中二病は魔王様   作:夜紫希

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中二病の魔王は闇を知る

【ルルセット国】

 

人間界で三番目に大きい国。魔界から一番近い国でもあるため兵士の数、戦力は人間界で一位を争う程の実力。

ゆえに戦士や魔法使いなどの職業を持った者たちが多く暮らしている。

そのため店は武器屋や防具屋が比較的に多く、魔界が恐れる国になりつつある。

だからと言って、決して物騒な国ではない。逆に一般市民は強い者。職業を持った者が多くいることによって、魔物から守られている安全かつ平和な国だと印象付けられている。おかげで人口も多い。

土地は広く、食料にも困らない。人材や資源も十分備わっている。

まさに素敵な国の代表例だ。

 

しかし、黒白院(こくびゃくいん)真也(しんや)。本名籠姫(かごひめ)雪也(ゆきや)は語る。

 

この国はあの国(日本)と同様、腐っているっと。

 

________________________

 

 

僕たちは少数部隊を編成させ人間界に乗り込んだ。メンバーは僕と頭を失った甲冑騎手と………。

 

魔王レナの三人で人間界に来た。

 

現在、街に向かって森を歩いて進行中。

 

「おかしい……俺は少数メンバーは8人くらいだと予想していたのに……」

「旦那、最初は14人いたんだぜ?」

「じゃあ何で3人で人間界に来ることになった!?あと、何でレナまでついてきた!」

 

僕は大声で二人に抗議する。おかしい、三人って少なすぎる。

 

「私は全属性魔法、暗黒魔法、空間領域魔法、超次元爆破魔法、転移魔法……まだ多くの魔法が使える」

「……エルフとダークウィッチがあんなに落ち込んでいた理由が分かったな」

 

レナがいるせいで他の魔物の魔法が要らない現実。だが、ここで一つ疑問が生まれた。

 

「おい、首なし騎士(デュラハン)

「……………もしかして俺のことですか、旦那?」

「ああ、そうだ。名前が分からなかったから適当に名前を言った」

 

相変わらず無意識で中二病を発動してしまった。ここまで来ると一種の才能なのでは……!?いや、それはないね。

 

「……い、いえ!旦那、その名前貰ってもいいですか!?」

「それは構わないが、前の名前が気になる。聞いていいか?」

「……………ホッピーです」

「え?」

「ホッピーです」

「………まじか?」

 

かっこ悪いな……。

ここは一つ。言ってみたいアレをやってみよう。

 

「この俺様、魔王が貴様に名を授ける。貴様は今日から【魔界の暗黒騎士(シャドーナイト)】。名はデュラハンだ!」

「ははぁ!有り難き幸せ」

 

僕は右手でホッピー改め、デュラハンに向かって指を差す。デュラハンもノリが良く、片膝をついて右手を胸に当てた。

そして、静寂が場を支配した。

レナは黙ってその光景を見ていたが、沈黙に耐えきれなくなり、口を開く。

 

「……何をやっている?」

「「楽しいよ?」」

「馬鹿なのか?」

 

僕もまだまだ子供です。

 

「それで……話がかなりずれてしまったが、デュラハン。お前、何で来た?」

「それはちょっとひどくないですかね!?」

「レナがいればデュラハンいらないだろ」

「ふっふっふ、甘いぜ旦那。俺には魔法なんか必要ない!」

 

頭は必要だけどね。

何でついて来たのかデュラハンの代わりにレナが説明する。

 

「確かに、そいつは魔界一の剣技の持ち主だ。私より強いと聞いている」

「剣だけですがね!」

 

デュラハンはそう言ってドヤ顔をした……ような気がした。いや、頭が無いけどドヤ顔してそうな感じだった。

僕はデュラハンが凄い事が分かり、少し驚いた。

 

「てっきり3ステージ目くらいに出てくる雑魚くらいの強さかと思ってた」

「さっきから酷くないですか、旦那!?」

 

別に。僕は普通だよ?

