中二病は魔王様   作:夜紫希

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中二病の魔王と隠し子の魔王

異世界(ラバルディクス)

 

これは僕が来た新しい世界の名前だ。もちろん、僕が名付けた。異論は認めない。

この世界を大きく分けると2つの領域が存在する。

それは【人間界】と【魔界】だ。

人間界はその名の通り、僕と同じ人間が住む世界だ。どんな町並みなのかは見たことない。もしかしたらRPGであるような木やレンガで出来た家などが並ぶ町や国かもしれないし、東京みたいなビルが建ち並ぶ大都市かもしれない。僕は教えてもらったことただ話しているだけだから分からない。

そして、人間界の隣にある巨大な島。朝昼の空は真っ赤になり、夜には星明かりひとつない真っ暗闇が支配することで有名な魔界だ。

嘘じゃない。本当だよこれは。僕は自分の目で見たのだから。最初見たときは足が震えたよ。

それで魔界なんだけど、アニメやゲームで出てくるような奴らばっかりだった。うん、そうそう。頭の無い鎧の騎士とかね。ドラゴンもいたよ。

 

そして、今僕はその魔界の王様である【魔王】に君臨してんだよね。まだだけど。

 

………これからどうしようか?

 

________________________

 

 

「悪いがもう一度言ってくれないか?レナ=フランダース二世」

「誰だそいつは。私はレナ=フランベール二世よ。それにレナと呼んでと言ったでしょ」

「ああ悪い。少し混乱……いや、そんなことより聞きたいことがある。お前の日本語、おかしくないか?」

 

僕はレナの日本語がさっきからおかしいことに気付く。さっきから高圧的な喋り方をしたと思ったら、今度は親しみやすそうな喋り方をする。正直やめてほしい。

 

「ニホンゴ?それはどこの民族語だ?もしかして人間専用の言葉かしら?」

「知らないのか?じゃあお前たちの言語は何だ?」

「魔界の言語はワストブレア語だ。人間界はキャストブレア語だと聞いている」

 

何それ。ブレアブレアって。トニー・ブレアでもいるの?ここはイギリスが支配してるの?

ごめん、分かりづらい例え話だった。

どうやらワストブレア語は日本語と同じと認識してもいいのかな?

 

「とりあえずその変な言葉……ワストブレア語を直そう。聞いててモヤモヤする」

 

~30分後~

 

「じゃあこんな感じで話せばいいのかしら?」

「ああ、多分それで問題ない」

「私レナ!永遠の17歳☆」

「やめろ。今すぐやめろ」

 

もう一回レッスンやろうか。やっぱ現役女子高生風とか似合わない。

 

~さらに30分後~

 

「私が魔王レナ=フランドール二世だ、人間共」

「お、おう……」

「よろしく頼むぞ、シンヤ」

「ッ!?」

 

いきなり冷たい態度から急変して、レナは微笑んできた。僕はその笑顔に不覚にも心臓が縮み上がる。

こ、これがギャップ萌え!?こんなの画面越しの女の子にしかゲフンゲフン。

 

「どうした?」

「い、いや……それで完璧だ。さすが俺が教えただけのことはある」

「時間はかなり掛かったな」

 

うるさい。

 

「それで話を戻すが、俺が魔王になるのは分かった」

「私も魔王になる」

「レナの母が世界を滅ぼそうとしているのも理解した」

「父上を生贄にしてな」

 

うーん、いつ聞いても父親が可哀想過ぎて泣ける。でも隠し子は不味いよな。乙。

 

「隠し子ってことは……レナの本当の母親は誰なんだ?」

「え?知らないが?」

 

そんな当たり前な顔で僕を見ないで。

 

「魔王になれば親父が現れるんだよな?具体的にどうやったら現れる?」

「私が名声を上げれば父上の称号である魔王が無くなり、私が魔王の称号を手にすることができる。父上は必ず私から称号を奪い返すはずだ」

「称号って……そこまで大事なのか?」

「魔王の称号があるだけで魔界の軍を思うがままに動かせるぞ。全部」

(それを貰うのか……僕は……)

