「もう本当に……申し訳ない、大丈夫かジョースターさん」
「対処法は?」
今更、知らない男が話しかけてきてもいちいち私かどうかを確認されなくなった。
この調子で敵スタンド使いが接近してきていたらと思うと不安なのだが、今考えることではないな。
まずは目の前の敵、ラバーズを何とかしなければならない。
そう、ハンサム顔はイエローテンパランスで、スティーリーダンのスタンドがラバーズであった。危ない危ない。
エンヤ婆の体から弾かれた後、未来ある少年を危険にさらしたくなかったので、私はすぐに別の大人の体に入り、家電店に走った。
ラバーズに襲われたのであれば、そこにジョースターさんたちが来ると踏んだからだ。
ラバーズ戦で記憶にあるのは承太郎側の描写だ。
最後にはツケの領収書だぜ、となるわけだが、そうなるまでにジョースターさんの頭の中をなんとかしなければならないわけで。
ただ結構無茶苦茶やりやがったなあ、という戦闘も覚えてはいる。
ジョジョにはそんなのありかよ設定が結構あるが、その一つだ。
「君ら2人のスタンドを小さくして脳に入るしかないだろう」
「げえーっ」
スタンド個別の能力でなく、スタンドを縮小できるというのは、ラバーズ戦でしか見たことがない気がする。
そうするメリットがなかったと言えばそうなのかもしれないが。髪の毛一本も動かせないような非力な状態になってしまうのだろう。
だが今回に限って、ラバーズを倒すのに大した力はいらない。
「ジョースターさんごめん……」
「お前さんが謝ることではないわ」
ジョースターさんもだが、承太郎にも謝らなければならない。
今頃、スティーリーダンにいびられて、大変なストレスをためている頃だろう。早く何とかしなければ。
私はエンプレスの情報を先んじて彼らに伝えることで、ジョースターさんが医者の殺人容疑で指名手配されるのを防いだ。
だが今回スティーリーダンに承太郎が強盗でも命じられれば、承太郎が指名手配されてしまう。
未来ある若者にそんなことさせてはならない。勝負は早くつけなければ。ジョースターさんの脳細胞も心配だ。
「あるいは……ジョースターさんが私に体を預けてくれるなら、もっとスムーズにいくかもしれない」
「何?」
「私は操っている人間の体を、元の持ち主よりも正確に把握することができる」
ジャスティス戦からここまで、私はまるで役に立っていないのだ。
今更、己のスタンドについての情報を出し渋るのは、恥を上塗りしているのと同じだ。
「つまり脳だとか、血管だとかに生じている異常も、極小レベルで察知できる。敵スタンドの居場所を探れる」
入った体に、本人も気づいていないだろう疾病を見つけるのは常のことだ。
動脈瘤や脳腫瘍、がん細胞なんかは非常に多い。まだ助かりそうであれば勝手に病院に行ったりしてあげることもある。
普段体をオートマで操作している場合には、体内の疾病には気づけないのだ。
ラバーズは極小のスタンドで、おそらく今は脳に入り込み悪さをしている。概念としては疾病、腫瘍に近い。私にも場所がわかるはずだ。
「だが、スタンド使いは操れねえんだろ? ジョースターさんに入るのは無理じゃないのか」
「それはスタンド使いの意思が強く、私という異物が弾かれるからだ。だが、スタンド使いがその意思で、私を受け入れてくれるというのなら、私がその体を操ることもできるだろう。どうする?」
ジョースターさんの返事はすぐだった。
私の目をまっすぐ見つめ、右手を差し出してくる。
「信頼する。頼んだぞ」
「あなたを裏切らないと誓うよ」
私は彼の信頼にこたえなければならない。
ジョースターさんが差し出してきた手をしっかりと握り、スタンドを使った。
「少し待ってくれ」
集中できるよう座りなおすと、ポルナレフが私の顔を見て驚いた。
