人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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モハメド・アヴドゥル(?)

 紅海にある島に船で向かう。

 そこで彼が待っているのだろう。

 

 モハメド・アヴドゥル。

 彼と別れてからそれほど経った訳ではないが、長い間会っていないような気さえする。私はスタンド能力で彼を探し出し、その安否を確認することもできたが、彼の能力と原作の流れを信じてそれをしなかった。

 その分、本当に無事なのか、ドキドキしている気持ちもある。

 

「おいおい、こんなところに人がいるのか? 無人島に見えるぜ」

「彼はここにたった一人で住んでおる。インドで彼はわしにそう教えてくれた」

「え何? インドでカレー?」

 

 ……あったなこんなん!?

 

 草むらから何者かに見られていることに、最初に気づいたのは承太郎だった。

 気づかれたことに気づき、逃げ出した男の背中をみんなで追いかける。

 我々が追いついたときには、男は掘っ立て小屋の庭で、鶏に餌をやっていた。

 

「丸々太って立派なにわとりになるんだぞライオネル」

 

 そうだ、私が覚えているアヴドゥル復帰、そのときに鶏に餌をやってたような、と思ったのはこれかぁ……。

 ジョースターさんは彼をアヴドゥルの父親だと我々に紹介した。無論父親ではない。変装したアヴドゥルその人である。

 

 真面目にギャグをやるのがジョジョだ。

 この変装は何かの役に立っているのか、とか言ってはいけない。

 実際アヴドゥルは死んだということにしたまま、敵に悟られず安全にここまで彼が来れたのも、変装のおかげなのかもしれないのだ。ほんとかぁ?

「何も聞きたくない!」と騒ぎ立てたアヴドゥルが掘っ立て小屋の中に去って行ったあと、ジョースターさんは神妙な顔で言った。

 

「息子の死を告げるのはつらいことじゃ……」

 

 ジョセフ・ジョースターは本気だった。それに応えるアヴドゥルの演技も本気だった。

 2人とも至極、真面目にやっている。

 

「ふふふ、はははは!」

 

 真面目にとんちきなことを言うので、私は爆笑してしまった。

 

「な、なにを笑っとるんだお前! 息子が死んだ父親の前だぞ!?」

 

 ポルナレフが本気で私の倫理観を疑ってきたのも、状況の面白さを増すだけだ。

 

「だめだ、ジョースターさん! こんなに面白いことをするのなら、事前に言っておいてもらわないと、あはははは! 笑っちゃってしょうがないだろ!」

「なんじゃあ、意外と笑い上戸だったんじゃな」

「いやこれは面白すぎるって! うわはははは!」

 

 ここでこの茶番を続けることで、ポルナレフによる「アヴドゥルが生きてたんだよ、オロローン!」を見ることができるが、すなわちそれはポルナレフと敵スタンド使いのタイマンバトルを許すということである。それは安全上看過できない。そして私は今、この場で笑いをこらえることができない。

 花京院と承太郎にやれやれという顔をされているのも視界に入っているが、借り物の鍛え抜かれた腹筋をもってしてもこの笑いはなかなか静まらない。むしろ2人がなぜ真顔を保っていられるのかが不思議だ。面白くないのかこれが!?

 

「ジョースターさん。これ以上の演技は必要ないですね」

 

 私の笑い声が無人島に響き渡っていたので、掘っ立て小屋の中からでも当然聞こえたことだろう。

 アヴドゥルは老人の変装をやめ、馴染みのある服装になって出てきた。

 

「あ、あ、あ……アヴドゥル!?」

 

 当然驚くのはポルナレフだ。

 

「久しぶり。元気?」

「もう背中の傷は平気なのか?」

「お互いここまで無事でなによりだったぜ」

 

 そして他の面々は全く驚くことなく、アヴドゥルに再会の挨拶をしている。

 

「死んだ奴が生きていたというのに、なんなんだその日常会話は!?」

「ポルナレフ、すまなかったな。インドでアヴドゥルを埋葬したと言ったのは、ありゃ嘘じゃ」

「なっ……な、なにい!?」

 

 そうか、埋葬したとまで言ったのだったか。その場面は見逃したようだ。

 

「撃たれた私を治療してくれたのはジョースターさんと承太郎、そして彼女だ」

「アヴドゥルが生きてることを知ってたのに俺に黙ってたのか!? 花京院てめえもか!?」

「すまない。まさかこんなに君が傷つくとは」

「てめえら仲間はずれにしやがって!」

 

 ポルナレフは口が軽いから黙っていよう、と提案したのは花京院だ。だからポルナレフがショックを受けていることに、少しは責任を感じているのだろう。

 だがポルナレフは口が軽そうというのは皆同意見だったし、ハングドマンの件でポルナレフが独断専行したことにちょっとイラついてもいたので、意趣返しの意味もあり黙っていることにしたのだ。

 

「オメーもいつまで笑ってんだ! 全部知ってたんだなあ!?」

「そりゃ知ってるだろ、敵のスタンド能力だって知ってんだぞ私は! あはははは! アヴドゥルの演技と変装がそんなにうまいのは知らなかったけどな!」

「光栄だ」

 

 光栄だじゃないよ。面白すぎるんだって。

 騒ぎ立てるポルナレフを無視して、私は笑いをひっこめ、アヴドゥルを見つめた。

 

「会いたかったよ、アヴドゥル」

「私もだ」

 

 私たちはハグを交わした。笑いが落ち着いて、会えた喜びを改めて思うと、少しテンションがあがってしまったのである。

 アヴドゥルにサイドハグ*1に持っていかれなくてよかった。

 

「お前らに至ってはいつのまにそんな仲良くなってんだよ!?」

「なんだポルナレフ、まだ彼女のことを信用していないのか?」

「んなこたねえけどよ!」

 

 んなこたねえんだ。初めて知った。

*1
ハグを求めた際、相手がお前とはハグをする関係じゃないと思った場合、肩や腰だけ組むハグ=サイドハグに変えられる。超気まずい。




主人公について
自称女性で病弱。親は存命らしい。職業・すねかじりのごくつぶし。
恥ずかしがり屋・シャイを自認しているが、借りている体を完全に制御化におけることを利用し、会話中赤面もしなければ汗もかいていない、どころか真顔でいることが多いので、その性格にはあまり気づかれていない。
動物が好き。子供は守らねばならないと思っている。口癖は「無論」。
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