 

「見えてきたぞ」

 

レナは前を指差して教える。

 

「はぁ?何も見えないぞ」

 

僕は目を凝らすが、前方はまだ森が深くまで続いている。

 

「旦那………あと一時間歩けば俺たちにも見えると思います」

「どんだけ目が良いんだよ!」

 

 

________________________

 

 

「やっとついた……」

 

一時間歩き続けた僕は呼吸を整えながら言う。汗を滝のように流し、体力はもう0だ。

正面には街の防壁である約10mの壁がある。入り口は3mほどの大きさで、閉ざされている。

 

「お疲れ様です、旦那」

「ああ、はやく中に入って休憩しよう」

 

デュラハンに肩を貸して……首が無いから腕を回せない。結局僕は一人で立ち上がる。

 

「だけど、どうやって入るんだ?」

「普通は門を開けてもらうのですが……偵察しに来たのならこっそりと入るのが

 

ドゴオオオオオォォォ!!

 

僕とデュラハンの言葉が巨大な爆発音で打ち消された。

 

ついでに門も打ち消s……吹っ飛んだ。

 

「ん?入らないのか?」

 

レナは不思議そうな顔をして、僕たちを見る。右手には大きな魔方陣が回っていた。

 

「もうやだこの人」

「旦那、しっかりしてください!」

 

絶対メンバー間違えたでしょ?

 

「しゅ、襲撃だああああああァァァ!!」

 

街の中では民間がパニックを起こしていた。

 

「「ですよねー」」

「よし、行くぞ!」

「「ちょッ!?」」

 

僕とデュラハンが同時にレナを止める。行くぞ!っじゃないよ!ダメだよ!

 

「レナ、姿を隠す魔法はあるか?」

「あるわよ?」

「はやく使え!」

 

レナは魔方陣を僕たちの足元に出現させる。その瞬間、僕たちの身体が透けていく。

 

「これで誰にも見えないはずだ」

 

本当に何でもできるチート魔王だった。

 

「旦那、中に入りましょう」

「そうだな……」

 

僕はパニックに陥っている兵士に向かって南無三。ごめんなさい。

【ルルセット国】に入国した。

 

 

________________________

 

 

「凄い……」

 

僕はルルセット国の街並みを見て感激した。

街は大勢の人が賑わっており、道がぎっしりと人で埋まっていた。子供、老人、若者、カップル爆発しろ、鎧を着た騎士、とんがり帽子を被った魔法使い。まるでRPGの世界に来たことを錯覚させる。

透明化している僕たちは人が多い場所に行くのは危険なので、現在民家の屋根にいる。僕の身体能力では屋根に飛び乗ることは不可能なので、デュラハンにおんぶされて登れた。頭無いからしがみつきにくかった。

 

「もしかしてあの奥にあるのは城か?」

「ああ、ルルセット城だ」

 

僕の質問にレナが答えてくれる。

街の最奥には山のように高くそびえる巨大な白い城があった。

存在感が半端じゃなかった。「この国の頂点は俺様だ!」と言わんばかりの大きさ。絶対にあそこに王様がいる。

 

「だが、この国は人間界で3番目なんだろ?」

「はい、旦那の言う通りこの国の戦力、土地の大きさは人間界で3番目です」

 

今度はデュラハンが答えてくれた。一番の国も見てみたいけど、今はそれどころじゃない。

 

「お腹空いた……」

「何で食べなかったんですか?絶品ですぜ?」

「ダメだ。俺は絶対に食わんぞ」

 

食べた瞬間、僕のライフゲージが一気に無くなりそうだよ。

 

「とにかく食べ物を買いに行くぞ?」

「「?」」

「どうした?」

 

僕の発言を聞いて二人が不思議そうな顔をした。

 

「略奪するのが手っ取り早いだろ?」

「あータイムタイム。作戦タイムお願いします」

 

レナの言葉を聞いて急いで作戦会議を開く。さすが魔界にいる奴らは野蛮だな。

 

「俺たちはここに何しに来た?」

「偵察ですか?」

「そうだ。なら俺たちは人間と同じ行動を取るべきだろ?」

「「……………」」

 

さすがに苦しい言い訳だったかな?

