人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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カメオその2

 DIOの能力を告げて、少し肩の荷が下りた。

 スタンド使いについての情報は、知っていることが知られれば、襲撃方法が変わってしまうリスクがあるが――ことDIOに限ってそれはないだろう。彼は拠点を動かないはずだ。

 だから本当ならいつ伝えてしまっても良かった。むしろ、できるだけ早く伝えるべきことだ。

 

 それができなかったのは、信じてもらえないかもしれないという私の不安、弱さ故だ。

 なんというか、これまでの旅で、私はジョースターさんに体を託されるほど信頼されていると思えたし、花京院とは結構仲いいと思ってるし、アヴドゥルとはハグもできたし、ポルナレフには「信じてないわけじゃない」って言われるくらいだし――うん、そう、結構、信じてもらえたのではないかと、ここにきてようやく思えたのだ。

 承太郎についてはちょっとよくわかんなぁい……。

 だが承太郎の警戒心が高い方が旅の仲間にとっては助かることだし、信じてもらえていなくともいい、と思ってさっき言ったのだ。

 

 話した感じ、ある程度信憑性はあると思ってもらえたはずだ。これで少しでも原作が変わればいいが、私の仕事はまだまだある。

 旅の仲間を最も殺したのはD()I()O()()()()()からだ。

 その彼についての情報は、迂闊に口にできない。彼はまだ()()()()()()()()()()()のだ。

 何をどう伝えてよいのか精査している。彼を倒すにあたって、人間のほうが良いのか吸血鬼であるほうが良いのかは判断しかねるが――例えば私がここで「彼は吸血鬼になっているかもしれない」とでも口にして、それを聞いたDIOが確かに吸血鬼の方が都合が良いなとあらかたのスタンド使いを吸血鬼にし始めたら困る。でも夜間以外警戒しなくていいから逆に――いや、絶対困る。

 これどうしようかな、と私はウンウン頭を悩ませ続けているのだ。スタンド能力についてだけの助言ならばセーフなのか?

 

 ところで、私は他人の体を制御下に置くことができるが――無論それは動揺していない時に限り、感情が大きく揺らぐと笑いを収めるということでも困難になる――人間の生理現象までなくすことは不可能だ。

 つまりずっと同じ体を使っているのなら、食事をとらなければならないし、睡眠も必要だ。無論排泄も。

 というわけで私が仮眠をとっていると、なんだか騒がしくなり、気になって顔をのぞかせたらこれである。

 

「アヴドゥルの生体探知ですぐだった」

 

 知らん間にジャッジメント戦終わってる。

 

「情報がなければ手こずっていただろう。感謝する」

 

 まったくの無傷であることは喜ばしいが、やけにあっさり過ぎるのもなんだか不安になる。大丈夫だよな、倒したと思っていたのが実はジャッジメントの影武者で、本物は別の場所で奇襲に備えて――とかないよな?

 そういうのがないか、この目で確認したいからこそ、私は彼らの旅にぴったりくっついていたいのだ。だから文句を言った。

 

「あのなあ承太郎、アヴドゥル。そういうことする前に一言声かけるとかあるだろ」

「お前に言っても何も変わらん」

「なんか傷つくな! 情報全部言ってあるから正しいんだけど!」

 

 承太郎にばっさり切られたので、私はでかい声を出してしまった。

 私にあるのは情報収集能力と、完璧ではない原作知識だけだ。

 戦闘能力を求められていないのは正しいことだが、なんだか遺憾である。なんか、なんかさ……足手まといみたいじゃんかさ……。

 

「花京院は行かなかったのか?」

「あなたとポルナレフが寝てましたからね。こちらを襲ってくる場合もあるかと思いまして」

 

 そして知らん間に護衛されてるなぁ……。

 やはり居場所が割れているというのは厄介だ。私のスタンド能力の長所がかなりなくなる。

 

「ポルナレフはまだ寝てるけど……ジョースターさんは?」

「明日の移動手段の最終確認をしに行った」

 

 承太郎が「アヴドゥルもだが、あのジジイ」と言った。

 

「それについてやけに隠したがる。なにか妙なことを企んでるんじゃあなかろうな」

「はっはっは。ただのお茶目だろう」

 

 アヴドゥルはそのお茶目に付き合いすぎだ。いまだに思い出し笑いしそうになる。

 

「君はもちろん()()を知っているだろう?」

 

 アヴドゥルに聞かれ、私は頷く。

 

「そりゃね。だが口は割らないよ。ジョースターさんのサプライズを既に一つ潰してしまったからな」

 

 つまりアヴドゥルの生存ドッキリだ。

 次の潜水艦ドッキリくらい付き合ってあげよう。

 

 潜水艦ごしに襲ってくるハイプリエステスを警戒して、せめて溺死のリスクを下げるため海上を進む船をオススメするべきなのかもしれない。

 でももう用意してあるしな……という諦めと、原作と大幅にズレることで余計に被害が甚大になることへの不安が、ドッキリを看過するに至らせた。

 

 あとは潜水艦に乗ってみたいというミーハー心と――船上で襲われたら横に泳いで逃げなければならないが、潜水艦で襲われたら上に浮上して逃げるので、そっちのほうが泳ぎが下手でもなんとかなりそうだな、という気持ちである。

 かなづちではないが、そんなに泳ぎはうまくない。

 かなづちでは……たぶん、ないはずだ。病弱なのもあって、この体に生まれてから泳いでないんだよな……。

 他人の体を借りてわざわざ泳ぐほど水泳好きでもない。この日のために水泳かダイビングを練習しておくべきだったかもしれない。

 縦と横ってどっちが泳ぎやすいんだ? 縦の方が難しいのか? 体から力抜いたら浮かぶって聞いたけど、泳がなくても縦に移動できる?

 素人すぎてなんにもわかんなぁい……。ちゃんと聞いておこうかな、ジョースターさんはダイビング経験者だったはずだ。

 

 そもそも座礁前提なのがよくないのかもしれない。

 大破しない乗り物だってあるだろう。

 グレーフライのときの飛行機は墜落させてしまったが、私の働きによって、偽テニール船長の時の船は守ったし、デスサーティーンの時の飛行機も守ったんだ。今回の潜水艦も守れるさ、きっと。

 

 ……フラグすぎるかもしれない。




戦闘描写をするのも好きなんですが、ここまで戦闘シーンをカットしてきているので、最後までおおよそはそれでいこうかなと。
描いたとしても直接殴り合うの主人公じゃないし、俺は主人公がボコボコにされるのを描くと興奮するから戦闘描写をするのが好きなわけだし……。
情報で戦う主人公である以上、敵をナレ死させるのが最も活躍している状態だと言えるのでは。
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