「陽が落ちなかったらスタンド攻撃だ」
「陽?」
「太陽のスタンド使いがいる。砂漠の中、鏡張りの車でついてくるだろうから、周囲をよく見て警戒しておいてくれ」
「鏡張りの車ぁ?」
そりゃ確かに、「鏡張りの車ぁ?」と言いたくなる気持ちは大変理解できる。
だが事実それがそのまま追ってくるので、これ以上の説明はない。
スタンドを使って情報を集めている際、私は特注された鏡張りの車をすでに見ている。
特徴的すぎる車だったので、この周辺にあるだろうと目星をつけていれば、見つけるのも簡単だった。
あいにくスタンド使い本人の姿は未だ見ていないが、まあ、車ごと始末してしまえば済むだろう。
先んじて私が車を処理しておくという手もあったが、そうするとスタンド使いが次にどういう手を使ってくるか読めなくなる。
ここは原作通りに敵をつぶしてもらうのがもっとも安全だろう。
「ここから砂漠の旅路だ。疲れそうだから私は別ルートで追いかける。まあ頑張ってくれ」
「なにぃ~っ。お前さん、そんなズルできんの」
「ずっとズルやってきてるんだよ、君たちが進むルートってちゃんとついていこうとするときっついんだもの。私は
人と人の体を通り抜けるようにして先に進んでいけば、私の意識は車や飛行機よりずっと早く移動することができる。
とはいえ、もしこの旅が無事に終わって日本に帰ろうと思うのなら、それなりの時間がかかる。
海の上には人がいないから、日本に帰ろうとする人間の意識を間借りして日本に上陸するしかない。
まあ、一般的な旅路と同じくらいはかかるだろうな。この旅が無事終わり、そんな風にして家に帰ることができればよいのだが。
「それじゃ、あとで会おう。サンのスタンド使いのことは任せたが……次のスタンド使いこそ、襲撃に間に合うと宣言させてもらう」
残りのタロットカードは4枚。太陽、死神、審判、女教皇だ。
数が絞られていることもあり、能力や順番も正確に思い出せる。
鏡張りの車で追跡してくるだけの太陽は彼らに任せることにして、次は死神だ。
デス・サーティーンが襲ってくるだろう場所には必ず間に合うように、目星をつけて待機しておきたい。
なにしろ夢の中で戦うことになる。助言も救助も難しい状況だ。慎重に動かなければならない。
「おい。気負いすぎるなよ。今までだって十分役に立っている」
彼らしくない発言だと思ったのは私だけではなかったようだ。
花京院も意外そうな様子で言った。
「承太郎がそんなこと言うのは珍しいな」
「無理して死なれちゃ困るというだけだ」
いなくなって困ると言われるのは、かなり褒められている気がする。
「安心しなよ。もし私が君たちの前に現れなくなったのなら、それは死んだのではなく、怖くなって逃げ出したってだけのことだ」
そう思ってもらうくらいがちょうど良い。
私は正体を明かしておらず、本体を置いてきている以上、彼らに私の生死を確認する方法はない。
結局スタンド能力のすべても話していないのだから、どんな条件で私が
ならば死んだと思わず、途中で怖くなって尻尾巻いて逃げ出したのだと思っていて欲しい。
別に私は誰かの心の傷になりたいわけではない。
聡い承太郎は私の言葉の裏を正確に読んだのだろう。
私が死んでも気にするな、死んだとすら思わなくて良い、という意味を。
「なら逃げ出すな。最後までいてもらわなくては、DIOの弱みを知れないからな」
それはきっと、私のことを信頼してくれたという意味だ。
DIOの弱点を私が話せば、きっともう、皆が信じてくれるのだろう。
だが今この場で話し出すのは無粋な気がしたので――私は笑みだけ残し、スタンドを使ってその場から去った。
まあ作者は曇らせ小説好きですけどね