僕のカルデア日誌   作:kanaumi

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前回の続きです

2026/4/12 修正


夏の一幕③ 魔猪には宝具

 

 前日の調査で、気になることが三つ上がっていた。一つ目はモーさん達が発見した、不可解な荒れた跡。この辺りで見かけた魔物では説明がつかないほど荒れていたそうだ。二つ目はマシュ達が見た小さい猪。その風貌があまりにもこの島の生態から浮いていた。三つ目は僕らが見つけた毒の沼。茨木が焼き消したが、自然にできたとは思えない以上、何かが発生させたものだということ。これらがこの特異点に直接関係しているかは分からない。ただ、僕らの安全のためには対処しなければならない。さて、どれから手をつけようか。

 

「なあ、そのマシュ達が見たっていう猪を探さないか?」

「うん、モーさんなんで?」

 そう言って、モーさんは手を挙げる。

「いや、三つの中じゃ一番危険が無さそうだし、何か気になるんだよ」

「はい、私もモードレッドさんに賛成です。昨日見た猪、不思議な感じでした」

 モーさんの意見を聞き、マシュが賛同する。マシュは昨日、その猪に遭遇しているから余計に気になったのかも知れない。

「んじゃあ、オレも賛成だ。正直に言って他の二つは皆目見当がつかん」

 そうして、猪捜索にモードレッド、マシュ、クー・フーリンが向かうことになった。

 

「儂は毒の沼かの。あれは恐らく発生位置が移動する奴だ。追ってみるのも良いと思うぞ」

「じゃあ、オレっちもそっちかな。本当は猪の方が良いんだろうが、こっちが気になる」

 スカサハは、昨日見た毒沼が気になると手を挙げた。金時も気になっていたようだ。

「わたしも毒の沼に興味があるわ。花にも作物にも毒はあるのだから、どういうものかしっかり見ておくべきだわ」

 毒の沼捜索はスカサハ、金時、マリーが向かうことになった。

 

「なんかまた分かれての行動になるのかな。なら、僕は残ったので」

「ますたぁがそちらに行くのであればわたくしも」

 僕はまあ、余りものでいいかと言う気持ちだったからだけど、清姫は僕についてこないでもいいのに。

「吾はここの番では……ダメか。なら、吾も残り物だ」

 残りの捜索には、僕と清姫と茨木が行くことになった。うん、最後はすごく雑だね。

 

 

 

──マシュ率いる猪捜索隊。モードレッドを先頭に昨日来た湖にやってきていた。昨日に比べ気持ち静かだと、マシュは感じていた。

「なあマシュ、この辺か?」

 先頭を歩いていたモードレッドが振り返る。

「はい、この湖で水を飲んでいました。…ですが」

「……今はいないみたいだな。隠れて待ってみるか?」

 辺りを見るクー・フーリンは、気配のなさにここにはいないと確信して、待つことを提案する。

「もしくはなんかの餌でトラップとかか?」

 藪を突付いてモードレッドは二人に尋ねる。

「では、罠を作って待ってみましょう!」

 マシュの号令で、クー・フーリンが即席の籠を作り、モードレッドが木に登って木の実をいくつか取ってきた。籠を棒で支えて中に木の実を置き、仕上げにルーン魔術で籠を周囲に溶け込ませる。準備が整うと、三人は近くの木の上で待機することにした。

 

 

 ──こちらスカサハ率いる、毒沼調査隊。昨日、毒沼を見つけた山に来ていた。

「さて、昨日毒の沼があった辺りだが、何も無いな」

 スカサハは周囲をみて、呟く。茨木が一部焼いていたが、それでもまだ残っていた。

「そうね、匂いだってそれらしいのはしないわ」

 マリーは鼻をヒクヒクとさせるが、周囲から異臭は漂ってこない。

「───おう、ありがとうよ。姉御、姫さん。そこらの鶏に聞いたが、向こうにそれらしいのがあるみたいだ。行ってみねーか?」

 金時は鶏に「サンキュ」と手を振る。そして、グッと森の方向を指す。

「む、金時、お主は魔物と会話できるのか?」

「まあ、簡単なことはな。……姫さんが想像するような感じじゃあないぜ、多分」

「それでも凄いわ!」

 金時の動物会話のスキルによって、ある程度の賢い動物であれば意思疎通が可能だった。二人に手放しで感心され、金時は照れくさそうに頬をかく。

「……あーー、まあそれは良くてよ、向こうみたいだし行こうぜ?」

「フフ、そうだな」

「ええ、良くってよ!」

 照れ隠しか、気持ち早足の金時にスカサハとマリーは続いて歩き出した。

 

