僕のカルデア日誌   作:kanaumi

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書けましたので投稿です。
今回でオケアノス編の特異点は終了です。

途中、かなり駆け足になります。

202609/27 追記


第39頁 オケアノスでの一幕⑩ 視界が晴れたなら

 

 ダビデ、アタランテ、アルテミス、オリオンがなんだかんだあって僕等と合流して、今はドレイクの船に戻ってきた。僕等が島に探索に行っている間、黒髭の襲撃に備えて待機してもらっていたんだけど、戻ったら大丈夫そうな彼女達が迎えてくれた。

「…随分と個性的な奴等を連れて来たもんだねぇ」

「……くま?」

「…視線が気に入らないわね、横の女神を見てなさいよ」

「─────」

「おや、オリオンは固まったようだね」

「ダーリン!?あの子に浮気しちゃ駄目よ!!」

「………ぅ、アルテミス様、落ち着いて下さい」

 お互いの初対面は悪すぎる物では無かった。オリオンが少し穴が空いたがアルテミス的には大きな問題じゃ無いんだろう。

 

「して、ドレイクよ、黒髭は見つかったのか?」

 話を変えるようにスカサハが尋ねる。

「…ああ、それなんだがねぇ」

「進展があったの?」

「うーん、どう言ったら良いもんか難しいねぇ」

 眉をすぼめるドレイク。とっても言いづらそうに説明しようと口をもごもごと動かしていた。

 

「何だよ、はっきりしねーな?」

「…そうね、私にも言語化が難しいわね」

「……うう…は、速かった」

「…速かった?なんか見たのか?」

 微妙な反応をするのは、ドレイクだけでは無かった。同じく船に残っていた、エウリュアレとアステリオスもだった。

 

「あ~、あなた達を待つ間に少し船を動かしたんだよ。置いてった通信機に話しただろう?」

『うん、聴いているよ。ただ、僕等もそっちの状況を把握出来る訳では無いから教えて欲しいな』

 ドレイクはさっき返して貰った、通信機を差しながら言う。

「ああ、少し哨戒目的で動かしたんだが、ビンゴだった。すぐに黒髭の船を見つけたね。あんた等が貸してくれた遠くを見える機械?でね。とは言ってもあたし等だけじゃ戦闘は難しかったから遠目で見てたんだよ。幸いにも向こうは気付いた様子じゃなかった」

「あ、あれ使ったんだ」

 人数の減った船が心配で置いていった望遠鏡だったが、ドレイクはえらく気に入った様子だった。

「ああ、良いもんだね。…あれ、くれないかい?」

「うーん、だめかなー、そんなに欲しかったの?」

「やっぱりかー、便利だったからねー欲しかった!」

『流石にアレの精度のが君の時代に合ったら技術のブレイクスルーと言うか、物として残るのは小さい事でも歴史に影響を与えちゃうとまずいからね』

『私も賛成はできないなー。性能への賛美はもらっておくけれども』

「─んん、話を戻せドレイク」

「おっと、すまないねぇ。……黒髭の船だけど、なんか凄いスピードの物がぶつかって吹っ飛んで行ったよ」

 スカサハに即されたドレイクは明後日の方向を向きながら黒髭の顛末を語る。交通事故って海上でも有るんだね。

 

 