 

「そうだな……確かに一理ある。さすがシンヤ!」

「すげぇぜ旦那!そこまで考えてるなんて!」

 

杞憂だった。

家から降りて薄暗い路地裏の道に着地する。

僕はレナに透明化を解いてもらうように言うと、魔法陣がまた足元に出現する。そして、再び自分の体がはっきりと見えるようになった。

さすがにデュラハンはそのまま歩いたらアウトなので首の部分に壁際にあった丸いツボ(ドラ〇エでよく見かけるアレ)を乗せて、黒い布を頭に被せた。よし、解決。

僕とレナはコートを羽織っているから問題ない。レナが着ている黒いドレスのような服も目立つことはない。僕?僕はTシャツにジーパンだ。そして、コートを羽織っている。うん、もちろんダサいよ。

 

「じゃあ行くか……我が生命の源になる(しょくざい)を求めて……!」

「え?旦那……マジでこれで行くんですか?」

 

とか言っているがしっかりとついてきているデュラハン。必死にフードでツボの頭(仮)を隠す。

薄暗い路地から出て、大勢の人々が賑わっている大通りに出る。

 

「ねぇねぇ、聞いた奥さん?」

「何かしら?」

「正門が壊されたらしいわよ……物騒だね」

「まぁ!一体誰が……!?」

 

僕達です。

 

「ふふふ、有名になったな、私たち」

「ポジティブ過ぎるだろ」

 

この魔王凄いよ。ただ者じゃないよ。

 

「そうですね。このデュラハンも有名に」

「なってない。てか、お前何もしていないだろ」

 

アホみたいな会話をしながら街道を歩く。ああ、お腹すいたよ。

店の屋台には美味しいそうな食材や料理が並んでいる。

 

「金は持ってないのか?」

「え?何で持つ必要があるんですか?」

「……逆に問う。何故持たない」

「奪えばいいじゃないですか」

「なるほど、さすが小悪党(デュラハン)だな」

「えッ!?何でちょっとせこそうな奴になっているんですか!?」

 

僕がデュラハンを弄っている時、

 

「あれ?レナはどこだ?」

「………嫌な予感がしますぜ、旦那」

 

ああ、奇遇だね。僕もだよ。

 

「何しやがるんだテメェ!」

 

遠くで男が怒鳴り声が聞こえた。その方向を見ると、人だかりができていた。

 

「何だ?文句があるのか、人間」

「あぁ!?テメェも人間だろうがッ!」

「あー、レナの声なんか聞こえないぞ、俺は」

「諦めてください旦那」

 

何でこの魔王は問題ばかり起こすのだろうか。

僕は人混みをかき分け、中心にいる迷惑魔王様を探しに行く。

中心には一人の中年男と美少女魔王がいた。

 

「何をやった、レナ」

「む、シンヤ。ちょうど良かった」

 

僕の顔を見た瞬間、レナはムッとした顔から笑顔になった。

 

「聞いてくれシンヤ!この男が訳の分からないことを言っているんだ」

「レナ、状況を説明してくれ」

 

レナは頷いて言った。

 

「うむ、ここに置いてあるリンゴを食べたのだ」

「……金は払ったのか?」

「…………?」

「お前が悪い」

 

僕は切に願う。人間界の常識を少しだけでもいいから知ってください。

おじさんの額には血管が浮き出ている。相当キレているようだ。

 

「まぁまぁ、落ち着いてください」

 

デュラハンが僕とレナの前に来て、おじさんの前に立った。どうやら仲裁に入ってくれるらしい。デュラハンは魔王より常識があるみたいだ。

 

「んだテメェ!?出しゃばってんじゃねぇぞ!」

 

おじさんはデュラハンの胸ぐらを掴んだ。

 

「あッ」

 

気付けば僕は声を漏らしていた。

 

ガシャンッ!!