「だが、父上の妻である母上は易々と私を魔王にしないだろう」

「何故だ?」

「母上は本気で父上を愛しているからだ」

(そりゃ隠し子がいたら殺されるに決まってるよ……)

 

もう焼かれろよ父。こんなに素晴らしい妻がどこにいるだろうか。

 

「大体理解できた。いいだろう、最強と謳われたこの俺が魔王になってやろう!」

 

しっかりと決めポーズを取って俺は承諾する。これ大事。

 

「そうか!じゃあさっそく人間を全員皆殺しに

「ごめんちょっと待って」

 

僕は手を前に突き出してレナを止める。今聞いてはいけない言葉を聞いた気がする。

 

「人間を……どうするって言ったお前?」

「皆殺し」

「……………ん?」

「皆殺し!聞こえないのか?」

 

僕、人間。

ヤバい。バレたら即打ち首だろこれ。いや、僕はまだバレていない。バレてないよね?

 

「なぁ……俺とレナは二人で魔王だったな?」

「そうだ」

「……軍の指揮を俺にやらせろ」

「何故だ?」

 

人間を皆殺しにさせないためです。

とか、言えないな。

 

「一つ聞くが人間側はどのくらい強いんだ?」

「国ごとに異なる。大きい国であればあるほど戦力は強い」

「どこの国を攻めるつもりだ?」

「人間界に攻めた時に近くにある国だ」

 

計画性0だな。

 

「はぁ……俺が人間側のお偉いさんならばその国の守りをとっくに強化させている」

 

人間だけど。

俺は中二病を発動しないように続けて説明する。

 

「理由は簡単。こういう戦争はどこか一つ自分の領土が取られるとなし崩しに次々と取られるものだ」

 

一度領土を取れば戦略の数は2倍。3倍。いや、10倍にも跳ね上がる。それほど最初の一手は大事だ。

チェスや将棋だってそうだ。最初の一手でどうやって勝つか、どうやって守るか、全てが変わる。

 

(だが、それはゲームやボードゲームでの話!)

 

本物の戦争なんか分らないよ!

魔物がどれだけ強いかも分からないのに!指揮なんかできるか!

人間VS魔物!これ、魔物が勝つよな?

 

(戦争を起こさせないようにする方法……それは僕が魔王軍を人間界に攻めさせないことだ!)

 

僕の言っていることは『はったり』だ。上手い事、指揮を取ることが出来れば人間との戦争を避けられるはずだ。

 

(これで引っかかってくれるといいんだけど……)

 

さすがの魔王でも僕の嘘を見抜くはずだと思うが……

 

「なるほど……さすがシンヤだ!私が認めただけでもある!よし、軍の指揮はお前に任せよう!思う存分人間の戦略を潰してくれ!」

 

将来詐欺にあいそうで怖い。

 

「あ、ああ!この俺が必ず世界を混沌の渦に巻き込んでくれるわ!」

「おお!」

 

僕の言葉を聞いて目を輝かせるレナに僕は少し心を痛める。

人間の皆さん!逃げて!僕が足止めしているうちに!

 

「お嬢様!」

 

僕の後ろから聞いたことのある低い声が僕の耳に入る。

振り返ると……アレ?

壁があった。確かにここから声がしたはずだけど……?

 

ドゴンッ!!