「さて、黒髭の事は一旦置いて置くとしてだ、これからどうする?」

 海上での交通事故は原因不明で迷宮入りとなった。それだったら、ひとまず置いておこう。それが僕らの総意だった。

「うーん、もう結構当ても無く旅してるからね」

「そうですね、旅は楽しいのですが聖杯の事も気になります」

「そーだな、船旅も良いがサーフィンをもっとするべきかもな」

「…違う、そうじゃない。…ただまあ、そろそろ進展が欲しい所だな」

 モードレッドはこの特異点に来てから、ことさらテンションが高い様子だ。スカサハが珍しくツッコんでいる。ただ、スカサハやマシュの言う通り、聖杯や旅の進展がほしい所。

「同感だぜ、カルデアの探索範囲は特異点に適応してから広がってる筈なんだがな」

『うん、そうなんだよね。広がってるんだけどなかなか聖杯を拾えないんだ』

「やはりこの旅を続けるしかないのだろうか?」

「…闇雲に探すのは危険な行為ね」

 クー・フーリンやジークフリートも中々進展がない様子を気にしていた。エウリュアレもアステリオスの上から、珍しくしわを寄せていた。

「うーん、僕はアビシャグがいてくれるから楽しいけどね」

「貴様の意見は聞いておらんだろう」

 ダビデはアタランテにつま先を踏まれていた。痛そう。

「……うう、どう、する?」

「…アステリオス、何かもらって来ましょうか」

「あ、私も!」

「うぉぉ!俺は置いていけぇ!」

『メルト、この女神達、自由だよぉ』

 エウリュアレとアステリオスに続いて、アルテミスとオリオンが甲板から船内に入って行った。それを見ていたみんなは同じ考えなのか続々と船内に入って行った。リップが通信機越しから騒いでいたけど拾ったのは、ダヴィンチちゃんとロマニだけだった。

 

 

 

 

 それから仕方なく旅を続けた僕等は、再び黒髭海賊団と出会った。

『…!みんな、サーヴァント反応だ!?』

「…キャッチ、こちらにも反応あり、あれは…黒髭ね」

「ドクター、目視でも確認しました!」

 前回の激しいぶつかり合いが、記憶に新しい黒髭の船。けど、目の前の船は前回程の凄みは無く、弱体化しているとメカエリチャンも言っている。

「おいおい、何があったんだい!?前の勢いはなくなったのかい?」

「……ああ?…なんだ、ババアじゃねーか。俺、今ババアの気分じゃねーんだけど。何か用?」

 何処かどうでもいいかみたいな態度が黒髭から透けて見えて、ドレイクもその変わりように驚いていた。それに船員の人数が減っているのに気がついた。

「黒髭さん、何があったの?」

「あん?……カルデアとか言うとこのマスターつったか。ハア…どうもこうも、裏切りに事故で俺の船、アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)はボロボロでよ、まあ、事故とかどうでも良い。避けられねぇ俺にも落ち度はある。けど、裏切りは許せねぇ。だが、船がこれじゃあ、何もできない」

 さらに聞くと、黒髭の話ではあの衝突で殆どが吹き飛ばされ、行方不明となっていた。その中にはヘクトールも含まれていた。アン・ボニーやメアリー・リードは一応の心配を向けていたが、黒髭はヘクトールについてはあまり気にした様子は見られなかった。何かあったのだろうか?

「それでどうするんだい?ここで、泣き言吐いて終わるのかい?」

「…クハハハ、天下の黒髭様が、そんな感傷に浸ってここにいるわけねえ。…カルデア、交渉だ」

「え、うん。ロマニー」

『うぇ!?!そこで僕に振るの!?』

 兎も角、黒髭についてだけど、ロマニ達と協議して交渉で此方について貰うことになった。とは言っても、黒髭の要求は共同戦線とサーヴァントの配置。こちらにも利があったし、ドレイクのお陰で無事に?黒髭を仲間か協力関係に出来た。そして、僕等は黒髭からある一団の情報を聞いた。その名も"アルゴノーツ"

 

 

「アルゴノーツ?ってどんな団なの?」

「はい、アルゴナウタイとも呼ばれ、ギリシャの英雄イアソン、率いる最古の海賊団ともいえます」

「……えい、……まあ、そうなる、か」

「おや、どうかしたかい?……ああ、アビシャグもアルゴーノーツの一員だったね」

 マシュの説明に、微妙そうな反応を示したアタランテ。ダビデは懲りずに反応を拾う。

「あん?あーそうだったな、ならなんか情報くれよアタランテ」

「…そうだな、知っているのなら教えて欲しい」

「あ、ああ、それは問題ない。…だが、今のアルゴノーツの誰が乗っているかは分からない事と私が知っているのは生前の情報だけだ」

「それで構わないよ。補足はドクターがしてくれるから」

『ああ、任せてくれ!』

 それから、アタランテはアルゴノーツの事を話始めた。イアソンにメディア、カイニスにカストロとポルクス、次々とアタランテは名前を出していき、カルデアのデーターベースで照合していった。黒髭、ドレイク、カルデアの三者連合は目標をアルゴノーツとして、船を進める。