 

デュラハンが乗せていたツボが落ちた。

 

「「「「「……………」」」」」

 

場が静寂に包まれる。

 

「………どうも、デュラハンです☆」

 

何故自己紹介したし。

当然ながら、今のデュラハンには頭が無い。よって、

 

「「「「「うわあああああァァァ!!」」」」」

「「「「「きゃあああああァァァ!!」」」」」

 

悲鳴が街に轟いた。

 

「あぎゃあああああァァァ!!」

 

おじさんも失神寸前。

 

「どうする?薙ぎ払うか?」

「お前ちょっと自重しろ」

 

レナが真顔で言った。僕は呆れて頭を抑えた。

 

「旦那、とにかく逃げましょう!」

「ああ、そうだな」

 

僕はデュラハンに再び抱っこされ、レナと共に逃げた。

 

「【空間転移(ヴァイタル)】!」

「普通に逃げようよ……」

 

レナの足元に魔方陣が現れる。

一瞬にして、僕の見る景色が変わった。

 

 

________________________

 

 

「どこだここは……」

 

気が付けば僕は一人だった。

どこまで飛ばされたのだろうか。ルルセット国の街とは正反対で、道はゴミが落ちており、民家はボロボロだ。

空気は不味く、キツイ異臭が鼻を刺激する。匂いの元を辿ると、道で何人も人が汚い布に包まって寝ている。あれは果たして生きているのだろうか?貧弱な体をした僕より腕や足が細い。

ふと足元に視線を落としてみれば、ネズミの死骸が転がっていた。僕は口元を抑えながら後ろに下がった。

 

「坊主……金をくれないか?」

 

その時、横から声をかけられた。

 

「ッ!」

 

僕は声をかけられた人物を見て驚愕した。

声をかけたのは白髪の男性。髭も白く、長い。外見から察するに、年齢は60を超えているはずだ。

そして、両腕が無い。

着ている服はボロボロの布一枚。体は震えている。

老人は家の壁に背を預けて座っている。

 

「大丈夫ですか!?」

 

僕は急いで老人にかけよった。

老人の体から酷い匂いがする。言い方は悪いが、生ゴミより酷い匂いだ。

 

「金……金は無いのか?」

「すいません、今は何も」

「持っていないのか……そうかそうか……」

 

僕の言葉を聞く前に、老人は答えた。そして、老人は下を向いて俯く。

 

「家まで送りましょうか?」

「家か……そんなものとっくの昔に売り払った……」

「売った?」

 

老人はポツポツと語りだす。

 

「両腕を失った瞬間、同時に職も失ってしまった」

「……………」

「金は減っていく一方……家を売ってしまうまで減っていた」

 

僕は老人から視線を外して、周りを見た。そして、確信した。

ここは老人と同じような人が集まった場所なんだと。

日本で言うとホームレスだ。ここにいる人たちは家を、仕事を、無くした者たちだ。

 

「ああ、そうだ。ここはワシのような人たちが集まる場所だ」

「ッ!?」

「驚いたか?ワシは人の心を読めるのじゃ」

 

老人は目を瞑り、誇らしげに言った。

 

「ここはルルセット国の東側にあるスラム街。棄てられた街じゃ」

 

僕が迷子だということを知っていたのか、老人はわざわざ場所まで教えて説明してくれる。

 

「棄てられた……それは国にですか?」

「ああ」

 

老人はゆっくりと頷いた。

 

「税金を払えぬ者に、幸福は訪れない……現国王の言葉だ」

「……あなたの人の心を読む能力を使えれば、お金は稼げたのではないのですか?」

「ワシが何故腕を無くしたと思う?」

 

老人はゆっくりと目を開ける。その目には怒りが込められていた。

 

「国王の側近である大臣。そいつの心を読んだせいだ」

「そ、それだけで……?」

「ああ、読んだ心が最悪なモノだったからだ」

 

老人は告げる。

 

「大臣は国王の暗殺……そして、魔物と手を組んでいたことが分かったからだ」

「なッ!?」

 

僕は驚き、目を見開いた。

 

「これは30年も前の出来事だ。今は現国王が……」

「大臣……!」

 

僕は震えながら言う。僕の言葉に老人は弱々しく頷いた。

 

「あの時、国王にこのことを言った。暗殺されるっと……」

 

しかしっと老人は一度区切る。

 

「運悪く、その場に大臣と魔物が隠れていた。ワシは両腕を斬られ、国王は魔物に殺された。ワシは必死に逃げ、このことを兵や役人に言い回った」

 