 

突如、僕の目の前の壁が吹っ飛んだ。

壁の向こう側から現れたのは赤い皮膚をもった巨大なドラゴンだった。

 

「うわああああああッッ!?」

「ドラゴ。何事だ?」

僕は腰を抜かして驚き、尻餅をついた。レナは眉ひとつ動かさずドラゴに尋ねていた。

 

「まず良い報告があります。まずお嬢様は魔王に認められました。そして、魔王を希望していた魔物は全てお嬢様の忠実な僕になるそうです」

「さすがドラゴ。それで?悪い報告もあるのだろう?」

「悪い報告はそこの小僧も魔王を認めてしまったことです。さらに残念なことに先程の魔物たちも小僧の部下になると言っております」

 

すごい。僕、ドラゴにすごく嫌われてる。

というか、チェスでの賭けを守ったのかあの魔物たちは。律儀だな。

僕はズボンを濡れていないか確認して立ち上がる。大丈夫。漏らしてない。

隣で腕を組んでいるレナはドラゴの言葉に少し苛立っているようだった。

 

「ドラゴ。まだシンヤを認めないのか?」

「そもそも魔王は力ある者がなるのが必然的。だが、そこの小僧にはそのような力があるとは思えません。頭の回転は少しばかり良いようですが、魔王になるには不向きです。小僧には参謀の側近でよろしいでは無いですか?」

 

敬語使っているようで使っていないね、このドラゴン。小僧小僧って……一応僕は17歳なんだけど?うん、小僧だね。

 

「ダメだ。魔王にする」

「お嬢様!」

「ドラゴ。お前は一つ勘違いをしている」

「……何をですか?」

 

レナは僕に指をさしてハッキリと告げた。

 

「シンヤには【邪眼(ダークネス・アイ)】がある!」

 

いやあああああああ!!!

それは設定!止めてよ!目からドラゴンの力とか涌き出ないよ!

 

「シンヤの中には黒炎竜の力が眠っていて、間違って力を解き放すと宇宙の銀河系をすべて滅ぼしてしまうらしいぞ!」

 

僕は日本語を教えているときに雑談したことを後悔する。かっこつけなければよかった。

とにかく、今は誤解を解かないと……その前に。

 

「銀河系だけでは済まないぞ。銀河系のさらに奥にある【最終宇宙空間(アナザーギャラクシー)】まで崩壊させてしまうんだ」

「あ、アナザーギャ、ギャラシー?」

 

僕の言葉に首を傾げるレナ。気にせず続ける。

 

「俺の力は間違って解放するなど到底無い。あれは言葉のあやだ。俺は現に黒炎竜の(フォース)を使いこなしている!」

「よ、よくわからないが……すごいだろ!ドラゴ!」

 

あ。

 

(しまったあああああ!!!)

 

僕は死にたい気持ちになる。

何故ここでよりによって中二病を発動させてしまった。いや、設定が違うことが許せないのは分かる。いや、分からないよ馬鹿だろ、僕。

 

「そういえば魔王を決める時、小僧はいつこの城に入って来た……!?私が見張っているのに……まさか!?それも黒炎竜の(フォース)と言うのか!?」

 

ちゃう。

 

「私も気付かなかったぞ!」

 

そこ自慢するところちゃう。

 

「当たり前だ!この俺の気配を察知するなど1億光年早い!」

 

そこ乗っかるところちゃう!あと、それ距離だから。時間ちゃう。

 

「……………分かりました。少し小僧については考えを改めて見ましょう」

 

改めたならそんなに睨まないでドラゴ。僕の体に穴が開いちゃうよ。

 

「よし、ではドラゴ。晩餐の仕度をしろ。今宵は私とシンヤの祝いだ」

「御意」

 

ドラゴは静かに長い首を下げて、その場から立ち去る。

 

ドゴンッ!!

 

壁を突き破って。

砂埃が天井まで高く舞う。ゴホッ。

 

「ご、豪快な奴だな……」

「何がだ?」

「な、何がって……壁を突き破っていることだ」

「それがどうした?」

「……いや、もういい」

 

なるほど、自由な所ですね。魔界は。

 

「何だ?気になるじゃないか」

「だから、壁をそんなにホイホイ破っていいのかって聞いてるんだ」

「ドラゴの体だと仕方ない。それに」

 

レナは壁を見つめる。つられて僕も視線を壁に移す。

その時、目を疑った。

壁が新しく生成されているのだ。

壊れた箇所からドロドロした液体が出て、穴を塞いでいく。

そして、元通りに戻った。

 