 

「あ、メアリー、アレってキャプテンの船よね!?」

「お、やっと迎えに来たのか。あれ?ドレイクの船と一緒なんだ」

「おー!!アン氏にメアリー氏、無事でござったでありますか!?ムホホッ!良かったですぞ!」

「良いから早く引き上げてくださいます?濡れて大変なんですけどー」

 道中、アン・ボニーとメアリー・リードの2人を加えた。さらに、アン・ボニーから船員についての情報を教えて貰った。全てでは無いのだろうが、特徴とアタランテの知見でによるとまず、船長イアソン、メディア、ヘラクレスの3名だった。現状、一番危険なのはヘラクレスと言うことになった。

 

 

 

 その後も、アルゴノーツについて確かめていた時だった。管制室のレーダーに反応があった。

『巨大な反応だ!?みんな、注意するんだ!』

 ロマニが示した前方の一隻の船。だが、とても大きな力を観測していた。

「黒髭、ドレイク、反応あったよ!」

「ああ、こっちも見えてるよ」

「ババアよりもこっちが早かったけどな」

 すぐさま警戒と言うことで、黒髭やドレイクにも呼びかけて、急いで迎撃の形を整えた。

 そして、目の前には巨大な船が現れた。船の上では僕らを見下ろす4つの影があった。おそらく金髪がイアソン、微笑んでる女性がメディアだろうか?さらに、黒髭から海に落とされたと聞いていた、ヘクトールがそこにいた。そして、半裸の巨体を持つサーヴァントがこちらを見下ろしていた。あれがアタランテの言っていたヘラクレスだろうか、離れているのに凄い圧を感じる。

 

「……あれがアルゴノーツ」

「そうだ、そして、おそらくこの特異点で最も力を持つ海賊団だ」

 僕のつぶやきを拾ったのは、意外にもアタランテだった。

「…ッ、ドクター、観測の方はいかがですか!?」

『…聞いてはいたけど、とんでもないサーヴァントだな!?』

「だが、やれない事はあるまい?」

「…今回はキャスターなんだよなぁ、師匠、槍貸してくれねーか?あいつ相手なら打ちあいてーぜ」

「クー・フーリン、それ言ったら俺だってクラレン卜持って来たいぞ?」

「ウム、バルムンクでどこまで行けるか試すのも良いだろう」

「いざとなったらパイロット候補を回収ね」

「血気盛んですねぇ、俺は………ヘクトールと目が合ったな、警戒すべきか?」

 もう、好戦的なスカサハに槍をねだるクー・フーリン、剣が無いなとプリドゥエンを見るモードレッド、バルムンクを構えるジークフリート、マスターの後ろを護るメカエリチャン、少し引いた所で見ていたら向こうのヘクトールと目があってしまったロビン、カルデア組はいつも通りだった。

 

「…頭おかしいのかしら?あのプレッシャーとかオーラとか出してる奴に挑もうと思えるわね」

「……えうりゅあれ、オレがまもる」

「うーん、アステリオスくん、僕も一緒にお願いできないかい?」

「ダビデ、あんたも前にでな!前線張れるのは多い方が良いからね!」

 カルデア組を見て信じられないと呆れるエウリュアレとアステリオスは護るとエウリュアレの前に出る。ダビデはそれを見てアステリオスの後ろへ動く、そのダビデを前に蹴飛ばすドレイク。

 