老人は空を見上げる。

 

「そして、ワシと関わった者が全員打ち首になった」

「嘘……だろ……!?」

 

老人は空を見上げながら首を振った。

 

「反逆罪だった。皆無罪を主張するも、無駄だった」

「じゃあ何で……何でこの街はあんなに賑やかで……!」

「知らないから……じゃろ?」

 

僕は信じられなかった。

あんなに賑わっていた街が。

 

「ここにいる者は大臣に反逆したものだ。歯向かった人たちは財産を奪われ、やがて全てを奪われる。(大臣)税金()を払えぬ者もここに牢獄される」

「牢獄……?」

「そうか……魔王じゃったな、あんたは」

「……………」

「身構えなくていい、今のワシは何もしない」

「……………すいません」

「魔王がワシに謝るか……これは貴重な体験だ」

 

老人は小さく笑う。だが、僕は未だに笑うことはできない。

 

「代わりにお教えしましょう、魔王。この街は国王によって閉じ込められているのです。一般市民が入れないように」

 

僕の手が……いや、体が震えてきた。

 

「ここからはもう出ることは許されないのです」

 

状況が理解してしまった。

……シリアスな雰囲気だけど一回ぶち壊すね。

 

(僕、閉じ込められたッ!?)

 

どうしよう!?何てところに瞬間移動してんだ!

 

「では、まずネズミの獲り方から……」

「暮らさないよ!?僕はここで暮らさないよ!?」

 

この老人、さっきまで弱っていなかったか!?

 

「あなたと話していると、少し元気が出ました」

「そ、そうですか……」

「だから、はやく逃げてください」

 

老人の目つきが変わった。

 

「うぅッ……」

「ッ!」

 

道の奥から男の呻き声が聞こえた。

 

「ったく、道で寝てんじゃねぇよゴミが」

「全くだ。ほら、あぶないですよ~?」

 

ドゴッ!!

 

銀色の鎧を着た兵士が道に倒れている男を蹴り飛ばした。男は弱っていて抵抗することができない。

 

「何てことを……!?」

「兵士はこの牢獄を見回りに来ます。そして、暇つぶしに私たちを痛み付けるのです」

「暇つぶし……ふざけすぎだろ……!」

 

僕は老人を急いで立たせる。

 

「な、何を……?」

「逃げるに決まっているじゃないですか!はやく立って……!」

「おいおい、露骨に嫌がってんじゃねぇよ?」

 

後ろから声をかけられた。

 

ドゴッ!!

 

その瞬間、背中に衝撃が走った。

 

「がはッ!?」

「ぐぅ……!」

 

僕と老人は一緒に壁に叩きつけられる。体の中にあった空気が一気に吐き出される。

僕達を蹴ったのは先程の銀色の鎧を着た兵士だった。

 

「おいおい、もしかして侵入者って奴か?」

「マジかよ!殺す?」

「ッ!?」

 

足が震えだし、背中に嫌な汗が流れ出した。

兵士の腰にぶらさげている剣が怖い。

二人の兵士は徐々に近づいてくる。

 

でも、ここで怖がっていたらダメだ。

 

ここでしっかりと気持ちを伝えるんだ!

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!僕、死にたくないです!」

 

 

 

 

 

「「「え、えぇ……?」」」

 

The・土下座・インフィニティ・クロス・バインド。

その時間、わずか0.5秒。

 

「許してくださいごめんなさい!死にたくないです!僕はゴミなので無視してください!」

「坊主ゥ……」

 

老人がこちらを見て憐れんでいた。

 

「……どうする?」

「ろ、牢獄に入れておくか?」

 

先程まで人を蹴っ飛ばしていた兵士が戸惑っていた。

僕の秘技を見た者は必ずそんな反応をする。どうだ、カッコ悪いだろ!?

