カルデアに戻って来て、メカエリチャンの再召喚も終わり一段落着いた頃。
「モー、マスター君達、酷いじゃないですか!メカエリチャンさんの裏で召喚された私をスルーしちゃうなんて!」
「はは、ごめんね?メカエリチャンが帰って来てくれて、嬉しかったから」
「それはわかってますよー!でも、ちょっとはこっちに気がついてくれてもですねぇ」
「…悪かったわね、守護神としても浮かれるなんて失態ね」
「でもでも、Xさんも影薄いし、遠慮気味だったのでイーブンですよ!」
「そ、それはそうですが…うう」
「リ、リップさん、少し言い過ぎかと」
食堂に来た僕達は、不貞腐れているXに絡まれていた。仕方ない部分はあったと思うが、流石にスルーしたのは可哀想だから付き合っていた。リップの発言は少し駄目もかもだけど。イーブンではないからね。
「ふふ、できました。ますたぁへの愛の親子丼です!」
「お、いい感じじゃない。清姫ちゃん、腕上げたね?」
「ああ、出汁もいい出来だ」
Xが食堂で騒いでいる中、食欲を誘う匂いが漂って来た。匂いの元であるキッチンの方に目を向けると、清姫が僕の昼食らしき物を作っているのが見えた。ブーディカとエミヤに囲まれてフンスとしている。これは美味しい物が来そうだね。
「さて、そろそろ時間ね。パイロット候補、私はメンテナンスに行くわ。再召喚の際に不具合がないかをダヴィンチと確認してくるわ」
「あ、そうだね、心配だもんね。いってらっしゃい、ダヴィンチちゃんにもよろしく伝えて」
そう言って、立ち上がったメカエリチャンを僕は送り出す。先の特異点で無茶をしていたことを、目を覚ましてから聞かされた。その事もあって、再召喚された時は声を上げて喜んだ。だからこそ、メンテナンスはしっかりやって欲しいと、ダヴィンチちゃんに頼んだのだ。
「ええ。……それとパッションリップ、手元のコップが落ちそうよ」
メカエリチャンが指した先には、今にも落ちそうなコップがあった。リップはそれを掴もうと手を伸ばすも勢いが強かった。コップはリップの手から離れて空中へ。
「わわっ、マスターさん!受け取ってくださーい!!」
「ちょっ」
「先輩!」
慌てたリップによって空中に上がったコップは、マシュがとっさに前に出た事で、彼女の手に収まった。Xはそれを面白そうに眺めていた。そんな彼女の態度に慣れてきた僕は、抗議の視線を送っていた。それを気にする彼女では無かったが。
「はあ、慌て過ぎねパッションリップ。割ったら怒られるわよ。……さて、今度こそ行くわ」
そう言って、メカエリチャンは食堂を後にした。
「ますたぁ~!清姫特製の親子丼が出来ました」
「皆の分もあるから机を開けてねー」
その後、清姫とブーディカが盆に乗せた器を持って来ていた。机には主にXが広げていたサーヴァントユニバースの広告チラシを片付け、僕、リップ、マシュ、X、清姫の器を並べた。器から上がる湯気を感じながら、僕は箸を差し入れた。うまい。出汁が聞いた卵がとてもご飯に合う。鶏肉を一度炙ったのか程よい噛み応えがあって面白い。
「うん、うまいよ清姫!」
「はい、ご飯との食べ合わせも絶妙です!」
「ふふ、愛を込めましたから」
「ムム、私もいつかは…」
「むはは、リップも一緒に爪を研ぐのだな!」
「ハグッ、むぐっ、うまいですね!!」
「Xちゃんは落ち着いて食べよっか」
清姫のお陰で、とても楽しい食事会となっていた。あ、リップ、頬に米ついてるよ。
「ふえ、マスターさん!?」
「はい、取れたよ。そんなにおいしかったんだね!」
「ふふ、ますたぁがお望みならいくらでも作りますね」
「先輩の言う通りです。とってもおいしかったです、清姫さん!」
本当においしかった。毎日は大変だろうけど、週一で頼むのなら大丈夫だろうか?
「あ、先輩、エミヤさんが食後のデザートと言って、プリンをくださいました!」
「お、美味しい…」
「良いですねぇ、就活疲れの身体に糖分が回って、血糖スパイクきましたねー」
「Xさん、そこで眠るのは汚いですよ」
「うん、エミヤー!ありがとー!」
「フッ、これくらいは造作もないさ。3時も期待していてくれ」
布巾で手を拭くエミヤにお礼を言うと、ドヤ顔で返してくれた。3時も楽しみである。…ん?誰か食堂に来たみたい。
「…おや、マスター。それにいつもの女性陣か」
「小次郎!小次郎も食事?」
「いかにも、何やらいい匂いがしたのでな。エミヤ殿今日は何かな」
「…フム、佐々木小次郎か。マスター達と一緒で良いのなら、親子丼だな」
「ほう、では、それをいただこう」
「了解した」
そう言って、エミヤは調理場に入って行った。残った小次郎は近くの席に座り待っていた。
「時にマスター、そろそろ植えた稲の収穫だが、マスターも参加するか?」
「あ、前に植えたの?早いねー」
「…前、先輩が腰をさすられていた時ですか?」
「そうそう、田植えして少し痛くなっちゃった」
マシュの質問であの時の腰の痛みが蘇る。
「マスター君、まだ若いのにそれじゃあ大変ですよ」
「ますたぁ、清姫、マッサージもいたしますよ?」
「わ、私も!」
そう言って、清姫とリップが僕の背に手を伸ばす。Xの言う通り、若いからすぐに治るとは思うけど。
「注文の品ができたぞ」
「おお早いな。…うむ、なかなかの味だ」
エミヤが出来立ての親子丼を持ってきた。小次郎が食事を始めたのを見ながら、僕はさっきの稲刈りの件を考える。まあ、特別予定もないので参加かな。
「マスター君、マスター君、それってお賃金は出ますか?」
Xの目には小判が浮かぶ。今日日見ないぞ、目に小判なんて。
「…まあ、ボランティアみたいな物だし、出ても献立のリクエスト位じゃないかな」
「では、私は休みますね!」
現金すぎるXは置いておいて、僕は小次郎に了承を伝える。
「うむ、ではまた連絡するとしよう。…ごちそうさまでした」
手を合わせた小次郎は食器を片付けて歩いて行った。
「さて、エミヤ、ブーディカ、清姫、ごちそうさま!」
「ああ、お粗末さま」
「食べたねー」
「ますたぁ、愛を込めてまたお作りしますね」
「ありがとね、清姫」
片付けに残る清姫に見送られて、僕達は食堂を後にした。少し3時までに時間がある。デザートの為に、少し動こうかな?
「お、マスター君、何やらやる気ですね?食後の運動は徐々にしないとお腹痛いですよ」
「先輩、ラジオ体操ですね!」
「マスターさん、私も一緒に!」
リップ達と軽い運動後、3時のデザート、カステラを食べたのだった。
久々にゆっくりとした時間が僕を癒す。なんかすっごく幸せだな。