「…ヘクトールの奴は向こう側の陣営でござったか」

「そのようね、スパイって奴かしら」

「うーん、どっちでも良いかなー今は敵でしょ?」

「ダーリン、落ちないでね!」

「おい、アルテミスなにする気だよ──飛んでる!?」

 ヘクトールを見て髭を擦る黒髭、スパイだったのかをアンとメアリーは話していた。その横でアルテミスはオリオンとランデブー(アルテミス側のみ)だった。

 

 

「…フ、見ろメディア、奴らヘラクレスより弱い奴ばかりだぞ!」

「ふふっ、そうですねイアソン様」

「────」

「……黒髭の陣営がカルデアと合流しているか、警戒はしておくべきですかね」

 アルゴー号では、向こうの陣営の戦力を嘲笑うイアソンをヨイショするメディアに静かに佇むヘラクレス。ヘクトールは自分に注意を向けて来るロビンや黒髭陣営を警戒していた。

 

 睨み合いが続く中、アルゴー号と黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)が接敵する。

「フハハ、俺のアルゴノーツに向かってくる命知ら─」

「──ゆくぞ、ついて来いセタンタ!!」

「──おう!マスター、ヘラクレスはこっちで殺る」

「───!!」

「──ずって、もう始まってる!?」

 イアソンが此方を見下しながら口を開けるも、言い切る前にヘラクレス、スカサハ、クー・フーリンが飛び出した。斧と3本の槍(杖)の衝撃音が開幕の合図となった。

「─ヘラクレス、相手にとって不足無し!撃ち落とすべし、幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

「─メカエリチャン・ビックボディ!!──行動が速い!く、照準補正!!目からビーム(チャームサイト)!!」

 ヘラクレスと打ち合うスカサハとクー・フーリンに、遅れてメカエリチャンとジークフリートが参戦し、バルムンクとチャームサイトで攻撃の隙間を埋めにかかる。互いの足場は、メディアの魔術とメカエリチャンが担っていた。ヘラクレスはスカサハ達の攻撃を捌きつつ、時折放たれるアルテミスからの矢を回避していた。だが、スカサハ達の攻撃と合わせて、ヘラクレスは他を気にする余裕は無かった。

 

 場面変わって、甲板にアタランテ、ドレイク、黒髭、アン・ボニー、メアリー・リード、上空からアルテミスとオリオンがアルゴー号に向けて波状攻撃を繰り返した。

「おらおら、お前達、どんどん大砲の玉持ってきな!」

「「「アイアイ、キャプテン!!」」」

「私は弓なのだが…。まあ、良い。──イアソン、悪く思うなよ」

「む、ババアが活き活きしてる。なら、こっちも気合入れろ!!」

「はいはい、対抗心燃やしちゃって。メアリー、行きますの?」

「うん、この船の大砲は任せて!」

 それに対してアルゴー号側はメディアの魔術による障壁で耐えていた。

「くうぅ!聖杯はこちらにあるのに、押されてますね…」

「おい、メディア!どうなってる、なんで押されてる!?聖杯があるんだからもっとやれるだろ!?ヘラクレスの足を引っ張るなよ!」

 カルデア側としては一番強いヘラクレスを抑えられている間に勝負を決めようと、より一層アルゴー号への攻撃を強くして行った。メディアの魔術障壁で波状攻撃は防げているが、反撃には転じれておらず、戦況はカルデア側が押す形だった。

 

「ちぃっ!俺の最強のヘラクレスに拮抗しているだと?おい、メディア、早くヘラクレスに魔力を回せ!それで、あの雑魚どもを黙らせるんだよ!」

「─!イアソン様、それは─」

「良いから、早く!!」

「……」

「……」

 それを良く思わないイアソンはメディアにもっとヘラクレスに魔力を回せと指示を出すも、メディアにはそれが意味する事が解っていた。この状況でヘラクレスに魔力を回すと言う事はアルゴー号を覆う障壁が弱くなると言う事であり、今ですら限界に近い状況で有るのに弱めればパリンと割れかねなかった。

