チェイテピラミッド城に到着した僕達は、甲冑姿の男性サーヴァントに行く手を阻まれていた。此方を見つつも無言で佇むその姿に慄くも、僕達は横を通り抜けようとすると、男性は口を開いた。
「……汝等にはすまぬが、暫し付き合ってくれ」
「え、どういう事?」
口を開いた男性から発せられたのは謝罪の言葉であった。その真意を確かめる前に物語は先に進んで行く、真っ直ぐなその瞳の先には、此方に向かって走って来るエリザベートの姿が。
「子イヌ〜!やぁっと見つけたわよ〜!」
「え、エリザベート⁉この特異点にいたの⁉」
「先輩、エリザベートの姿がいつもよりも変です!」
「…水着?」
「トカゲのくせに水着でますたぁを誘惑ですか?」
「水着じゃないわよ!これは勇者の鎧よ!私の勇者としての証明よ!」
「…いや、酒場で見てたがよ、勇者だったのかよ…」
「…フ」
「──(アチャー)」
『うわぁ、勇者でその衣装は何処を意識したのか』
『うん、悪くはないが、悪くはないのだがねぇ』
『素敵な水着ね!』
「…ボリボリ、汝は羞恥心を置いて来たのだな」
「…同盟者、彼女は寒くないのでしょうか?」
「いや、ニトクリスの気にする所はそこなの?」
「あの鎧ですか?…まあ、騒ぐ程ではないですね」
「……そっか」
エリザベートが現れてから、騒がしくなった城前にて、静かに佇む男のその瞳はエリザベートを見ていた。エリザベートを見て、何を思ったかを図れる者はこの場にはいない。
「…エリザベート・バートリー」
「へ、──おじ樣!!」
『エリザベート・バートリーの叔父って事は、ヴラド3世⁉』
『驚いた、英霊の別側面の存在は認知しているが、第1特異点の彼は、狂化が入っていたが好々爺の様であった。しかし、彼の彼女を見つめる目は、姪を見る目じゃ無い!…そう、まるで仇を見る目だ!』
「はい、先程私達の前に立っていた人物と同じなのかと疑う程の威圧感です!」
「…あ、あの…おじ樣は、私を睨み付けて、何かあった⁉」
「吾は此処にその方の罪を裁きに来た!」
「…罪?それって何よ、何でおじ樣が裁くのよ⁉」
「汝は罪ありき存在、それが判らぬのであれば、かの女王の眼前に立つ事は敵わぬ。その戦装束を纏い勇者を名乗るのであれば、罪を理解せねばならぬ。──やり直すがいい、今一度」
「──おじ樣、いったいどういう事よ!」
「ヴラド3世?」
「───すまぬ」
視界が真っ暗に包まれた。いや、急な変化に咄嗟の反射で目を閉じたのだ。そして、目を開けると、僕達は宇宙を漂っていた。
「───い」
「へ、なに!」
「──まない」
「うん?」
「───すまない、唐突ですまないが」
「え、あれは⁉」
「なにやっとるんだ、アヤツは」
「此処まで死闘を繰り広げた皆にはすまないが、墓場からやり直して欲しい」
「でませい⁉」
「──マスターにはすまないが、意味の有る事だ。マスターには踏ん張り所と思っておる、頑張って欲しい」
「──ジークフリート、帰ったらご飯を奢ってね!!」
「──頑張ってくれ」
それを最後に、巨大なジークフリートはどんどん遠くなって行った。いや、僕達が離れているのかも知れない。そして、僕達は墓場に戻って来た。
「もー、何なのよ!おじ樣は何が言いたかったのよ!罪ってなによ!」
本当に墓場に戻って来た僕等は、戻る前にヴラド3世の言っていたエリザベートの罪について考える。
「……うーん」
「何なのでしょうか、エリザベートさんの罪とは」
「エリザベートの罪、……此処での?それとも…」
「…エリザベート・バートリー、思い出すのです」
「…ぜんっぜん、浮かばないわ!」
『エリザベート・バートリーの罪ねぇ』
『……』
『さっきから静かね?ダヴィンチさん』
「……」
「おい、緑の人、汝は知っておろう?」
「え?」
「ロビンさん?」
「──皐月の王、疾く言うのです」
皆の視線が集まるのを感じて、ロビンは溜息を吐き、頷いた。
「……はぁ、まあな」
「そうであろう、ヴラド3世とそこの煩いのの問答の際、お主だけは心当たりが有るという顔をしておった故な」
「…良く見てたな。……ああ、心当たりが有る」
「それって、何なのよ!」
「先に、オタク、街の様子を見て気付かなかったか?」
「へ、街?……………ああ、そう言えば街の皆、ハロウィンの支度をして無かったわね」
そう、ロビンの話では禁止令によって、街は誰も外に出ずに静かであった。
「そうだ、ハロウィンの準備をしていないんだ」
「…それは今の城主がハロウィンを禁止していたからでは?」
「まあ、それも有るが、その禁止令を発令する前からハロウィンの準備はされて無かったんだよ」
「何で⁉いつもは皆楽しそうに支度しているのに⁉」
「…何でじゃねぇよ…オタク、ハロウィンに浮かれて執政を怠ってただろ?」
「……あ、ああ!」
ロビンの指摘にエリザベートは雷に撃たれた様な衝撃が走る。目を見開いたエリザベートに皆は呆れと怒りを向ける。
「お、おバカ!貴方それでも城主でしょう!私で言わせればファラオ!ファラオが執政を怠るなど言語道断ですよ!」
「トカゲに執政は重かったのでしょうね」
「…汝、頭がそれでは配下もついてこんぞ」
「エリザベート、それはだめだよ」
「だ、だって、ライブ準備で忙しくて」
「そのせいで、民はハロウィンをして良いのか判らずに城主が変わって、あの静けさだ」
「ううう」
現状を理解したエリザベートは膝を落とし、顔を伏せる。
「エリザベート、貴方は駄目な人ですが此処で止まっても挽回も何も有りませんよ」
「リップ、あんたに考えが⁉」
「いえ、茨木さんが」
グワッと顔を上げるエリザベートにリップは茨木を指し向ける。
「…汝ら、吾の事を便利な参謀とでも考えて無いか?」
「うんん、考えて無いけど、茨木は浮かんだ顔をしてるよ?」
「…そうか、まあ、良い。…して、エリザベート、貴様は今でも城主か?」
「え?うん、チェイテ城は私の城よ!」
「ならば、簡単よ。汝の罪は頭の役目も果たさず、己の我儘を通しておる事。であれば、民の為に動けば良かろう」
「──!そうです、エリザベートさん、ハロウィンをやりましょう!」
「え?」
「──皐月の王、民は、ハロウィンを望んでいるのですか?」
「──ああ、望んでいる」
「うん、エリザベート、ハロウィンをやろう!」
「汝が今も城主であれば、祭の音頭を取れ」
「オタクの声なら此処からでも届くだろう」
「う、うん」
呼びかけに答える様にエリザベートはヨロヨロと立ち上がる。
「ほら、カッコよく決めるのですよ、
「ウォフ!」
「───(フレッフレッ)」
「そうね、そうよ!私は勇者で
清姫とヘシアンとロボの声援を受けて、勇者は此処に復活した。イメージの爆発を後ろに立つ姿は紛れもない
「チェイテ城城主として、此処に宣言するわ!今年のハロウィンを開催する!遅くなってごめんなさい〜!!」
放たれるドラゴンブレス。エリザベートの宣言は墓場を越えて、街全体に響き渡った。
あれ、エリザベートとこんなに仲いいってフランスで何があったんだ。