僕のカルデア日誌   作:kanaumi

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引き続き視点はカルデア側です。


管制室での一幕②  クラウチング・スタート

 

 今だに戸惑いが消えきらない中、メカエリチャンはロマニにシミュレータールームの使用を要請した。全部を咀嚼できていないロマニだったが、ダヴィンチが目で訴えて来たので、了承したのだった。

 

 

「ちょっと、私は何時までこの状態なのよ!チクチクして痛いんだけど!?」

「……」

「むぅしぃ!?」

「メカエリチャンさん、そろそろ降ろされてはどうですか?」

「…ハァ、仕方ありません、か。エリザベート・バートリー、どうしようもない貴女ですが、役立つ時が来ました」

 そう言ったメカエリチャンは、肩に担いだ簀巻きを床に落とす。

「イッタ!ちょっと、落とすのは違うじゃない!?」

「否定、貴女には適正な行為です。…ダヴィンチ」

「ああ、さっそく行くんだろ?任せたまえ。エリザ粒子には未知しかないが、君のメカニックとして、最善の状態にしてみせるさ」

 メカエリチャンに呼応する様に彼女は胸を張る。落とされたエリザベートは、簀巻きを解こうとゴロゴロする。

「では、私は先輩の所に戻ります」

「ああ、此方も調整しておくから、パッションリップ君と共に来るといい」

「はい、お願いします!」

 マシュは、そう言って管制室を後にした。その顔はやはりまだ固いが、突撃してきた時に比べ、幾ばくか穏やかになった様に見えた。エリザベートは、まだ解けていない。

「では、私とダヴィンチもシミュレータールームに向かいます。ロマニ・アーキマン、その後は貴方の仕事です。─では、「ギャー!!」─エリザベート・バートリー、その声量は後で使用します。今は黙りなさい」

 そう言って、メカエリチャンは簀巻きが解けなかったエリザベートを再び担いで、管制室を後にした。

「あ、ああ、わかった」

「大丈夫かい?隠しているが、休めてないのはバレバレなんだぜ?モニターの前で休んでいるムニエル君にでも頼んで、休みなよ」

「そうだぜ、ドクターは少しは休んでくれ」

 ムニエル含め、他職員も続けて反応を返す。

「だけども…」

「うーん、仕方ない。デリバリーを頼むか。──あ、ブーディカ君?なよなよ男、元気盛りを管制室にお願いできるかな?─え、もう行ってる?OK、ありがとう」

 通信を終えたダヴィンチは、そこに視線を向けて笑みを浮かべる。視線の先には、既に生姜湯を飲ませ終わったタマモキャットが、振り返ってダヴィンチに向けてグッと親指を立てた。

『ここは請け負った。そっちはアタシも後で行くワン!』

声には出さないが、そのドヤ顔がそう雄弁に語っている。ダヴィンチは「流石の仕事だ」と微笑みを返し、管制室を後にした。

 

 

 

 

 

 マシュは管制室からマスターの部屋まで戻ってきていた。

「リップさん、先輩の様子はいかがですか?」

「マシュさん、いえ、変化はないです。ずっと、このままです…」

 部屋で看病をしていたパッションリップは、マスターに変化はないと肩を落とすのだった。

「昨日まで、普通に起きていらしたのに…」

「うん、マスター…スカサハさんの指導は厳しすぎだったけど、1日近く目覚めないなんて…」

「お二人共、その辺りで終えておくべきです。今はますたぁの為に動く時、メカエリさんが動かれているのでしょう?」

「清姫さん」

 落ち込んでいた2人を、見下ろす様に清姫は立っている。

「私だって、ますたぁのこの様な姿は見たくありません。ますたぁはいつだってカッコいいお方、寝ている姿も良いのはそうですが、起きている姿に私は強く惹かれますから。それに愛を伝えるのは今ではないでしょうし」

「…うん、清姫さんの言っている事は少し分からないけど、そうだね、マスターは私に優しいから」

「…はい、私も落ち込んでばかりではだめですね。…食堂に行ってきます。ブーディカさんとエミヤさんに協力を取り付けて来ます」

 マシュは決意と共に立ち上がる。

「ええ、マシュさんはそうでなくては」

「私もメカエリさんに合流して来ます!」

「では、私はますたぁの元で皆様の様子を見ています」

「「それはズルいです!」」

「ますたぁを一人にはできませんから」

「うう、早く戻ってきますね!」

「そうですね!」

 2人は後ろ髪を引かれながら部屋を後にした。

 