 しかし、イアソンにはヘラクレスへの絶対的信頼があり、ヘラクレスにも応えうる力はあった。メディアもヘラクレスの力には信頼を置いている為にさあ、どうするかと思案し、捨てた。

 そして、そばにいたヘクトールへ視線を向ける。ヘクトールはそれに特段何も反応は返さなかったが、船体に隠れる様に水面を渡り黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)の左舷に張り付いた。現在、マスターとエウリュアレを守るサーヴァントはマシュ、モードレッド、アステリオス、ダビデであった。ヘクトールは左舷にて突入タイミングを見計らう。

 

 

「ム、あやつの反応が良くなったか。─ハァァ!!」

「あー、そういや十二の試練(ゴットハンド)があったか。─そこだ!!」

「クー・フーリン、説明を求めます。─目からビーム(チャームサイト)!」

「すげぇ簡単に言えばジークフリートの体と同じ感じだ。─アンサズ!」

「なるほど、攻撃の無効化か。─ヤァァ!」

「無効化ってよりかは耐性らしいが、な!!」

「───!!」

「あれ、死角だと思ったのに〜!!」

「奴さん、視野が広いなぁ」

 開幕からずっと捌いてきたスカサハとクー・フーリンの槍にバルムンク、チャームサイトは、十二の試練(ゴットハンド)によって耐性ができていた。しかし、合間に放たれるアルテミスの矢には本能で触れては行けないと避けていた。ただ、耐性が出来たからと攻撃を諦めるスカサハ達ではない為、ルーン魔術を織り混ぜつつ攻めていた。それでも、法外のヘラクレスの宝具には決定打が足りてい無かった。場を考えないならば打開策も無いわけでは無かったが、戦況は押しているのに厳しい戦いとなっていた。

 

 

「……くぅぅ」

「おい、メディア!なんでまだ押されているんだよ!?」

 アタランテ達による波状攻撃に押されているメディアであったが、あるタイミングを待っていた。それまではひたすらに打ち込まれる攻撃を障壁で防いでいた。

「……!──イアソン様、障壁を閉じます。気をつけてください!」

「へ?─ウォォ、おおーい、当たるー!!」

 そして、ある念話が入った所で、障壁に回していた魔力を攻撃に転じさせた。まるでビームの様な攻撃が放たれていた矢や砲弾を相殺していき、攻撃の隙間をビームが突き抜けて船に直撃し、船体を揺らすのだった。揺らされた影響で攻撃の手が止まる。

「よっと、隙だらけだな。おじさんも楽できて嬉しい、よ!!──っ!」

 その隙はヘクトールが黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)に乗り込むには十分だった。そして、揺れで態勢を崩したマスター達に、槍を向けるヘクトール。

「──マスター、頭を下げてろ!」

「なに!?」

「マスター!?」

「えうりゅあれ!」

 それにいち早く気が付いたのはロビンだった。ロビンはマスターの頭を下げさせ、すぐに毒矢を放った。その矢をヘクトールは弾くも、その時間でマシュとアステリオスは態勢を整えた。

「…ち、やるね。さっきもおじさん見てたし、なにか警戒されるようなことしたかな?」

「わかりやすい視線だったぜ?」

「そうかい、それは失敗だった、な!」

「──!マスター、下がってください!─くうぅぅ!!」

「おっと、見た目よりもやるな、嬢ちゃん」

 チャンスを潰されたヘクトールは舌打ちしつつも槍を構え、マシュに接近する。上段で振るわれる槍にマシュは下から突き上げる様に盾を動かした。マシュはヘクトールの槍を弾く為に盾を振るうも、筋力はヘクトールの方が上であった為に盾ごと押し返されマシュは大きく後退させられた。しかし、狙いの一部は達成された。振り下ろされた槍は甲板の床を貫通し、大きな隙を晒す事となった。

