一行は無事、船長に化けていたスタンド使いを排除したようだ。
しかし私の助言が遅かったのか、承太郎はフジツボによる攻撃を受けてしまったし、最終的には水中戦に持ち込まれてしまったので、大して役に立てたわけでもなさそうだ。
自分の存在意義に思い悩んでしまいそうである。やはり口だけの人間はいる意味もないということだろうか。凹む。
船には爆弾が仕掛けられていたが、実はそれは、ここまでの航海中に船員の体を借りた私が取り除いておいた。
無論、爆弾解除の方法など知り得ないので、柱や床にダクトテープで貼り付けられていた爆弾をべりっと引き剥がして、そのまま海にポイ、である。不法投棄ごめんなさい。
外し損ねた爆弾があったら結局船は沈んでしまうかな、とハラハラしていたが、運の良い事に私が見つけた爆弾で全てだったようだ。
ちなみにこのタイミングで旅についてくることになる家出少女は、密航する前に私が発見して告発しておいた。
私のスタンド能力の性質から言えば、いつでも操り放題な人間の体が一行の近くにあるというのは大変な利点なのだが、それをやってしまえばとんでもない外道に落ちてしまう気がした。すでに落ちているかもしれないが、気分の問題だ。
これでも私は極力子供の体を借りるのを避けている。大人だからと操っていいわけでは当然ないが、やっぱりこれも気分の問題だ。
そのまま次の目的地へと着いたら私もわざわざ彼らに話しかけなくて済むのだが、と思っていたら目の前に巨大な船が現れたので、私の想いは踏みにじられた。
霧の中を進むこの船の進行方向に突如現れたため、あわや衝突しそうだったが、それはスタープラチナのパンチで防がれた。巨大な船の外側は、そのせいでやや凹んでいる。
一行は不審な船を怪しみながら、この船に乗り込むかどうかを話し合っている。
私はその会話に、先程とは別の船員の体を借りて割って入った。
「あ、失礼。うかつに乗らないほうが良いよ。あれスタンドだからね」
「うおっびっくりしたぁ!」
「ああごめん、近かった?」
「近さより唐突さだよ! お前、人の体乗っ取った時にもっとこう、合図とかできないのかって」
「失礼、ってちゃんと声かけてるつもりなんだけどな」
ポルナレフの言い分によれば、私の声掛けは不足しているようだ。
しかし、それ以上に私にできることもあるまい。慣れてもらうしかないだろう。
「で、あの中にスタンド使いがいるのか?」
「そうだね。チンパンジー……あ、オランウータンだっけ? 猿がスタンド使いだよ」
「はあああ!? ンなことあるかよ!」
「あるんだなあそれが。きみが思っているより世界はずっと広いよ、ポルナレフ。猿がスタンド使いでも別段驚かないでしょう、アヴドゥルとジョースターさんは」
「う、うむ、まあのう……」
アヴドゥルとジョースターさんは、事前にアメリカで1匹の犬を捕まえているはずだ。イギーというスタンド使いの犬を。それを知っているのなら、動物のスタンド使い、という概念も受け入れられるだろう。犬より猿の方が人に近いから納得感もある、気もするし。
「うっそでぇ!」
「にゃにおう! わしはお前よりずっと長生きして世界を知っとるんじゃぞ!」
イギーを知っているとはいえ、猿のスタンド使い、という単語に懐疑的だったジョースターさんだが、ポルナレフに煽られたことで信じる側に立つことにしたようだ。こういうお調子者な一面は私には助かる。
花京院は、私が初めに言った「信じなくとも聞くだけ聞く」のスタンスをとっているのだろう。私に続きを促した。
「スタンド能力は?」
「あれだよ、あれ。船そのもの」
「はっあああ!?」
ポルナレフも驚きのリアクションが大きいので、私は好きだ。この調子で私の自尊心を満たしてほしい。
「ストレングス。具体的に言えば……そうだなあ、鉄とかを操る……? いや、船かな、船を操ってるのか。それからスタンドのパワーで実際よりも船をずっと大きく見せてもいる」
「それほどまでの強いパワーを持っているのか? 容易には信じ難いが……」
アヴドゥルは船を見上げ、その大きさを確かめた。
ポルナレフは私への疑いを隠そうとしない。
「この船って乗員たちにも見えてんだろ? じゃあスタンドじゃねーだろ」
「物質一体型のスタンドというのがある。船という物体を基盤にしてスタンドを使用してるから、スタンドユーザーじゃなくとも見えるのさ。このあと襲ってくるだろうスタンド使いにも似た様なのがいる。そっちは車だけど」
「しかしこれだけの大規模なスタンドとは……にわかには信じがたいが」
「うーん、でもその場合私が嘘を言っていた方が助かるんじゃないか? この船がスタンドだってのが嘘なら、君たちは強大なスタンド使いと戦わなくて済むんだからね」
信じてもらえなくても、最悪彼らなら何とかするだろう。原作の彼らは初見プレイですべてを乗り切ってきているのだ。
死人が出る戦いでなければ、私の助言は信じてもらえなくともいいだろう。
私が彼らから信頼を得なければならないのは、死人の出る戦いの前までだ。タイムリミットまではもう少しある。
「じゃ、お前が言うには、俺たちはどうすればいいんだ」
「うかつに乗らないほうが良いとは言ったけれど、乗らないわけにはいかないだろうね。慎重に乗りなよ」
「なんじゃそりゃ!」
私は情報を出すことはできるが、どうやって戦うのが良いかという戦術を考えることはできない。
なにしろ生粋の非戦闘要員だ。戦闘に関しては彼らの方がずっと専門だろう。そこに口出しして犠牲を増やしたくはない。
とはいえ、どうすれば良いのか、自分の考えを述べるくらいはしておこう。
「本体をなんとかするしかないだろう。あの船に質量があるのは確かだし、さっきみたいに何度も突っ込んでこられたらさすがに次は沈められてしまうかも。さっと乗って猿だけ殴ってきなよ。あー、確か体ごと船の中にもぐるような真似もできた気がしたから、見失わないようにね」
「言うだけ言いよってからに」
「大変申し訳ない。人の体を借り続けてるのも申し訳ないのでここらで退散するよ」
「あっ、逃げんな!」
失礼、逃げます。
と言っても、実は近くの別の船員の体に移っただけだが。その状態のまま気付かれずに振る舞うことくらいならできる。実際、今のところほとんどずっと彼らの傍にはいたが、気づかれてはいない。
私のスタンドの射程距離は
ネットフリックスの字幕、ポルナレフの台詞の前に(ジャン)と表示されているのがいつまでも新鮮に面白い。