 

 

 ──残りものたちは昨日、クー・フーリンたちが見つけた荒れた跡に来ていた。話は聞いていたが実際に見ても酷かった。

「あ、ここっぽいね。うわぁ、確かに酷いや」

「……そうですね、何かが突進したような、それこそ猪ですか」

 木々はなぎ倒されていて、突進したような跡にも見える。清姫は扇子で口元を隠していた。

「……おい、汝等、ここに昨日の毒の匂いが微かだがするぞ」

 しかし、茨木は違う観点でここを見ていた。匂い、茨木は昨日見つけた毒沼と同じ匂いを嗅ぎつけていた。

「え、本当に!? じゃあ、これと毒の沼は同一犯?」

「……の可能性が高そうですわ。でも毒の沼はできていない様子。通るだけでは沼はできないということですね」

 僕はもう一度荒れた跡を見る。だが、そこには毒は見られなかった。清姫も同意見の様子。

「えーと、向き的にあっちからここに来たんだよね。辿ってみる?」

 そう言って、僕は昨日の毒沼のあった方角とは反対の方を指す。

「……ふん、手掛かりもそれくらいしかない上、ここをまた通るとも限らんだろう。だが、ここで暇をするよりかは良いと思うぞ」

 茨木は答えを聞くよりも先に歩き出した。僕も慌てて歩き出した。

「まあ、わたくしはますたぁに従いますわ」

 そう言って、清姫は僕の後ろにつく。かくして、僕らは荒れ地の元を辿って行くことになった。

 

 

 

 ──金時の案内の元、毒沼調査隊は森の中を歩いていた。

「おう、姉御に姫さん。見つけたぜ、あれだ!」

 先頭を歩く金時が振り返り前方を指さす。

「……ああ、昨日見た物だ。っと、待てマリー。まだ近づくな、ルーンで耐性を付与する。お主等も毒には強くは無かろう」

「ええ、よろしくお願いするわ」

「すまねえ」

 スカサハは素早くルーンを描き、自身と金時とマリーに付与した。それから、毒の沼に近づく。

 

「おー、話には聞いちゃいたが、毒々しい見た目だな」

 毒々しい見た目に金時も思わず顔をしかめる。

「ええ、周りの草木も枯れてるわ」

 マリーが近くの枝を掴むと、掴んだ先から崩れ落ちた。

「……先程の地点からここまでで、島の中心へ直線が引けるな」

 スカサハは脳内の地図からそう推測する。

「じゃあこいつの主は島の中央にいるってことか?」

「そうとも取れる、としか言えんがな。……ん、マリーはどうした?」

 金時の質問にスカサハは回答を濁す。そこで、近くからマリーがいないことに気づく。

「は? さっきまでそこに……いねぇな」

 突然姿を消したマリーを探して、スカサハと金時は辺りを捜索した。しかし、マリーはあっさり見つかった。それも、件の猪と一緒に。

 

「あ、二人共! ねえ、見て! 小さい猪さんよ!」

「お、おお、昨日の奴みたいだな!」

 金時は安堵のあまり、額に浮かんだ冷や汗を大きく拭った。

「……ふむ、なるほどな。この猪、ただの猪では無いな。金時、お主で意思疎通は可能か?」

「おん、そうだな……───おう、───そうか、なら、案内してくれるか?───おう!」

 金時はしゃがみ込み、小さな猪と真っ直ぐに視線を合わせた。

「どうだ?」

 スカサハの問いに応えるように、金時は突然起き上がった。

「どうやらこの毒の沼は最近やって来たデカいのがやってることらしい。毒で草木が枯れるから食料難らしくてな。倒してくれるならば案内するってよ」

「まあ、そうなの。それは放って置けないわ」

「ああ、そうだな」

 猪を先頭に、三人は走り出した。

 

 

 ──罠を設置してから今だに待っているマシュ一行。いい匂いの果物を餌にして、籠で閉じれる仕組みになっている。

「来ねえなぁ」

「だなぁ」

「はい、仕掛けは完璧なはずなんですが……」

 あれから大分待っていたのだが、猪は一向に現れない。クー・フーリンが何回か餌を換え、何匹か魔物が来たので追い払った。モードレッドは少し暇そうだった。マシュも本命不在のまま更に待つのはそろそろ厳しい。何か別の手を考えなければ。