「うわ。確かにジョースターさんじゃねえんだな。表情からして違う」
「やろうと思えばもっと上手に真似できるよ。やってる場合じゃないだけだ」
「へえ。今度みせてくれよ」
「体貸してくれるならね」
「俺をお前に貸したら俺が見れねえじゃねえか」
馬鹿話をしている暇はないのだが、つい乗せられてしまった。
「操られてる間、ジョースターさんの意識ってどうなってんだ?」
「さあね。戻ったら聞いてくれ」
体内に意識を集中しているため、返答が雑になってしまう。
「見つけた。前頭葉の右側だ」
「って言われてもわかんねえぜ」
「道案内をしよう。すると、君たちの位置をハーミットパープルで映したほうがいいな」
ここは電気屋の前だ。
もともとジョースターさんはこうしてラバーズの場所を発見する腹積もりだったのだ。私がやってしまっても構わないだろう。
私は義手で電気屋の展示ガラスをぶち破ると、その中にあったブラウン管テレビにハーミットパープルを巻き付けた。
ジジ、とテレビ画面にノイズが走り出す。
「うおっ、ジョースターさんのスタンドまで使えるのか!?」
「私も初めて知ったよ、本人の意思で体を預けられたことなんかないからね。そこを右上だ」
テレビ画面はすぐに安定した。
小さくなったハイエロファントグリーンとシルバーチャリオッツはすぐにジョースターさんの脳内へと入っていく。
脳内でラバーズはすぐに見つかった。
途中、ジョースターさんの細胞をこねて身代わりにしようとする小賢しさを発揮してきた。
しかし、ジョースターさんの体内は現在私の
ラバーズは
「おい、逃がしていいのか?」
「我々よりずっとお冠なやつがいるでしょう。少しくらい花を持たせてやらなければ」
花京院が気遣ったのは承太郎のことだ。
遠隔操作型――というわりに、個別に自我をもって喋っているようであったラバーズも性格の悪いことを言っていたが、やはり親に似たのだろう。スティーリーダンの悪辣さと言えば、私も紙面でよく覚えている。
「だがよ、ジョースターさんの念写やこいつの能力がなけりゃ、いくら承太郎でも脳内に入られたら戦えねえんじゃないのか」
「わざわざ頭に入れてやりはしませんよ」
花京院がハイエロファントグリーンの触手を細く伸ばしているのに、ポルナレフはようやく気付いて「アッ」と言った。
もう決着はしっかりとついている。もうラバーズは
「私は承太郎の様子を見てこよう。ジョースターさんに体を返すよ」
街中に人間は多い。瞬く間に人と人の体を通り抜けて、私は承太郎とスティーリーダンが向き合っている場所にたどり着いた。
それから、瞬く間に、ジョースターさんたちのところに戻ってきた。
今回ばかりはさすがにもう危機はないだろうと、一番近くにいた男児の体を借りて、ジョースターさんの近くにしゃがむ。
「なんじゃ?」
私だとわかってのことかはわからないが、聞かれたのでへらりと笑って答える。
「ちょっと怖くなって戻ってきてしまった。承太郎って、怒るとあんなに怖いんだな」
「僕も巻き添えをくらいそうで、寸前でハイエロファントを離してしまいましたよ」
肩をすくめる花京院は、承太郎の怒気をその目で見ていないから平気でいられるのだろう。
マジで怖いわ。絶対に敵に回したくない。
彼らの敵に回らなくてよかった。最悪肉の芽でも埋められていたら可能性はあったわけで。
やはり本体の素性を隠すというのは安全上大事だ。
ファンのミーハー精神でオラオララッシュを見ようというのがよこしまだったかもしれない。
リアルでは見ていられないな。暴力過ぎる。
1月17日にDIOが消滅するのでそこに合わせて完結を……と思って書き始めたが、今計算したら絶対無理やないか エジプト上陸してるか怪しいわ