「すぐに直る」

「……この城は(ソウル)が宿っていたりするのか?」

「……何を言っているんだ?生きているわけないだろう」

 

レナに異端者でも見るかのような目で見られた。ちょっと中二病混ぜたけどダメだった。魂と書いてソウルと読む。グッジョブ。

 

「晩餐って飯を食ったりするアレか?」

「そうだ」

「……ようやく俺に休息が得られるのか。さすがに(フォース)を常時出しているのはキツイからな」

 

あまりの安心感に中二病発動。僕は頭を抑えて痛みに耐える。痛くないけど。

 

「だ、大丈夫なのか?」

「安心しろ。真紅に染まりし鮮血を飲めば、疲れ切った我が体もすぐに回復する。この程度造作もない」

「血だな!まかせろ!ドラゴに用意させ

「よし!今日は良好だ!俺の右手が最高に(うず)くぜえええええェェェ!!」

 

僕は急いでドラゴの所へ行こうとしたレナを必死に止める。油断も隙も無いよ。

 

________________________

 

 

「それでは皆の者。遠慮なく食べたまえ」

 

レナの一言で()()()晩餐が始まった。

何が最悪かと言うとまず招待された奴らが魔王になりたかった奴らだったからだ。そう、モンスターたちだ。今は僕の部下らしいが今はそんなことはどうでもいい。

人という名の人種が一人……一匹もいない。

モンスター怖い。気を失いそう。

そして、そのせいで一番最悪なのは……料理だ。

 

「どうしたシンヤ?食べないのか?」

 

レナが僕の顔を覗きこんで様子を伺う。

僕の目の前に出されているのはスープだった。ただし、色は紫だ。

スープの色が紫とかおかしいだろ。何か泡立ってるし。え?もしかしてこれって目玉じゃ……いや、考えるな。見るな、僕。

モンスターたちは何の躊躇いもなく豪快に食べて行く。レナもスプーンですくって食べていた。

 

「念のため聞きたいことがある。これは何が入っている?」

「そうだな……まずギャークスの肉が入っている」

「ギャークス?」

「見たことないのか?黒くてウネウネした奴」

 

レナの言葉に僕はうなぎを連想させる。だったら食べれるか?でも、紫なんだが?

 

「腕が何本も生えて大きな目が特徴的な奴だぞ?本当に知らないのか?」

「知らない方がよかった」

 

僕は急いで手を合わせてた。もちろん『ごちそうさま』だ。断じて『いただきます』ではない。

絶対モンスターだよね?あそこにいるウネウネした奴と大差ないよね。

 

「ほ、他の料理はないのか?」

「あそこに食材があるから自由に料理してもらえばいい」

 

レナは後ろに視線を送り、僕に教える。

後ろには大きな縦長の銀鍋がいくつも置いてあった。

食べれるものを探すため、僕は立ち上がり鍋の近くに移動する。

とりあえず一つだけ試しに蓋を開けて見た。

 

パカッ

 

「にゅ?」

 

バンッ!!

 

僕は普段じゃ出すことのできない身体の限界を超えた速さで蓋を閉めた。

何かいた。しかも喋った。『にゅ』って。

どんな奴がいたかは聞かないで。気持ち悪い奴だったから。

 

「……………」

 

僕は静かに隣の銀鍋の蓋を開ける。

 

パカッ

 

「キシャアアアアアッ!!」

 

バンッ!!!

 

「レナあああああ!!」

「ッ!?」

 

僕は大声でレナを呼んだ。レナは体をビクッと驚ろいてこちらに振り向く。

 

「ど、どうしたシンヤ?」

「少人数の部隊を作ってくれ。今すぐ!」

 

レナの目が見開いた。僕の言葉を聞いて察したのだろう。

 

「攻めるぞ、人間界に」

 

僕のご飯狩りだ。

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