管制室での一幕③ 試食会はいづこへ
オケアノス攻略後、ゆっくりとしていた僕達はロマニに呼ばれて管制室に来ていた。管制室にはロマニとダヴィンチちゃん、スタッフの皆、それとジャンヌ、モードレッドが集まっていた。
「よし、皆集まったね。察しは付いていると思うけど、ついに第4の特異点の攻略に向かう。場所はロンドンだ」
「ロンドン、イギリスじゃなくて?」
「うんうん、マスター君の疑問もわかるよ。今回は首都ロンドンだけだから、フランスやオケアノスよりも規模は小さい」
「…だな、それにローマよりもちーせえだろうな」
「…ドクター、ロンドンと言えば時計塔ですが」
「ああ、僕もそこが気になってる。特異点としてはローマやフランスと比べると小さい。何よりもイギリスと言う国では無く、首都のみが特異点となった理由には、時計塔が絡んでいるのではと考えている。あそこはいわく付きが多すぎるからね」
「…兎も角、油断してはいけないと言うことですね」
「ジャンヌの言う通りだな、いつも通りにいきゃあいいことだ」
モードレッドの言葉にみんなが頷く。
「そういや、リップやメカエリは待機なのか?ついて来そうだがよ」
「あ、私も気になってました。珍しいなと」
「ああ、そうだね。僕もいないなぁとは思ってた」
「そういえば、朝早くにお二人を見たような…。マスターさんの部屋の方面だったような…」
「え?今日は会ってないよ?」
今朝からの行動を思い出す。しかし、2人の姿はなかった。
「ああ、リップ君とメカエリザベート君にはシミュレータールームの改装を手伝って貰っているんだよ。最近、何かと修復に勤しむはめになって、大変だったからね。これを期にアップデートさせようと思ってね」
「あー、前に何か素材を使うって申請してきたのはそれか」
「おや、ロマニ、書類に目を通さず承認したのかい?」
「え、ロマニそれは不味いんじゃない?」
「うえ、いや、一通りは目を通してるよ!?ただ、レオナルドのだし、まあいっかって…」
「ドクター、流石に項目くらいは見るべきでは?」
「うう、そうだね、気をつけるよ」
申し訳なさそうに言うロマニに、仕方ないねという空気が流れた。
「でだ、いつ行くんだよ?」
「あ、うん、そうだね。…シミュレータールームの改装を待っても良いけど、どうしよっか?」
「改装は約2日って、ところかな?先に乗り込んで、後から合流も手だね」
「その場合はここにいる人で行くんですか?」
「僕にマシュ、モードレッド、ジャンヌ。いつもよりも少ないね」
ここにいるのは僕含めて4人、オケアノスでは途中参加のクー・フーリンを除いて7人、約半分だ。
「そうだね、後はクー・フーリン君やロビン君なんかが来てくれると戦力的に良いかも」
「ああ、2人なら街中でも上手く戦えそうだね」
「スカサハさんは今回の特異点は止めておくと言っておられたので、クー・フーリンさんとロビンさんは良いのかも知れませんね」
「そういえば、スカサハさん、前にそろそろ儂にも休暇とやらが欲しいって言ってました!…確か、滝を見に行くとか。あと、茨木さんはお菓子で忙しいと言っていました」
「お菓子?ハロウィンはまだ先のはずだけど…」
「そうですね、食堂で何かの試作会でもされているのでしょうか」
「そーいや、姫さんやエウリュアレはお茶会だって言ってたな」
「じゃあ、ロボとヘシアンもか。あ、小次郎は脱穀中だっけ」
「佐々木君はもうすっかり農家だね。彼が作ったお米は美味しいけどね」
「…あと、Xや金時はどうか聞いてみようか」
「うん、なら少し時間をおくからそれぞれ準備やらを行う時間に使ってくれ」
そういってこの場は解散となった。
解散後、僕はマシュ、ジャンヌと共に食堂に来ていた。茨木の情報から金時も一緒にいるかもしれないからだ。あと、Xもなぜかいそうだったから。
