人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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ナガノ展に行きました。494枚写真撮っちゃった。


ズィー・ズィー

 結局、私が本体を見つけるより、彼らがエンプレスを倒す方が早かった。

 ガンジス川の流れる聖地ベナレス。その賑わいを甘く見すぎていたということだ。

 素早くいろんな体を駆け抜けながら街を探している最中、突然「ぎゃあ」と悲鳴が上がり、人が血まみれになって倒れたので、戦いが終わったことを察知した次第である。

 本体が隠れなければならないようなスタンド使いは、やはりこうして人混みを利用して襲ってくるだろう。

 私も似たようなタイプだ。人の多い場所は私にとって有利だが、敵にとっても有利ということである。まいったな。

 ジョースターさんは私が本体を見つけられなかったことに小言を言いつつも、どうやってスタンドを倒したか教えてくれた。

 

「なるほどコールタールで固めて。へええ。頭いいね」

 

 荒木飛呂彦先生の発想には驚かされる。

 この世界に生きている以上、発想に驚く相手はジョースターさんでなければ失礼か。

 

「コールタールかぁ~。……コールタールって何?」

「知らんで驚いとったんか」

 

 言い方からして、固まるなにかだということしかわからない。なんか聞いたことある単語ではあるが、実物を見たことはない。

 

「道路の舗装や防腐剤として塗料に使います。建材ですからたまたまその辺にあったんですよ。工事でもしていたんじゃないですか」

「たまたまってなぁ。わしが探し出したんじゃぞ、スタンドで!」

 

 なるほど、塗料だから乾いたら固まるのか。アスファルトとかセメントのようなものなのだろう。

 ハーミットパープルで探し出したということは、固めて倒すという作戦前提だったはずだ。

 

「いやすごいよ。無事でよかった」

 

 私が助言しなくとも、やはり彼らは無事にスタンド使いとの戦いを切り抜けられるのだろう。

 それは私の存在意義を揺らがしながらも、私を安心させる要素だった。

 私が情報の伝達をミスしても、彼らならきっと無事であると信じることができるからだ。

 だが、そう思っていられるのも旅の前半までだ。DIOの館の中に入るころにはそうも言っていられない。

 

「ところでジョースターさん、サトウキビジュースはもう飲んだ?」

「なに? サトウキビ?」

「インドじゃ夏の風物詩らしい。やや季節外れだけど、運動後の糖分補給にはいいらしいよ」

 

 スタンドとの戦闘後に是非どうぞという話である。

 サトウキビジュースに限った話ではないが、清潔な環境で作られているとは言えないので、おなかの弱い人は要注意だ。

 だがまあジョースターさんなら大丈夫そうだ。おなかに限らず全身強そうだし。

 

「ふ。あなたが雑談するのは珍しいですね」

「しばらく話せないと思ってね。今後はパキスタンに向かって車で移動するんだろう?」

「なにぃ? なんでおぬしが旅の日程を知っておるんじゃ」

「ええ? はは、今更だな。敵さんみんなが後生大事にしているスタンド能力だって知ってるんだぜ。君らがどういう乗り物を手配してるのかくらいわかるさ」

 

 スタンド使いとの戦闘中でもなければ、私は人の体を移りながらこの旅についての情報収集に努めている。

 ジョースターさんはこの旅で、不動産王としてのマネーパワーを潤沢に使用しながら、スピードワゴン財団のマンパワーを借りて旅の支度をしている。スタンドという目に見えないものよりずっと情報を集めるのは簡単だ。金と人の流れを見てやればいいのだから。それからスピードワゴン財団の人間はスタンド使いではないので、直接体を操ってしれっとその辺にある書類を読むことだってできる。

 

「車での移動中、スタンド使いに襲われても助言できないから、先に言っとこうと思って」

「ゲ。また襲ってくんのか」

「うーん、このタイミングかはわからないけど、どっかの道路では来るだろ。車のスタンドだし」

 

 たぶん、次に襲ってくるのはホイールオブフォーチュンのはずだ。

 そこまで苦戦していた記憶はないが、万が一ということもある。漏れずに情報を伝えておきたい。

 

「能力は?」

「なんかすごい車。タイヤに棘とか生やしてたような。壁登ったり地面潜ったりもできた気がする」

「それ車か?」

「スタンドだからなぁ……」

 

 ポルナレフの疑問はもっともだ。しかしスタンドならなにやってもアリなところがある。

 第三部完! とか言ってたのもなんでもありに入るのだろうか。

 コミックを読んでいたころはただのメタっぽいギャグだと思っていたが、この世界に転生した今となっては、そんなことを言えるのなら転生者なのではないかという疑いの目もある。

 私はその戦闘の場にいられない。車には一行しか乗っていないのだから、私の入れる人は存在しない。

 こういうとき、やっぱり家出少女がついてくるの阻止しなければよかったな、とぼんやり思うが、いや、やっぱり女の子の体を都合よく使うのもな、となけなしの良心が言うのだった。

 

「本体の腕だけムキムキだったというのは覚えてる。なんか馬鹿みたいだったから」

「なんじゃそら」

 

 見ればわかる。

 

「そうだ。飛び道具があるな。ガソリンを飛ばせる。火を使うな」

「……ああ」

 

 そうは言っても、火を使える人間は今いない。

 単に離脱しているだけだが、本当に死んだと思っているポルナレフは神妙にうなずいた。

 なんだか申し訳ない気持ちになるが、私が勝手に口を割るわけにもいかない。

 ポルナレフにはもうしばらくの間、アヴドゥルは死んだと思ってもらおう。




ジョースターさんが単独じゃなければ、他の面子のスタンドでいくらでも対処できるな、と後から思ったけど、まあここは年長者のジョースターさんの顔を立てたんじゃないですかね。このままだとジョースターさん1回も戦闘しないまま終わる可能性あると思ったのでサービスサービス……。
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