 

「牢獄ですか!?お願いします!入れてください!暴力は振らないでください!」

「あ、うん……」

 

兵士は僕の肩を掴んで立たせる。

一つ言っておくと、僕は変態ではない。

 

「あ、いましたよ」

「おーい、シンヤ!」

 

いいタイミングだなぁ……ホントに。

声がする方を見てみると、綺麗な黒髪の美少女と頭を失ったモンスターがこちらに向かって歩いてきていた。

 

「ま、魔物だと!?」

「まさか門を破壊したのは……!」

「ああ、私だ」キリッ

 

キリッって何だよ。ドヤ顔してんじゃないよ。

 

「そして、私が首なしの騎士……デュラハンだ」キリッ

 

だからキリッって何だよ。顔ないじゃん。キリッ顔もドヤ顔分からないよ。

 

「クソッ!」

 

一人の兵士が鞘から剣を抜く。そして、デュラハンに向かって突撃した。

 

「甘いな、人間」

 

デュラハンの声が聞こえた瞬間、兵士の持っていた剣が消えた。

 

「は……?」

 

兵士は自分の手を見て混乱する。そして、驚愕した。

 

剣は腰の鞘に戻っていた。

 

「殺す価値も無い」

「デュラハン……すげぇ……」

 

さすが少数部隊のメンバーから外されなかっただけの実力はある。

 

「そこの人間、旦那から手を放せ」

「そうだ、放せ」

「アンタ、さっき命乞いしていただろ……」

「この俺様を拘束するなんて……死にたいのか?」

「え、えぇ……?」

 

兵士はドン引きだった。さきほどの態度の違いに。

 

「放さないなら仕方ない……デュラハン!」

「御意」

 

スパンッ!!

 

デュラハンは目にも止まらぬ速さで僕を回収した。ちなみに何が起こったのか僕も分からない。気が付いたら僕はデュラハンに担がれていた。

 

「よし、次はあの兵士を死なない程度でボコボコにしろ」

 

ドゴッ!バキッ!メキッ!

 

「「ぐえッ!?」」

 

またしても一瞬にしてデュラハンが兵士をボコボコにした。兵士は道に倒れ、動かない。し、死んでないよね?

 

「無事で良かった。途中で落としたから死ん……無事で良かった!」

 

待てレナ。下手をしたら死んでいたのか、僕は!?しかも、落としたってふざけてんのか!?

 

「まぁいい……その分収穫があったからよしとする」

「収穫……ですか?」

「ああ」

 

僕はレナの方を向く。

 

「レナ、この国が欲しくないか?」

「「「ッ!?」」」

 

僕の言葉にレナ、デュラハン、老人が驚いた。

 

「そ、そんなことができるのか!?」

「ああ、上手くいけばの話だ」

「き、聞かせてくれ!」

「フッフッフ、いいだろう!」

 

コートをなびかせながら高らかと言う。

 

「それはこの老人を我が軍に入れるということだ!」

「「な、何だって!?」」

「わ、ワシ!?」

 

僕はコートを老人に渡す。

 

「おい貴様……俺の配下になれ」

「ッ……ワシは魔王の仲間になるくらいなら……」

 

老人は僕から目を逸らす。

 

(配下になってくれたら、この国を救ってみせます)

 

「ッ!?」

 

僕の心を読んだ老人が驚愕した。

 

(あなたの力があればこの国を救うことができる。どうしますか?)

 

「……………ッ!」

 

老人は少し考えた後、力強く頷いた。

 

「いいでしょう。あなたに仕えましょう、魔王様」

「それでいい。名は何と申す?」

「ファブル=カプラコーンです」

「よし……レナ、デュラハン、ファブル」

 

僕は笑いながら言う。

 

「まず飯を食べに行こうか」

 

「「「……………」」」

 

もう餓死しそう。

 




【没ネタ】

デュラハン「え、旦那を途中で落としたんですか!?」
レナ「ああ、落とした」
デュラハン「なんでそんなに冷静なんですか!旦那を落としたんですよ!?」
レナ「だが、場所は分かるぞ」
デュラハン「……魔法で、ですか?」
レナ「鼻だ」
デュラハン「犬!?」
レナ「むッ!?シンヤは上かッ!?」
デュラハン「全然使えないじゃないですか、その鼻!」
レナ「実はいうと気配でわかる」
デュラハン「何でボケたんですか!?」
レナ「後書きだからだ!」
デュラハン「えええええェェェ!!」
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