「おや、マスターも噂を聞いて来たのか?」
「あ、エミヤ。噂ってなんの話?」
「違ったのか?今からブーディカが試食会を開くと言う噂だが。あそこの茨木童子のようにな」
食堂に着いた僕達にエミヤは、そわそわしながら机に座る茨木を指さす。
「…まだか、吾はもうお腹がすいておる」
「なあ、俺っちはなんで呼ばれたんだよ。帰っていいか?」
「ならぬ、吾だけでは貰えるのは1つではないか」
「…俺っちが食べる分はないなら余計に帰りたいんだが…」
「ハハ、良いじゃないですか、折角タダで手に入るんですから」
「いやよお、X、お前も俺っちの分を狙ってるだけだよな」
ハアっと、大きなため息を吐く金時の背中は、いつもよりも少し小さく見えた。
「あー、え、ブーディカの試食ってお菓子なの?」
「いや、内容までは知らないな。お菓子は茨木童子の予想だろうか」
「…お菓子、うーん、私もブーディカさんから聞いてないですね。マシュさんは?」
「そうですね、私も聞いてないです。ブーディカさんのことですし、事前に告知をされていそうですが…」
何やら情報が錯綜して、変なことになっていそうな予感がする。まあ、いっか、特異点のことを3人に確認しよう。
「ねえ、3人共、ちょっと聞きたいんだけど」
「ん、…なんだマスターか。汝らもししょくかいに来たのか?」
「おお、大将じゃねぇか。どうかしたか?」
「うん、ちょっと用事でね。茨木のいう試食会はちょっと分からないけど、次の特異点でのメンバーについてだね」
特異点の話題を出すと、茨木は「あー、そんなのあったな」という顔をする。金時は、「おー次か、頑張りたいな」と、嬉しそうに微笑む。Xは「特異点報酬はいくらかな~」と態度に出ていた。
「うむ、吾は行かん」
「俺っちは行くぜ大将!」
「あー、お賃金はいくらですか?」
「うん、金時はありがとう。茨木は仕方ないね。…Xは、うーん、ロマニに相談だね」
ですよね~とXは机の上でぐでーと伸びをする。
「そういえば、茨木さんはブーディカさんの試食会のことをどちらで知られたのですか?」
「ん?……ん?…忘れた」
「え、そうなんですか?…えーと、誰かが話していたとか?」
「……忘れた。…いや、あのからくり女が話していたような…」
「からくり、メカエリチャン?…なんでメカエリチャンが」
「……(おや、そういえば、朝の仕込み前に厨房が使われていたような)」
「もしかして、勘違いですか?」
「そんな、まさか、吾は何の為に…」
「えー!茨木さんがあるって、言ったから待ったのに違うんですか!?」
「あー、エミヤ、何か作ってくれねーか?俺っちはいいからよ」
「…ああ、任せてくれ。折角だ、マスター達も食べて行くといい」
そう言って、エミヤは厨房内に入っていった。
「…兎も角、最初の予定はクリアかな?」
「はい、金時さんとXさんが参加ですね。これで6人です、先輩」
「うん、メンバーはこれで良いのかな?あ、クー・フーリンとロビンもか…まあ、明日でもいっか」
「マスターさん、美味しそうな匂いしますね!」
「あ、本当だ。なんだろう、肉まん?」
厨房からは美味しそうな匂いが漂っていた。茨木みたいに少しお腹がすいたな。
「ああ、マスターの言う通り、肉まんを作った。丁度、夕食用に準備していたからな。…数はあるから取り合うな2人共」
机に置かれた肉まんへ最初に手を伸ばしたのは、茨木とXだった。お互いを睨みながら1つ、2つと食べていた。
「…うん、美味しい。エミヤ、ありがとう」
「はい、美味しいですね先輩!ありがとうございます、エミヤさん」
「ああ、お粗末さま」
「お、ジャンヌ、ほっぺに付いてるぞ」
「はい?…あ、ありがとうございます、金時さん」
その後、肉まんを食べ終えた僕達は、ロマニに金時とXのことを伝え、今日は夕食を食べて眠ることにした。明日から特異点だ。みんなで頑張っていこう。