マスターと別れた後、私はダヴィンチちゃんの元に向かう為、廊下を歩いている。その間、先程の食堂でのことを考えていた。
「(目が覚めたマスターの様子を見ていましたが、お元気そうで良かったです)」
ロマニからもマスターの様子を気にかけておいて欲しいと頼まれていたマシュは、食堂での様子を思い出していた。
「(それにしても、メカエリチャンさんとマスターが信頼されあっている様子はとても喜ばしいのですが……)」
「あら?マシュ、どうかされたのかしら?」
「ハッ、…あ、マリーさん!?……えーと、いかがされましたか?」
「フフフ、尋ねたのはこちらよ、マシュ。何か困りごとね?」
「え、いえ、そんなことは……はい。マスターのことですこし」
「まあ、なら丁度お茶会を開こうとしていたの。皆で考えればきっと、素敵な考えが浮かぶと思うの!…どうかしら?」
「…はい、ご招待ありがとうございます」
「ええ、ええ、こっちよ!皆来ているはずよ!」
そう言って、マリーさんは私の手を取って歩き出した。
レクリエーションルームでは簡易なお茶会が開かれていた。主催者はまたもやマリーであり、物怖じしない彼女はエウリュアレも遠慮なく招くのだった。
「女神様、このお菓子はいかが?」
「……いただくわ」
「…その、マリーさんにお茶会と呼ばれて来ましたが、他の皆さんは?」
「ええ、どうやらエミヤさんやブーディカさんの食堂組は準備のみを手伝って不参加かと。他は…モードレッドさんなどの戦闘組はどうやら先約のようですね?」
「あ、はい、そうでした!使用簿に記載がありました!」
主催のマリーは率先して準備を行う。ブーディカに用意して貰ったお茶会セットをテーブルに並べる。マシュや清姫がそれを手伝う。リップは手伝おうと手を伸ばすも清姫に止められ、おとなしく座っていた。エウリュアレはそれを眺めながらも手伝う事はなかった。
「さ、準備ができたわ!それぞれの都合によって女性サーヴァントのみになったのだけれど、これはこれね。楽しくお話しましょう!」
「そうね、はからずも当世風には女子会だったかしら?それになったわね」
「はわ、じ、女子会ですか!?私、話せる事は多くないですが」
「まあ、ではマスターへの愛を語るのですね?私は行きますね」
「待ってください、それはハードルが高い話題ではないでしょうか!?」
「フフフ、1つは決まっているけれど、話題は何でも良いのよ?みんなで話すと楽しいもの!」
そうして始まったお茶会は──
「さて、始めましょう!」
「そうね」
「美味しそうですね!」
「キャットも手伝ったのかな?」
「そうでしょうね、ブーディカさんだけでも良いでしょうが、あのキツネが手伝わない訳が無いでしょうし」
まずはお菓子を食べることから始まった。
「……ふぅ、キャットの作ったキャロットクッキー、おいしいですね」
「はい!流石はカルデア料理長ですね!」
マスターが選んだピンクの菜箸を器用に使ってクッキーを手に乗せるリップ。カルデア料理長とジャンヌが作ったクッキーはすぐになくなり、次のケーキに手が伸びる。
「……熱い」
「あら?紅茶の温度調節を間違えたかしら?メモの通りにしたのだけれど」
「私のものは丁度よいのですが…」
「…ああ、そこの龍のものは一番最後に淹れたものなんじゃないかしら?まあ、王女様の淹れたものにしては美味しいじゃない」
「あら、清姫さんごめんなさい。私ったら時間を間違えたのね」
「……いえ、もう問題無いです。フフ、マリー様、主催者で頑張っていられるのですから多少のミスがあったとして、私は気にいたしません」
そう言って、清姫は少し風味を味わってから口をつけた。頬が綻ぶ清姫を見て、マリーも嬉しそうに微笑むのだった。
「そういえば、エリザベートさんは誘われなかったのですか?彼女であれば喜んで来そうでしたが」
「ええ、私もそう思って声をかけようとしたけれど、ダヴィンチさんが急用だと連れていってしまったわ」
「急用?ダヴィンチちゃんは、今日は一日ゆっくりされると聞いていましたが」
「さあ、知らないけど、あの竜はうるさいから良いのよ」
「…貴族みたいですし、マナーはわかるかも?」
「…そう、あれで貴族だったのね」
エウリュアレの微妙そうな顔が場の雰囲気をよく表していた。
一方、ダヴィンチの工房では…。
「ハックション!!…誰か噂をしてる?」
「ン?ああ、マシュ辺りがしてるかもね?」
「そうなのね!ふふ、この前のライブも成功したし、ファンが増えたのかしら!?」
「ないない、それよりも靴を直すよ」
新たな壁に新たな装備を試したいエリザベートを、華麗に流しながら作業するダヴィンチ。出来上がりはまだ先だ。
「フフ、なら一度話題を変えましょう?どうやらマシュさんにお悩みがあるみたいよ」
「…お悩みですか?何でしょうか、特異点のことですか?」
「…もしや、メカエリザベートさんのことですか?」
