人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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ジョセフ・ジョースター

 ジョースターさんがその辺の通行人を捕まえては「お前か?」と聞き始めたので、私は慌ててその通行人の体を借りた。

 彼らから話しかけられるという想定をしていないので、私と話したければこういう方法しかない、というのはわかるが――ひやひやする。とんでもなく不審者なのだ。

 これは花京院が野蛮な方法を発見したのが悪い。もっとこう、事前に私とコンタクトを取る場合の合図を決めておくとかさ。

 そういう相談をされたなら私も応じるのはやぶさかではないのだが?

 

「ここからしばらく、人のいない場所を行く。だから協力者を連れてきたんじゃ」

「協力者?」

 

 ジョースターさんに紹介されたのは、スピードワゴン財団の制服に身を包んだ青年だった。

 この世界における私の知識と、原作の知識を総動員するが――該当はない。本当に知らない青年だ。

 

「彼は君に操られても良いと言っておる」

「はあ!?」

 

 改めて青年を見る。何の変哲もなさそう――つまりスタンド能力者ではなさそうだ。

 無論、私はスタンド能力者の体にはやすやすと入ることができないので、ジョースターさんが()()()()()()連れてきたのなら無能力者ということだろう。

 

「まあ君は女性というから、本来なら女性の協力者を用意するべきなんじゃが、わしら全員男じゃからの。いろいろ問題があるからして」

「いや男でも問題があるのでは。ええと、倫理的に?」

「なにを言っとるんじゃ、いつもは無断で体借りとるんじゃろ。許可を得てる今の方がよっぽど倫理的じゃ」

「そ、それもそう……なのか?」

 

 うまいこと言いくるめられているような気もする。

 

「あー、一応、その辺で出そうなスタンド使いについて、事前に警告しておくということもできるけど……」

「お前さんがそれでいいというのなら構わんよ」

「構……構うなあ……」

 

 彼らのそばにいられず、なんの手助けもできない状態は、私の望むところではない。

 ホル・ホースの件以降一度もやっていないが、スタンド使いの体を一瞬借りて隙を作るという戦法。あれは彼らの近くにいなければ不可能だ。

 エンヤ婆のジャスティス戦で私は深く思い知ったが、私の原作知識は完全ではない。

 抜けがある。助言にも限度がある。

 だからこそ、近くで見守りたい。何か私にでもできる、わずかなフォローの道が残されているのなら、それを逃したくはないからだ。

 

 だから、ジョースターさんのこの申し出を断るという選択肢は、私になかった。

 たとえそれがどれほど危険で、善悪の判断がつかないことだったとしてもだ。

 

「本当に、後悔しませんか。私があなたの体を使っている間、あなたは勝手に危機に陥り、死んでしまうかもしれないんですよ」

「危険は承知の上です。あなた含め、味方のスタンド使いが周りに何人もいるほうが安全とも言えますね」

 

 彼が普段から、どれほど危険な任務に就いているかを容易に想像させるセリフだった。

 それもそうだ。この旅を支援するスピードワゴン財団の人間は大勢いるが、その誰もがスタンド使いではない。

 スタンドが絡む事象に一般人が首を突っ込むのがどれほど危険か、私はよく理解している。

 

「危険を冒すあなたの覚悟に敬意を表して、私も自分の能力について正確に話すよ。私は操っている体が強い意志を持って私を追い出したり、死んでしまったりして操れなくなると、その体からはじき出される。その時、すぐに別の体に入れなければ、私は死ぬ」

「なっ」

 

 明確な私の弱点だ。

 本体を見つけられていない状態でも私を殺すことのできる方法について、わざわざ語っている。

 

「だから、他に操る体のない状態で、あなたの体に入るのは、私にとってもリスクのある行為だ。だからこそ、私の命を懸けて、あなたの体を守ると誓いましょう」

「はい。私の体を、あなたに預けます」

 

 彼と固い握手を交わし、私はスタンド能力を発動した。

 普段より操りやすい気のする体の具合をおおよそ確認してから、私はため息をついた。

 

「はあ。もちろん今までだって、他人の体を使っている間に、それを粗末にしようなんて考えたことはないけどさ。今ほど慎重になったことはない」

「うむ。わしらも全力でお前を守ろうじゃないか」

 

 なんかときめきそうだった、今。さすがはプレイボーイだ、ジョセフ・ジョースター。

 私は操っている体を制御下におけるので、無論赤面するなどという失態を冒すことはないが、本体だったら血流が良くなっていたかもしれない。

 

「だが、この事は他の皆には言わないでくれ」

「なぜじゃ?」

「別に言わなくったって、私が使っている体が罪のない市民のものだということはわかっているだろう。彼らはこの体を見殺しにはしない。この情報のせいで、変に気負われてしまっては困るのさ」

 

 ジョースターさんに私の弱点を聞かせたのは信頼でもある。

 なんというか……今まで、私は死んでしまっても、誰にもそれがバレないつもりで戦ってきた。

 私の死亡条件を彼らは知らないのだから、私がひょっこり現れなくなっても、逃げ出しただけだと思うことができる。

 そんなあいまいな状況の方が気が楽だったのだ。

 だが、彼になら言っても良いかと思った。

 もし私が死んだら、それを察知してくれる人が、一人くらいいたほうがいい。そう思えた。

 

「ジョースターさん。私を死地に追いやったと思わなくていい。あなたのせいではなく、私が自分で選んだ道だ」

 

 協力者として、借りる体を用意したのはジョースターさんだ。

 私の死亡条件について聞いたとき、最も動揺したのもジョースターさんである。

 この提案をしたことで、私が危険にさらされると思ったのだろう。それは間違いだ。

 

「命がひとつしかないのは、本来誰でもそうだ」

「……ああ。そうじゃのう」




Twitterで「どうやってDIO倒せばいいんだ~!?」とか呟いてる自分、クソ雑魚クルセイダースがTLにいるみたいでウケる。
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