「うう、あああ!!」

「──甘い」

「──甘いのはお前もだろ!!」

「おっと、僕もたまには働こうか」

「おじさんに過剰戦力じゃないか?」

「──奇襲してんだ、甘んじて受けな、──弔いの木よ、牙を研げ!祈りの弓(イー・バウ)!!」

「──はは、ここまで、か」

 それを見たアステリオスが動くのを見たヘクトールは柄から手を離し、その場から離脱した。動き出したアステリオスは急な方向転換が出来ず、ヘクトールがいた場所を走り抜けた。その時に刺さっていた槍がアステリオスによって大きく回転しながら上空に弾かれた。槍を失ったヘクトールにモードレッドがプリドゥエンを叩きつけ、ダビデも石を投擲する。さらにロビンが懐に飛び込み至近距離から宝具祈りの弓(イー・バウ)を放つ。ヘクトールは絡みつく枝から抜け出そうとするも、吸い上げられた毒で成長した樹木に抑えられ、抵抗虚しく毒素の爆発に巻き込まれ退場となった。

 

 

 ヘクトールの退場は戦況に大きくは無いが影響を与えた。ヘクトールの奇襲を考慮しなくて良くなった為、ロビン等の警戒していたサーヴァントが攻撃に転じやすくなった。しかし、ヘラクレスの圧力が強く戦況が大きく動かせていなかった。ヘラクレスをどうにかする手をスカサハは考えていたが、それを行うにはヘラクレス相手に隙を晒す必要があった。

「……どうするか」

「なんだ、らしくねぇじゃねーか。策があんだろ?聞かせろよ、師匠の無茶は今に始まったことじゃねーからな」

「…ふ、言ったな。ならば、セタンタよ、時間を稼げ。ほれ、持っていけ」

「ハッ、やっとかよ。おう、任せろ。──来いや、ヘラクレス、槍を持った俺はつえぇぞ!!」

「メカエリザベート、ジークフリート、ソナタ等はマスターの元に戻れ」

「理解不能です。この状況で撤退など…」

「…わかった。エリザベート、戻るぞ」

「ちょっと、ジークフリート、もう!」

 思案するスカサハにクー・フーリンは俺に任せろとスカサハの背を押した。それを好ましく思うと共にスカサハはジークフリートとメカエリチャンに撤退を指示する。2人は疑問に思うも従った。

「あら、スカサハちゃん、私達も?」

「ああ、撤退までは頼む」

「フフ、オッケーよ!ねぇ、ダーリン!!」

「良いから、はよ打てぇー!!そして、退けぇー」

「──英雄ヘラクレス、そなたは強い。故に、影の国、その誠を見せてやろう」

 アルテミスの矢の援護を受けて撤退する2人を背に、スカサハは宝具を発動させる。

「───!!」

「─ハッ、行かせるかよ!」

 ヘラクレスとクー・フーリンが互いに反応する。ヘラクレスがスカサハ目掛けて突っ込むが、その先を塞ぐようにクー・フーリンが入り込む。クー・フーリン1人で抑えられた時間は微かだったが、スカサハの宝具を発動させる事が出来る時間を稼ぐ事に成功した。

「──良くやった、セタンタ。さあ、開け、異郷の帳――強きその魂まで私の物だ!死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)!!」

 スカサハが発動させた宝具、死溢るる魔境への門(ゲート・オブ・スカイ)によってスカサハ、クー・フーリン、ヘラクレスが影の国に誘われた。門が閉じた時には開幕から占有していた騒がしい剣戟も何も残されていなかった。これでアルゴノーツは最大戦力のヘラクレスを失った。

 

 

「……嘘、だろ。ヘラクレスが、あんな奴らに負けるなんて…」

「……」

「おい、メディア、お前は最強のヘラクレスを読んだんじゃないのか!?なら、なんで負けてるんだよ!?」

「……フフフ」

「おい、メディア!──おい、メディア?」

「すみません、イアソン様。イアソン様の夢である理想郷は、ここではありません」

「は?おい、何をしている。───メディア?」

「─さようなら、イアソン様。でも、これも仕方のないことなんです。全ては貴方の為。──魔神フォルネウス」

 ヘラクレスの退場は均衡が崩れるには十分な程の出来事だった。そして、メディアの最後のストッパーを外す事になった。ヘラクレスが退場した事で絶望したイアソンにメディアは聖杯を押し付け、イアソンを依り代に魔神柱を召喚した。

