僕のカルデア日誌   作:kanaumi

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2026/4/12 修正


通路での一幕① イシュタルカップ延期

 

 

 熱くも寒くもない、温度調整されたカルデアの通路を歩く。少し前まで常夏の中で過ごしていたから、そのギャップをつい感じてしまう。悪いことでも、良いことでもある。そう、違和感だ。……などとどうでもいいことを考えているのは、ひとえに暇だからだ。予定では夏休暇で海洋プラントに行くはずが、無人島に飛ばされた上に時間のズレで一日も経っていない。疲れていたから海洋プラントへは行かなかった。そうしたら、見事に時間が空いた。学生なら遊びに出かけるところだが、ここはカルデア。外は真っ白、中も白い。シミュレータールームに管制室、ダヴィンチちゃんのところ、食堂、図書館、栽培室、ボイラー室。あるにはあるが、多感な元高校生を満たすものがどこにあるというのか。誰に聞いてもそれなりの答えをくれそうな環境で、僕は何を悩んでいるのか。一体、どう―――

 

「マスター、それ以上行くと壁にぶつかっちゃいますよ」

 

「……! あ、ありがとう、リップ」

 

 リップの大きな両手に身体を捕まれて、僕は停止した。通路の曲がり角を真っ直ぐ歩いていたことに、その瞬間気がついた。

 

「悩み事ですか? 歩きながらは危ないですよ?」

 

「うん、その通り。気をつけるから降ろしてくれない?」

 

「はい」

 

「……ふう、またリップの気配遮断に気がつかなかったよ」

 

「フフ、これでも高レベルの気配遮断ですからね。マスターと言えど気がつくのは難しいのです」

 

 フフンとでも言うように、リップは胸を張る。引力を肌で感じながら、僕は耐えた。でも、可愛い。

 

「それで、マスターは何を悩んでいたんですか?」

 

「ん? いや、リップには一日とかだけど、特異点で一ヶ月いたから、休暇でやりたいことはあらかたやって、暇なんだよね」

 

「ああ〜、マスター達はそうでしたね。モードレッドさんなんかも、そんなことを言ってましたよ」

 

 納得がいったように、リップは両手を合わせる。可愛い。

 

「あ、そうなんだ。まあ、モーさんなら言ってそうだ」

 

「はい、彼女、霊基も水着のままなので属性が夏で、今が一番元気でしょうし」

 

「そっかあ、スカサハが戻す方法を忘れちゃったからねぇ」

 

「でも、どうしましょうか。私も暇の潰し方なんて、そんなに知らないですよ」

 

「うーん、何かないかなぁ」

 

「おーい、マスター! どこだ〜」

 

「あれ、モーさん!?」

 

 反対の方向から、件の水着モーさんが走ってきた。

 

「お、いたいた、リップも一緒か。……まあ、良いか。二人共、ちょっと来てくれ!」

 

「ちょ、モーさん!?」

 

「わわ、力強い!? 私の方が筋力上なのに〜」

 

 モーさんは片手で僕らを掴んで引っ張っていく。何やらバフがかかったような力強さだった。

 

 

食堂

 

「よっと、到着到着〜」

 

「いや、モーさん急にどうしたの?」

 

「わ、私、あまり、はし、るの……はあはあ」

 

「やー、マスターも暇だったろ? オレも暇で仕方なかったんだが、良い事聞いたんだよ」

 

「良い事?」

 

「これだよこれ!」

 

 モーさんが差し出したのは一枚のチラシだった。

 

「……何々? ……女神イシュタル主催、イシュタルカップ? ……なにこれ?」

 

「オレも良くは知らねえけど、レースみたいだぜ? ここのモニターで見れるみたいだし、暇潰しにどうだ?」

 

「へー、面白そうだね」

 

「だろー。……よし、これで見れるってあの芸術野郎が言ってたぞ」

 

「……芸術野郎、ああ、ダヴィンチさんですか」

 

「………あれ? 繋いてる?」

 

 モーさんが操作したモニターは黒いままだった。電源は入っている。電波が悪いのか?

 

「あれー!? あの野郎、嘘教えたか〜?」

 

「……いえ、恐らくこちらに非は無いと思います」

 

「何でだよ、映ってねぇぞ?」

 

「そうだね、リップはなぜそう思ったの?」

 

「マスター、モードレッドさんも右下の方を見てください」

 

 右下。リップの言う通り、モニターの右下に小さく何か書かれている。日本語でも英語でもない、見慣れない文字だ。

 

「右下ぁ? ……ん? ……んん?」

 

「何か書いてあるね、小さいけど。リップは読める?」

 

「いえ、ハイスペックが売りな私ですけど、楔形文字はちょっと」

 

「楔形文字? ……ごめん、聞いたことないやリップ――」

 

「ハイハーイ、呼ばれてないけどダヴィンチちゃん降臨!」

 

 突然、隣にクルクル回りながら現れたのは技術顧問のダヴィンチちゃんだった。

 

「あ、芸術野郎! これどうすんのか、分かるか!」

 

「ウンウン、落ち着きたまえモードレッド君。私も少し想定外で飛んできたんだ」

 

「……この人、どこかBB感があってニガテなんだよなぁ」

 

「想定外って、どういうことダヴィンチちゃん?」

 

「うん、私もイシュタルカップをモードレッド君から聞いて、興味がてら見ようと思っていたが、君達と同じくブラックアウトでね。で、気がついたと思うけど、右下のあれ。今どき楔形文字なんて全国放送で見るとは思わなかったが、あれは主催者からのメッセージだったよ」

 

「はぁ? メッセージだぁ? 何でそんなもんあんな右下に書くんだよ?」

 

「それは私も分からないが、主催者はプライドが高いと見える。不祥事が発生して開催できなくなり、それを告知しなければならない。けど、素直に謝りたくないのか、あんな隅に書いたんだろう」

 

「それで、なんて書いてあったの?」

 

「おっと、話が長くなった。要約すると《参加者0人なので開催しません》だ」

 

「……そんな予想はありましたが、本当だとは」

 

「マジかよ。あんなキッラキラに金かけてますみたいなチラシ配ってたから開催確定だと思ってたのに」

 

「うん、私も同意見かな。金かけてるなーって見てたよ」

 

「でも、残念だね。楽しみにしてたのに」

 

「うーん、そうだねえ」

 

「チクショー、何か腹立ってきたな」

 

「どうどうです、モードレッドさん」

 

「仕方ない、このダヴィンチちゃんが楽しいことを考えよう。マスター君も折角の休暇でこれじゃあ可哀そうだし」

 

「本当に!」

 

「この天才に任せなさい!」

 

「おう、頼むぜダヴィンチ!」

 

「あ、私もですよ」

 

 この後、ダヴィンチちゃんの特製ゲームで楽しく遊んだ。休暇も終わり、また人理修復の旅が再開する。




見切り発車過ぎて話のネタに困ってます。

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