「……どうしましょう、このままは厳しいですよね?」

 マシュはモードレッドへ視線を向ける。

「そうだなぁ、何かねえのか? クー・フーリンよぉ」

 モードレッドクー・フーリンの方を向く。

「……そうさなぁ、………ん?」

 唐突にクー・フーリンが辺りを見渡す。そして、笑みを浮かべた。

「お、いたか!」

「ああ、恐らくな。明らかに他と違うのがこっちに来てるな」

 笑みを見たモードレッドは、クー・フーリンの視線をたどる。

「では!」

「仕掛けは完璧、後は結果だけだぜ」

 クー・フーリンは仕掛けに注力する。茂みから小さい物体が餌めがけて飛んできた。その勢いで仕掛けが作動し、籠が物体を閉じ込めた。

「おーし、成功だ!」

「ウォぉ!」

「やりました!」

 三人は急いで木から降りた。籠の中でゴソゴソと動く物体を前に、それぞれが構える。

「良し、1、2の3だ。1、2の───」

 瞬間、高速で飛翔してきた紫の槍が、クー・フーリンの鼻先を掠めた。

「たく、待てと言っておろうが、バカ弟子が」

 絶対事後報告だろ、とクー・フーリンは思った。

 

 

毒の沼 少し前

 

「ふむ、大分来たな。金時よ、後どれ程だ?」

 

「───そんなにかからねえみたいだな。……体力は大丈夫か、姫さん?」

 

「ええ、大丈夫よ! 不思議とあまり疲れていないの!」

 

「ああ、それは儂がルーンで補助している」

 

「まあ、ありがとう、嬉しいわ」

 

「───ん、おい、どうした?───は? いい匂いだぁ、あ、待て!」

 

 先を走っていた猪が急に方向転換して走り出した。

 

「どうした?」

 

「あいつ、いい匂いがしたって、そっちに行っちまいやがった」

 

「あら、さっき木の実をあげたのだけど、足りなかったのかしら?」

 

 マリーが少しだけ申し訳なさそうな顔をした。

 

「兎に角、追うぞ。話はそれからだ」

 

 そして、現在。

 

 

「へー、毒の沼とこいつってそんな関係だったんだな」

 

「ああ、だからこいつに案内してもらえばまとめて解決よ」

 

「そうですね。もしかしたら荒れ地の原因もその魔物かもしれませんね!」

 

「フフ、美味しいかしら? もっとあるからお食べ?」

 

「おい師匠、槍投げる必要あったか?」

 

「ふん、先走るお主が悪い」

 

 誤解も解けて合流した両チームは、情報を交換しながら先の目的地へ向かう話をまとめた。

 

「良し、そろそろ行くか。───頼んだぜ!」

 

 再び猪を先頭に、走り出した。

 

 

荒れた跡

 

「ずいぶん歩いたぞ、まだ着かんのか?」

 

「うーん、これは分からないな」

 

「フフ、ますたぁと一緒であればどうという事は無いですわ」

 

「吾はあるのだが? ……ん? ……止まれマスター!」

 

「へ?」

 

「……! マスター、わたくしの後ろへ!」

 

 突然、目の前を黒く大きな物体が覆い過ぎていった。とっさに清姫が引っ張ってくれなければ、あの物体に巻き込まれていた。心臓がどくどく言っている。

 

「はあはあ、あ、ありがとう清姫」

 

「いえ、それには及びません、ますたぁ」

 

「……今のが例の奴だ。毒の匂いで分かった」

 

「じゃあ、追えば」

 

「ああ、色々と片が付くだろうな」

 

「ますたぁ、大丈夫ですか?」

 

「はあはあ、……うん、大丈夫。追おう!」

 

 奴が通った跡を踏みながら、三人は走り出した。

 

 

毒の沼&猪捜索

 

「……ここか? ───そうか。皆、ここだってよ」

 

「……なるほどな、これは強烈な毒素じゃな」

 

「スカサハさんのルーンを先にかけておいて良かったですね」

 

「ええ、この濃度には耐えられなさそうね」

 

「一面毒の沼だな。……岩や崖にもついてんな」

 

「察するに、ここは沼田場だな」

 

「沼田場? 何だそれ」

 

「猪は泥浴という行為を行う。主に、身体についた寄生虫を落とす役割がある。それを行う場所を沼田場と言う。これを見るに、水溜まり程度の毒は何かにぶつかった拍子にできた物だろう」

 

「だが、やってた奴はいないみたいだな」

 

「───そうか、そりゃあ悲しいな」

 

「どうかしたんですか?」

 

「ここは昔は綺麗な湖だったらしい。奴が来てからこうなっていったみたいだ」

 

「……そうですか、それは悲しいですね」

 