 

『大変だ!アルゴー号から強大な反応、これは、ローマの時と同じ、魔神柱だ!!』

『そして、聖杯の反応もだよ。今になって出現した!』

「──うん、こっちも見えてるよ」

 それにカルデア側で初めに気が付いたのは強力な魔力反応を観測したロマニだった。そして、現地のマスター達も目の前に巨大な樹が出現を確認した。なぜここに、そんな疑問もあった。しかし、一度見ているからか行動は早かった。

「おい、あれはなんだい!?でかい目玉だよ!?」

「ドレイク、黒髭、あれは魔神柱って言って、この特異点で倒す敵だよ!!」

「──それだけ聞けりゃあ十分だ。野郎ども行くぞ!!」

「私達、野郎だって」

「まあ、花を持たせてあげましょう」

 初見のドレイクや黒髭達にアレを倒すよう協力を頼んだ。

 

「…俺のやることは変わらない。魔神!撃ち落とすべし、幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

「船から落としてやるよ、逆巻く波濤を制する王様気分(プリドゥエン・チューブライディング)!!」

「マスターに届かせません!!仮想宝具疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

「打て打てぇ!さあ、ここが正念場だよ!吠えな、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)!!これがあたし達のワイルドハントだ!!」

「ババアに負けるな!!さあ、行くでござる行くでござる!拙者自慢の大砲も大変な事に!?アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)!!」

「アン!宝具行こう!!」

「はぁーい、お任せなさいな、メアリー!」

「「比翼にして連理(カリビアン・フリーバード)!!」」

 アルゴー号に向けた波状攻撃にジークフリートの幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)、モードレッドが海から宝具逆巻く波濤を制する王様気分(プリドゥエン・チューブライディング)で攻撃する。魔神柱からの攻撃をマシュが宝具で防ぐ。黒髭、ドレイクの艦砲射撃にアン・ボニーとメアリー・リードが追撃する。

 

「……我が弓と矢を以って太陽神と月女神の加護を願い奉る。「良いわよ、アタランテちゃん」……この災厄を捧がん――訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)!!」

 そして、アタランテが先程は使わなかった宝具訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)を開帳した。魔神柱の無差別攻撃を無数の加護の矢が貫通しながら魔神柱に突き刺さる。アルテミスがこの場にいるせいかランクが跳ね上がり強力となっていた。

「────(ああ、俺は…)」

 前回の様な決定打があった訳では無いが魔神柱にやる気が無いのかどんどん削られて消滅していった。

 

「…先輩、ドクター、聖杯を確認。回収しました」

「終わったんだね?」

「そのようね。パイロット候補、疲れているようならコックピットへ収納するわ」

「大丈夫だよ、ありがとうメカエリチャン」

 ようやく、第三特異点の聖杯を回収した。

「カルデアの、終わったかい?」

「うん、ドレイクもありがとう。ドレイクがいなかったら多分、もっと大変だった」

「ハハハ、あたしも楽しい旅だった。─もう行くのかい?」

「…そうみたい。モーさんやジークフリート、ロビンも先に帰ったみたい」

「よろしく言っておいてくれよ。世話になったってな」

「へっ、ババア、湿った雰囲気は似合わねーぞ。…カルデアの、短い間だったが契約終了だ。縁があったらまた呼べよ。黒髭海賊団は、仲間に手を差し出さない程せまくねぇ」

「うん、その時はよろしく!」

 協力してくれたサーヴァントに別れを告げて告げられ、カルデアに帰還したのだった。

 

 

 

 




ヘクトールが飛ばされた件はアキレウスのせいです。
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