【悪魔階級】
魔界には強さが段階的に分けられた名称がある。
弱い順に並べると魔物、魔獣、例外種、悪魔そして一番上に君臨するのが魔神だ。
魔物はスライムやゴブリンがコレに当てはまる。人間界にいる戦士や魔法使いなら簡単に倒せる弱さ。
魔獣。獣などのモンスターだ。先程の魔物よりは少し強い種族だ。
例外種はエルフやリザードマンなどの種族を指す。彼らは魔界に味方する種族と人間界に味方する種族と別れているため例外にされている。エルフは魔力が高く、リザードマンは力が強く、階級が同列となっている。
悪魔。一匹だけでも人間に脅威になる存在。かなりの上位のランク階級だ。腕っぷしの戦士が100人係で倒しに行っても、返り討ちに合う可能性があるほどの強さだ。ちなみにデュラハンはこの階級に属している。
そして、魔物の頂点に君臨する魔神。その階級のモンスターは一匹だけで人間界を滅ばすほどの力がある。
レナは魔神までの力は持っていないが、悪魔よりも強大な力を持っている。当てはまる階級がない。作るなら準魔神と言ったところだ。
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僕たちは現在ルルセット国の西側にある街の酒場にいる。
店内は中年のおじさん達が豪快に笑い、豪快に酒を飲み、豪快に殴られていた。喧嘩しないでよ……。
耳が痛くなる程うるさい中、僕たちは店の隅に座っていた。
「うるさい奴らだ。飛ばしてやろう」
「やめろ。今すぐその右手に展開している魔方陣を消せ」
僕の隣に座っているレナをなだめる。勘弁してくれ。
「さて、ルルセット国を奪う作戦だが、俺に考えがある」
「さすが旦那!カッコいいです!」
頭に壺を乗せ、布を被せたデュラハンが僕を褒め称える。
「今回の作戦の鍵となる人物。それが、さっき拾ったお爺さんだ」
「ファブル=カプラコーンです」
ファブルは頭を下げる。
レナはファブルを見て、僕に問いかけた。
「シンヤ、そいつの腕はどうした?」
「王様に斬られたらしい」
「王様に?」
レナの目が光った。
「なるほど、王様を悪者だと国民にバラし、革命を起こさせるのだな!」
「おしい。少し違うな。王様の座を―――」
僕はファブルの肩に手を乗せた瞬間、言葉を詰まらせた。
「―――何かヌチャヌチャしているんだが」
「すみません。最後に水を浴びたのは10年以上も前で……。腕があれば体を洗えたのですが……」
ファブルは申し訳なさそうな顔をして謝る。聞いてはいけないことを聞いてしまった。ファブルに悪いことをしてしまった。
そんなファブルを見たデュラハンは意気揚々で告げる。
「大丈夫ですよ、ファブルのじいさん!私など、お風呂に一度も入ったことがないですから!」
「お前、帰ったら風呂行け。決定事項だ」
汚いよ……。その状態で僕を触ったの?ショックだよ……。
「不便だな。私が腕をやろうか?」
レナの言葉に僕は立ち上がった。
「どういうこと!?自分の腕千切ってやるのか!?」
「違う。作るのだ」
「作る!?」
「シンヤが認めた者だ。腕の一本や二本、何十本でも生えさせてやろう!」
二本で十分です。気持ち悪くなっちゃう。
レナは呪文を唱え、右手の掌に魔方陣がグルグルと回る。
そして、ファブルの腕に黒い煙が渦巻いた。
(黒い……煙………)
もう嫌な予感しかしなかった。
ファブルの肩から新しい腕が……。
悪魔の手の様な黒い手が生えた。
「うわあああああァァァォォおおおいッ!?」
またビビったことを上手く?誤魔化した。
ファブルの腕は黒い鱗で覆われており、手の指は鋭く、爪が長い。
確かに腕が二本生え、元に戻ったが……正直に言うと恐ろしい。
「どうだファブル。いいだろう?」
「どこがだ!?」
レナのセンスは腐っているの!?それともこれが悪魔のかっこいいなの!?
ファブルは自分の悪魔の手を眺めながら呟く。
「………えぇ、素晴らしいですね」
「ほら見ろ!ファブルだって嫌……が……ってない?」
嘘……。
「自由に動かせます。完璧です。ありがとうございます」
「い、いいのかよファブル……」
気持ち悪くないのか?
「ほら見てください」
「あ、近づけないで……」
怖い。
「それで、シンヤの考えた作戦は何だ?」
レナに聞かれた質問に僕は答える。
「作戦を言う前に、王様はファブルの腕を斬るだけじゃなく、他にも悪行を行っていたことを知ってほしい」
僕は王様の悪行を事情を知らないレナとデュラハンに話した。
レナは深刻そうな表情で言う。
「魔界に相応しい人材だ……殺すのが惜しい」
「勘弁して」
もうやだ魔界の住人。デュラハンも「弟子にしたいですね」っとか言ってるし。
「もういいよ……でも殺すのはやめてくれ」
「何故だ?一国の王を殺したとなると、私の名声が上がるのだぞ?」
「殺すのが惜しいとか言ってなかったか?」
「名声のためなら仕方ない。死んでもらおう」
王様の命軽っ。
しかし、僕は認めない。
「人殺しよりいい使い道があるとしたら?」
「殺さないでおこう」
よし、全力で模索しよう。
「それで旦那。どうするんです?もし必要なら魔界から軍を呼びますけど?」
「必要ない」
デュラハンの言葉に僕はニヤリと口元に笑みを浮かべながら言った。
「王座を蹴り飛ばすだけだから」