「興味があるわね。…フフ、マスターとのことよね?」
「…どうして、みなさんはそこまでおわかりに?」
悩みの内容をズバズバと当てていく様に、マシュは驚きとかすかな恐怖を感じた。今から自分はこの悩みをこのメンバーに打ち明けてもいいのだろうか?マシュの脳裏に一抹の不安も浮かんでいた。
「あら、その様子は当たりなのね。まあ、恋バナって言うのよね?フフ、なんだかすっごく楽しみね!」
「ええ、さあ、マシュ、さっさと話しなさい?」
「…うう、いいのでしょうか?…えっと、そのですね。…最近、先輩とメカエリチャンさんの仲がその、近いのを見てこう、胸がムズムズすると言いますか。いえ、先輩達が信頼し合っているのは嬉しいのですが…」
マシュは、恥ずかしい気持ちと何か申し訳なさそうに口にする。
「「………」」
何だろうか、これはツッコんで良いこと何だろうか?(意訳)
「…マシュさん、それは嫉妬いえ羨望でしょうか。そんな恥ずかしそうに思うことはありません。堂々とするべきです」
「清姫さん…」
「はい、では、当初の通りマスターへの愛を語り合いましょう!」
「待ちなさい、それにこちらを巻き込まないで」
「なぜですか?ここは女子会。恋バナの場でしょう?」
「はわわ、気まずくなって黙ってたら大変なことに…」
「あらあら、盛り上がってきたわね!女子会、こんなに楽しいのね!!」
キラキラと目を輝かすマリーをよそに、恋バナはどんどん進む。
「フフ、マシュはメカとマスターのどこの部分がそう感じたのかしら?」
面白そうにエウリュアレが尋ねる。
「…そうですね、やはり、先の特異点から帰って来た辺りから、視線での意思疎通ができていたことでしょうか。……私はまだ、先輩とそこまで意思を通じ合わせることはできないかと」
「…そうですね、私もそれは少し思っています。ますたぁとメカエリザベートさんの仲は深まる一方です」
「うう、最近の特異点ではほぼレギュラーですしね…。それに比べて私は最近、オペレーターばかり…。マシュさんを笑えません。私はマスターの最終防衛線だったのに…」
マシュ、清姫、リップは自身で言っていて悲しくなった。
「…ちょっと、振っておいて言うのは流石に嫌なんだけど、揃いも揃ってなんでそんな落ち込むのよ!?もう、貴方達良い娘ね、イタズラにいじれないじゃない。キャラ的におかしくなりそうね!」
「フフ、これも仲のいいみんななのね!」
外野に追いやられた2人は、優しく見守るのだった。
「そういえば、女神様はマスターのことをどう思っておられるの?」
「…何も、あの娘達みたいな感情はないわ。あいつはただ、見ていて退屈しない役者かしら?ステンノならもっと酷い評価になるのかしら」
エウリュアレは脳内にステンノの姿を浮かべる。…メデューサ、早く来ないかしら?
「まあ、女神様はマスターのことを気に入ってらっしゃるのね?」
「なぜ、そうなるのかしら?あいつは役者よ、哀れな、ね」
「フフ、そんな役者をずっと見てらっしゃるのですもの。気に入っていると思いますわ」
「…ぷいっ」
そっぽを向くエウリュアレに、マリーは面白くて仕方なかった。仕返しにエウリュアレはマリーに質問を返す。
「フフッ、私は好きよ。だって、あんなに小さいのに頑張り屋ですもの、嫌いになる方が難しいのね」
「…はぁ、答えはわかってたのに、聞いた私が悪かったのね」
先程よりも疲れた様子のエウリュアレだが、マリーは嬉しそうに微笑むのだった。
「…メカエリザベートさんは設定が多すぎます。研究しようにも埒が明きません、…こうなれば、清姫、ますたぁの為に一肌脱ぎます!」
「ええ、その通りです。先輩の為に頑張りマシュ」
「え、それよりも清姫を止めましょう、マシュさん!」
燃える清姫を強制的に消火したが、一部ケーキが焦げてしまった。沈静化した清姫がもぐもぐと消化していた。
「…マシュさん、落ち着いたかしら?」
「…はい、すみません。少し熱くなってしまいました」
「フフ、それだけ熱心に思って貰えて、マスターは幸せ者ね?」
「…当の本人はそんなの感じてないのよね?唐変木なんだから」
「唐変木?…マスター、そうなのかも…知れませんね」
「さ、なんであれ、そろそろお開きじゃないかしら」
そう言って立ち上がるエウリュアレ。時計はもう夕方近くを指している。そろそろ夕飯となる時間だった。
「あ、そうね。フフ、みんな今日はありがとう。とっても楽しかったわ!!」
「はい、皆さんとお話できて楽しかったです!」
「私もです!マシュさん、清姫さんももう少し話しましょう!」
「私もますたぁとのあれやこれやをお話できてよかったです」
「あったかしらそんな会話?…存外に楽しめたわ。…芽吹くかどうか楽しみね」
そんな言葉を残して、女子会は終了した。終了後、片付けの手伝いに来たエミヤとブーディカは、嬉しそうなマリーを見て、微笑むのだった。