人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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さすがにあんまりかなと思い、2話投稿。


ミドラーその3

 エジプトの海岸に到着したジョースター一行に、声をかける人影が一つ。

 

「スタンドでの会話で失礼するよ。なにしろ歯が全部折れていてね」

 

 女は片手を降参するように上げながら、もう片手で口元を隠していた。

 というのも、宣言通り口が見るに堪えないほど悲惨なことになっているから、配慮してのことである。

 

「お――お前、まさか!」

「ははは。今更そんなに驚かれるとなんだか面白い。みんな無事でなによりだ」

 

 面白がれたのもそこまでだった。割と本気で、承太郎がキレている。

 承太郎は怒ると怖いので、私はしっかりと真顔に戻った。

 

「悪かったよ、ごめんね。生きてます」

「てめえ、冗談も大概にしろ」

「承太郎。これは冗談でも言い訳でもないぜ。私のスタンドはさっき()()()()

 

 私だって、あの場で本当に死んだと思ったのだ。だが生きている。

 

「私のスタンド能力では今まで、人間の体にしか入ることができなかった。だが、先ほどの危機を通じて、人間以外の動物の体にも入れるようになった。海中にいる生物――魚の体を通り抜けて、私は地上までやってきた。ちょうどよく海辺に気絶したスタンド使いがいたから、今はそれを借りている」

 

 つまり、さきほどまで襲ってきていたミドラーの体を借りている。

 失神していれば、スタンド使いの体であっても操ることができるからだ。

 アヴドゥルが感心したように頷く。

 

「より頼もしくなったな」

「ま、動物の体には人間の思考を処理するだけの脳みそがない。その体に居続けたら思考能力がなくなって、いずれは自分を見失うだろうね。実際死だ――自分は元から魚だったと思い込んだまま、海を泳ぎ続ける羽目にならなくてよかったよ」

「怖ぇ~!」

 

 今まで、動物の体の中に入るなど試したことはなかった。

 本能的に、先ほどポルナレフに説明したような、脳の容量問題があるとわかっていたからだ。

 だが、私は生きるか死ぬかというギリギリの状態で、いちかばちかを試してみることにした。

 すなわち、動物の体の中に入って、自我を保っていられるかわからないまま冒険に出た。

 結果、私は危機の中で精神的に成長し――短時間であれば、考える力の足りない動物の体の中でも、強い意志を持ち続けることができる、と証明されたわけだ。

 

「ふふ、君たちとの旅はなかなか楽しいよ。それなりに生きたが、これ以上自分の能力に新しいことを発見できるとは思ってなかった」

 

 私のスタンドは、発現したそのときから、今と同じくらいには能力を使用できていた。

 だから成長性は自己判断でEというところかな、と思っていたが、今回の出来事でDくらいはもらえるかもしれない。

 

「……ちなみに何歳?」

「んー、それを教えるとな。年下だとわかるとなめられそうだし、年上だとわかると必要以上に頼られそうだし。年齢不詳で通すのが都合がいい」

「ずりぃ~」

 

 好奇心から質問してきたポルナレフが不満そうな顔をする。

 だが私にだって言い分がある。

 

「いいだろ、ちょっとくらい得したって。思いたい年齢だと思えよ」

「じゃあ……98!」

 

 私って仙人の部類だと思われているのか。

 すると、ポルナレフがしたり顔で私に指を突きつけてきた。

 

「ショックそうな顔したなッ! それより若いと見たぜ!」

「ポルナレフ、そういうカマかけをやるならもっと小さい数字でやるべきだ。全然絞り込めていないぞ」

 

 花京院の指摘は尤もすぎた。

 私も神妙な顔をして頷いてみせる。実際カマかけには引っかかったわけだ。

 

「バレてしまったか……私が97歳以下であることが……」

「じゃあ70か!?」

「ポルナレフが私のことをどう思っているかはよくわかったよ」

 

 現実的な範囲の年齢でババアだと思われているようだ。

 別に遺憾でもない。ちょっと面白いだけだ。主に花京院がやれやれという顔をしているのが。




ミドラーのこと大好きなのに「てめえはこの空条承太郎が、直々にぶちのめす」「ちと、カルシウム不足のダイヤモンドだったようだな」「恋に落ちる……か・も」の名言全部ぶっ飛ばしてしまった。まったく、主人公が死んだせいで。
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