夢から目覚めれば、夢の記憶は保持されたままで、私が借りていた男性の体は元気そのものだった。
花京院がデスサーティーンに指示してそうさせたのだ。それからデスサーティーンの本体――マニッシュ・ボーイを確保した。
起きて早々、乳母の力を借りて逃げ出そうとしていたので、私は
「承太郎たちのところに行きたかったんだろう? 一緒に行きましょうね」
「あ、あ……あぶぅ~……!」
赤ん坊のひきつった笑いは初めて見た。
「これがスタンド使いだぁ? にわかには信じられねえな」
私の情報源の多くは原作の知識から来ており、根拠を証明することが難しい。
スタンド能力を使って集めた情報も、私が見聞きした、ということだけが根拠であることがほとんどだ。
信じられない、と言われたら私はお手上げだ。
「僕が保証しましょう」
花京院がそう言ってくれて、私は心底安堵した。
「君がいて良かった、花京院」
「こちらの台詞ですよ。あなたがいなければここで全滅していたかもしれない」
「それほどか」
承太郎が鋭い目でマニッシュ・ボーイを見る。
相変わらず赤ん坊らしからぬひきつった笑みで「あぶぅ~」と言う赤ん坊は異質だが、それほど脅威には見えない。
「スタンド使いの組合を作るべきだな」
「組合?」
「スタンド使いに悪いやつが多いのは、悪いことが簡単にできてしまうからだ。取り締まれる人間がいない」
よっぽどの善人でなければ、誰にも見えないスタンドを持っていれば、自分の利益のために法律をちょっとくらい犯すものだろう。
あの承太郎でさえ留置所にいたころには様々な窃盗を――あの承太郎というのがおかしいか。札付きの不良だ。法くらい犯す。
「悪いことをしたら強いスタンド使いがお仕置に来るぞ、となれば大人しくなるだろう」
悪いことにも程度がある。
ちょっとした窃盗くらいは見逃せても、殺人なんかは許容できない。
J・ガイルのような輩が、現状野放しになっているのである。
警察に捕まえられなくとも、同じスタンド使いであれば捕まえられるかもしれない。
「悪いことをしたときに発覚しないのも問題なのではないですか。スタンド使いでなければ現行犯逮捕できませんよ、見えないんだから」
「それもそうだなぁ」
「お前が監視をやればいいんじゃねえか」
承太郎の提案について考えてみる。
「ふーむ、一理あるが、私の意識はひとつしかないからな。複数人をずっと見張るのは無理だね。定期的なパトロールというなら可能だ」
「DIOという脅威が去ったとしても、スタンドがなくなるわけではない。そういった自治は必要かもしれんのう」
法律で解決できない問題だ。
当事者である以上、完全な放置はできないだろう。正義感のある集団なわけだから。
「スピードワゴン財団か、ジョースターさんがポケットマネー出して雇ってくれるなら考えてもいいよ、スタンド使いの監視。なにしろ私の本体はごくつぶしだからな」
「うわ、嫌なこと聞いたぜ」
「勝手に失望するなよ。私は病弱なんだぜ。肉体労働できる体じゃないんだ。入院費用くらい自分で稼ぎたいとは思うさ」
「ちなみに今はどうしてるんですか?」
「親」
「すねかじりだ……」
「うるせえ~。かじりたくてかじってないわ」
やろうと思えば私だって盗みなんかはし放題だ。
だがやらない。私の良心が痛む。それこそ親に見せる顔もなくなる。
スタンド使いってだけで苦労してるんだから、少しくらいメリットがあってもいいもんだとは思うんだけどな。
感想欄で名前の候補やヒントを上げてくださりありがとうございます。
素晴らしい発想の数々を見て改めて己のセンスのなさに愕然としており、最初に適当な名前つけとかなくてよかったァ~あぶね~ッ。
このまま名乗らない可能性は全然あります。三部の間は名乗らないんじゃないかな。そしてこの小説は三部で完結させたいような。