「よっしゃ、始めようぜ!」
「今日も元気だなモードレッド?」
「はっ、そう言うお前も得物を構えているじゃねーか、クー・フーリン!」
シミュレータールームで向かい合う、モードレッドとクー・フーリン。たまたま通路ですれ違った2人は、たまたま空いていたシミュレータールームで闘おうとしていた。邪魔者はいない。互いを見つめ、同時に駆け出した。*1
「オラオラ、サーフボードで杖に負けるなよ!」
「うっせぇ!つーか、お前のはもはや杖じゃないだろ!」
最初の1合はクー・フーリンの優勢だった。サーフボードの広い面で薙ぎ払うモードレッドに、クー・フーリンは杖の先端を槍の様に突き出した。本来であれば面の広いサーフボードに負けそうだが、一点に集中された力はサーフボードを弾くほどの力となっていた。よろけたモードレッドをクー・フーリンは追撃し、モードレッドも直感でかわしていた。じゃれ合いの打ち合いを繰り返し、身体が温まって来た2人は再び距離を取り構え直す。*2
「「──っ!」」
そして、2人はほぼ同時に1歩目を踏み抜いた。
「まだ、遅せぇ!」
「くっ、──ラァッ!!」
早かったのはクー・フーリンだった。勢いのまま上段から杖を振り降ろす。それに対して、モードレッドはボードで前方正面の地面を叩き、一回転しながら無理やり上へ逃れた。
「まだだ、アンサズ!!」
避けられたクー・フーリンは、足でブレーキをかけつつも空中のモードレッドに向けて炎を放った。*3
「─!そら、弾けろ!」
モードレッドは直感に従い、ボードを横薙ぎに振るうと同時に魔力を放出し、水の壁を生成する。炎と水。やや炎が勝ったが、モードレッドに当たる事はなかった。*4
「感"は"冴えてんな!」
「感"も"だ!!」
言い返すモードレッドは、再びクー・フーリンに接近しようと一度地面に着地する。クー・フーリンはそれを面白そうに眺めていた。着地を狙う事はできたが、着地後にどう動くのかを見たかった。それが面白くないモードレッドは、少し思案する。何か、あの面を崩すような事はないか。この際だから、第三者の…いや、なんか騎士として、模擬戦でそんな事はしたくない。モードレッドは、仕方なく、仕方なく、着地した。*5
「おー?なんもしねぇのか?もしかして、できなかったか?」
「うっせ、しなかった、だ!」
「ハハ、まあ、なんとなくわかるがな」
「ハッ、それより、来ねぇのか?」
「んー……そこか?」
クー・フーリンは、モードレッドとは外れた所を見つめる。*6
「…?なんだよ、なんかあんのか?」
「─アンサズ」
モードレッドを無視するクー・フーリンは、杖の矛先をその方向に傾ける。杖から放たれた炎は真っ直ぐと第三者に飛んだ。*7
「キャッ!あ、危ないじゃないですか!」
「あー!リップ、テメェ、隠れてやがったな!?」
「ハー、やっぱり嬢ちゃんかよ。なんだ、呑気におやつタイムか?」
「ム、これは栄養補給です。その、空腹だと動けませんから!」
紙袋を背中に隠して、リップは少し頬を膨らませて言う。それを見て、やれやれと思うクー・フーリンだった。
「てか、お前、いつからいたんだよ?」
「え?…多分、最初から?」
「じゃーなんで、声かけねーんだよ!?」
「え?別にモードレッドみたいに暇だからって、戦いたいわけじゃなかったし…。」
「お前の中の俺は、そんなにバトルジャンキーなのかよ!?」
「え?うん」
戦いの熱気も冷めたクー・フーリンは、少し離れた場所で腰を下ろしていた。そして、リップの意見には同意だった。
「はー!?ちげぇーから、俺はその、戦力向上のー為に、だなぁ」
「じゃあ、スカサハさんとか呼べばよかったんじゃ?」
「あー?リップは知らないのか?あいつ、今、滝行行ってるぞ?」
「なんでです!?」
手持ち無沙汰になったクー・フーリンは、小さい炎で動物を形作っていた。そして、リップの意見に同意だった。あれは意味が分からないよな。そんなことをこぼしながら、クー・フーリンは立ち上がる。
「おいおい、それでどうすんだよ。続けるか?辞めるか?」
「あ?なんだ逃げんのか?」
「ちげーよ、だがな、リップの嬢ちゃんも来たしな」
「…?私は戦う気はありませんよ?」
「…だと」
「…まあ、コイツはそうかもな」
「なんですか!失礼ですよ!」
モードレッドに詰め寄るリップ。騒がしくなった部屋で、クー・フーリンはあのライブを思い出す。…いや、あれは例外だ。しまいにゃ、まだ鼓膜に残ってる。クー・フーリンはすぐに考えをやめた。
「はあ、ひとまずやめるか。…飯行こーぜ?」
「あ、私もう食べました」
「お、良いな。俺は行くぜ」
「うし、リップも行くぞ!!」
「え、だから──」
「──いいから、行くぞ!!」
「キャ~ひ、酷いー」
モードレッドに引きづられるリップを横目に、クー・フーリンも食堂に向かう。途中、あきらめたリップがトボトボとついてくる。食堂ではマスターとジークフリートが、ラーメンを食べていた。それにならってみんなでラーメンを食べたのだった。