 

 キャットが管制室に向かった後の食堂では。

「エミヤ君、どうかな、行けそう?」

「…ああ、基礎はできた。私とてこの分野に精通している訳ではない。だが、昔取った杵柄と言うべきか、簡単な物はできる。タマモキャット君の要望はそれでもなかなかではあると思うがね?」

 エミヤは一定のリズムでキーボードに指を走らせる。それは食堂にはあまり馴染みのないPCだ。タマモキャットが話を持ち込み、エミヤが管制室から借り受けた一台である。食堂メンバーでは構うことができるのがエミヤ位だったために、こうしてキーボードを叩いているのだった。

「それでも私よりかは構えるでしょう?キャットちゃんの頼みだからね。エミヤ君も頑張って!」

「…無論、頼まれた仕事はきっちりこなすさ。ブーディカ殿はメニューを頼む、そろそろマシュも来る頃だ」

 タイミング良く、扉の開閉音が聞こえた。

「お待たせしました!マシュ・キリエライト、ただいまより、携帯食データ化計画実行委員に参加します!」

「うーん、真面目だねマシュちゃんは、でもようこそかな?」

「ああ、来てくれて助かる。マシュはブーディカ殿とメニュー考案を頼む。タマモキャット君も後で合流するだろうから」

「はい、わかりました!」

「ふふ、じゃあこっちだね、ついてきて」

 ブーディカはマシュを連れ、カウンターの中に入っていった。

「…では、私も追い込みに入ろうか。タマモキャット君にどやされるのも敵わんのでね」

「フフフ、案ずるでない、エミヤの働きは鯉が滝に登るというもの。いな!猫も手を借りたいが、当てはまるのだワン!」

 エミヤの背後に突然現れたタマモキャット。

「─!ああ、戻って来ていたか。……恐らく褒められていると受け取るが、なに、これくらい造作もないさ」

「おー、ではキャットも忙しいのでな、ダッシュでマッハでこのデータを吟味するのだ!これでも先々の為、動くできるタマモのアタシ、これにはオリジナルにも無理である」

 懐からUSBを挿し込む。フォルダに入っていたのは圧縮された膨大なデータ群だった。

「……」

「ムフフ、これもご主人の為、キャットは鬼になろう。エミヤも続くのだぞ!では、アタシも献立作成に向かうのだワン!」

 尻尾をフリフリとタマモキャットはカウンターの中に入っていった。残されたエミヤは暫し、頭を押さえるもタイピングを始めた。エミヤに魔力が走る。

 

 I am the bone of my sword.

 ――― 体は剣で出来ている。

 

 Steel is my body, and fire is my blood.

 ─血潮は鉄で 心は硝子。

 

 I have created over a thousand blades.

 ─幾たびの戦場を越えて不敗。

 

 Unknown to Death.

 ─ただの一度も敗走はなく、

 

 Nor known to Life.

 ─ただの一度も理解されない。

 

 Have withstood pain to create many weapons.

 ─彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。

 

 Yet, those hands will never hold anything.

 ─故に、生涯に意味はなく。

 

 So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.

 ──その体は、きっと剣で出来ていた。

 

 ──そう、此処は幾万の剣の墓標、億万のデータで有ろうが、俺は負けない。エミヤは笑みを浮かべる。それが例え偽物のハリボテであったとしても。この程度で止まるようなら、英霊(正義の味方)など名乗れはしないのだから。

 

 

「よろしい、ならば戦争だワン!皆の者、いざ行かん、ご主人を起こす為、猫も杓子も総動員なのだー!」

「はい!マシュ・キリエライト、頑張ります!」

「「おー!」」

 食堂に響く声と、止まらない作業音。

 その全てが、ただ一つの目的に向けられていた。

 食堂に満ちていたのは、いつもの穏やかな空気ではない。

 それぞれが手を動かし、思考を巡らせ、ただ一人の為に準備を整えている。だが、それはここだけではない。

 

 ――カルデアは、既に動き出していた。

 

 

 

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