし、そう軽々とおこなってはいけないこともわかってるんだけど、地下室から出て初めて遊びに誘われたということが、自分で思っている以上に嬉しかったのかもしれないな。

 

「君は()()()、君は()()()()

「うわわわわ…!」

「すごいすごい!」

「ぶわーってなった!」

 

はしゃいでる3人を見ていると、間違った事はしていない筈だと言いたくなる。これから先の在り方も変わってしまうものだし、彼女達は俺がまとめて面倒を見ようじゃないか。自分のやったことの責任を最後まで取れるのが大人だからな。

 

…ん?あれ、なんかどんどん妖精達がデカくなってきてないか?煙が身体から出てるし、コピペされたみたいな容姿も、各々が違う進化を遂げ始めてる。

 

コハクは正統派アイドル系美少女、セツナは明るいギャル系美少女、シラユキはクール系スレンダー高身長美少女に変わり始めていた。

 

「あれ?何か服縮んだかな」

「私も、袖がちぎれてきてるんだけど!」

「僕はもう全て弾け飛んだよ」

 

「アルク様、お話があります」

 

…俺はジト目の咲夜さんに肩を掴まれ、自分のやってしまったことを後悔してしまうのであった。

 

ちなみに、妖精トリオは無事に全裸になり、一旦服を取りに行くと言って何処かに行ってしまったので、さらに俺に救いは無くなった。

 

 

 




なんで名付けが大切だって知ってるかって?胡散臭いスキマ妖怪の入れ知恵です。
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