「ああ──」

 

 その時だった。突然の地響きと咆哮が、辺りを揺らした。

 

「何かしら!?」

 

「奴さん来やがったみたいだな」

 

「ああ、構えろ、来るぞ!」

 

 森の木々の間から、黒い巨体が飛び出してきた。

 

「GgagaggaRgagagga!!」

 

「おっと、気合十分か?」

 

「……ルーンで対策しているとはいえ、奴に触れ続けるのは得策ではない。一撃離脱を心がけよ!」

 

「おう!」

 

 黒の巨体との戦闘が始まった。

 

「まずは、この邪魔な毒沼を吹き飛ばしてやるぜ! 逆巻く波濤を制する王様気分(プリドゥエン・チューブライディング)――!!」

 

 モードレッドの大波が、辺りの毒をまとめて飲み込んだ。それに乗じて金時とスカサハが接近し、メリケンと槍を巨体に叩き込む。しかし皮が厚いのか、ダメージが入った様には見えない。

 

「GgagaggaRgagagga!!!」

 

「皆さん、私の後ろに! 仮想宝具疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)――!!」

 

 突進にマシュが宝具を展開する。真正面からぶつかり合う力比べは、ギリギリマシュに軍配が上がった。その隙に全員が一斉に襲いかかる。金時のメリケン、スカサハの槍、クー・フーリンのルーン火、モードレッドのサーフボード、マリーのビーチボール。それぞれが少なくないダメージを与える。しかし致命打には至らず、巨体はまだこちらへの突進を諦めていない。そこへ、

 

「遅れてすまぬな。それ、燃えろ!!」

 

「フフ、ブレスだって吐いちゃいます」

 

 炎が巨体を包む。

 

 

荒れた跡 少し前

 

「急げ、向こうから強い衝撃が来ておる」

 

「はあはあ、うん」

 

「ますたぁ、わたくしが背負いましょうか?」

 

「ううん、大丈夫。それよりも皆の加勢に行ってあげて」

 

「吾は先に行くぞ」

 

「うん!」

 

 

現在

 

「ごめん、皆遅くなって!」

 

「大将、待ってたぜ!」

 

「やっと来やがったか、おせーぞマスター」

 

「うん、ごめん」

 

「マスター、どうする? 奴さんは結構硬いぜ?」

 

「うん、だから宝具で一気に決めたい」

 

「だが、このまま打ってもあまり意味がないぞ」

 

「わたしの宝具はあまり効かなそうね」

 

「だから、決め手は金時と茨木に任せる」

 

「おお、良いぜ」

 

「吾と金時?」

 

「で、その援護でスカサハとマリーの宝具を使って欲しい」

 

「……まあ、良かろう」

 

「ええ、任せてちょうだい!」

 

「良し、マシュ! 大丈夫そう!?」

 

「はい! 大丈夫です先輩!」

 

 マシュに声をかけ、返事を聞いて動き出す。

 

「まずは二人共お願い!」

 

「任された」

 

「ええ!」

 

「──影の国へと連れて行こう、蹴り穿つ死翔の槍(ゲイボルグ・オルタナティブ)――!!」

 

「──こんな毒よりもキラキラを、愛すべき輝きは永遠に(クリスタル・ドレス)――!!」

 

 神々しい光と死を呼ぶ鏃が巨体に降り注ぎ、動きが止まる。しかし、それでもまだ暴れている。そこに、

 

「暴れる悪い子には罰を。道成寺鐘・百八式火竜薙!! そ〜れ、一発!」

 

「ありがとう、清姫ー! ……金時、茨木、後は頼んだよ!」

 

「おう、任せておけ。これだけお膳立て貰ってしくじるのはゴールデンじゃねぇからな!」

 

「金時、五月蝿いぞ。だが、吾がおるから大船に乗った気分だろうよ! 行け、ベアー号!」

 

「OK、振り落とされんなよ茨木! フルスロットルだ、ベアハウリング!! 夜狼死九・黄金疾走(ゴールデンドライブ・グッドナイト)――!! ──やれ、茨木!!」

 

「何とも、吾の右手が疼いておるわ! 行くぞ!! 愚神礼讃・一条戻橋(エンコミウム・モリエェェェェ)――!!」

 

 金時と茨木の究極の一撃が炸裂した。断末魔もなく、黒き巨体はその姿を消した。

 

 静寂が戻ってきた。誰かが大きく息を吐いた。




 途中ですが、夏イベはこれで終わりです。顛末は次回ダイジェストでお送りします。そろそろリップとか登場させたいので


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