僕のカルデア日誌   作:kanaumi

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時系列が前後します


管制室での一幕① 助走距離確認

 

「大変ですっ!先輩が、先輩が!!」

「うわっ!!きゅ、急にどうしたんだい、マシュ」

「おやおや、随分と慌てていたようだね。髪が乱れているよ、マシュ」

 特異点の捜索をしつつも何処かゆったりとしていた管制室に、また、何やら問題事が持ち込まれるようだ。

 慌てた様子のマシュを見つめてロマニは、何処かほんわかとしていた。しかし──

「──先輩がもう、20時間も目を覚ましていないんです!!」

「…え、彼の睡眠時間…、えーと、スカサハ君の訓練が終わって、あれ!?そういえば、起床のセンサーが反応してないじゃないか!故障かな!?」

「おいおい、それってあれだろう?以前、鬼ヶ島の時に彼の部屋に設置した奴だろ。故障なんてするほどたっちゃいないぞ!」

「うわ、ごめんって、うーん、じゃあなぜだ?彼がアラームもかけているログが、残っているからかけ忘れの線はないだろ?」

「彼の平均的な睡眠時間は約7時間だろ?疲れているからって流石に20時間はおかしい」

 状況が分からず混乱する場で、ロマニはおのが理性を働かせ、ゆっくりとマシュに問う。

「──マシュ、彼の様子はどうなんだい?」

「…はい、先輩は現在も少しうなされつつ眠っておられ、10分前に測定されたバイタルは安定しています。今はリップさんが付き添っておられます。」

「…そうか、安定しているならひとまず安心かな?」

 ロマニはダヴィンチを向きながら問う。

「うーん、どうだろうか、情報が無さすぎるね。予兆のような物もなかったからね」

「…このまま目を覚さないなんて事に…」

「マシュ、私は希望的観測をして安心させる事も、可能性を話して不安にさせる事も、出来ないし望まないね。ただ、誰も諦めてない」

「ダヴィンチちゃん…」

「──その通り、その程度で諦めてはグランドオーダーなど不可能です。それにパイロット候補の眠りについて、判明したことがあるわ」

 そこには、簀巻きのエリザベートを肩に抱えた鋼のボディ、メカエリチャンだった。

 

 

 

 

 

「えーと、じゃあ、メカエリザベート君、説明を頼めるかな?」

「ええ、結論から言うわ。パイロット候補が今だに眠ったままなのは、別の因子による影響よ」

 ロマニの促しに頷き、説明を始めるメカエリチャン。

「それが誰かからの干渉なのか、ある種の現象なのかは、まだ断定できない。…黙ってなさい。…ンンッ、けれど、一つだけ確かなのは、自然には目を覚まさないということ。原因が消えた時、それが覚醒の時になるわ」

 大胆に登場したメカエリチャンはその姿のまま、ロマニ達の前に移動した。そして、自身の所見について話すも、途中でエリザベートを黙らせて喋りきった。

 

「別の因子、解析には何も出ていなかったようだけど?」

「私も微弱な波を感知したに過ぎません。それに、波形が何かに切られたように途絶える事があるわ」

「…切る、ですか。現象、にしてはおかしいですよね?」

「ああ、因子というのがどういった物に、なるかは分からない。が、例えそれが阻害されるにしても切る、切断だろう?それは自然現象にしては綺麗すぎる」

「うん、もっとザザって、雑に切られるならわかるけどメカエリザベート君の話では違うのだろう?」

「肯定、これは何者かの干渉と判断しているわ」

 メカエリチャンは力強く言い放った。その時、抱えていたエリザベートがウゲッと嘆いた。

 

 

 

 

「なるほど、君の所感はわかった、けど……、メカエリザベート君。そろそろその肩に担いだエリザベート君について聞いていいかな?」

「あ、そうですね。私も気になっていました」

「…そうね、余計な手間を省く為につれて来たといったところかしら」

「余計な手間?今から何かするのかい?彼への事で対応しなければとおもうけど」

 エリザベートは余計な手間を省く為、その説明で理解するにはピースが足りない。だから、ロマニはそれよりも寝たきりの彼を按じた。

「…これもパイロット候補の為に、私も思考した結果よ」

「ほう、君はこの件をどうやって解決しようというんだい?」

「跳ぶわ」

「跳ぶ?」

 メカエリチャンの回答はシンプルだった。

「えっと、メカエリチャンさん、どういうことでしょうか?」

「説明するわ、まず、パイロット候補はログにもあった、夢の中から出られなくなったと私は判断したわ」

 鬼ヶ島、解決の最中で消えてしまった特異点の話。そこへの突入も彼の夢がきっかけだった。

「……ああ、そうだね」

「ログをみる限り、此方からの直接な干渉はできなかった。そして、突入も偶然の産物だと言うことも」

「だからこそのセンサーだからね」

「はい、私の部屋にも同系統の物がありますね」

「そこで、私ね。ダヴィンチは薄々想像がついていると思うけれど、量子ジャンプ、それによって一方通行の進入が可能よ。理論上の成功率で言えば、安全性や安定性も確立されていない。けれど、一番確率の高い手段よ」

 胸を小突きながらメカエリチャンは言い放つ。反応は様々だった。

「はい!?」

「おいおい、また、何か言い出したぞ」

「───」

 一般職員は目を丸くし、ロマニは顔が固まっている。

「??」

 マシュは分からない様子だった。

「なるほど、エリザベート君にはそれがあったか!」

 ダヴィンチは衝撃で目を大きく開く。

「そして、それを行うフィールド作成をこのエリザベートで行うわ」

 

その言葉を境に、管制室の空気は一変した。

冗談だと笑う者は誰もいない。そんな反応よりも先に、誰もが「マジか」と息を呑んでいた。

マスターを取り戻すための、強引で無茶苦茶で、それでも現状唯一の作戦が動き始めようとしていた。

 

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