人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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オインゴ&ボインゴその1

「悪い、失礼、マジでごめん、ちょっと色々あってね、君たちから離れていたんだが、襲撃に間に合わなくてごめん」

「ゲブ神のことなら、承太郎が倒したぜ」

「ゲブ……ああンドゥールか、それじゃなくて、そのあと」

「そのあとだと? だったらわしらは襲撃されとらんが」

「ならよかった」

 

 DIOに認識されてから、私は動揺した。

 というのも、DIOがどうやって私を認識したのか、その方法がわからないからだ。

 対話の機会があったのだから、そこでそれを聞くべきだった。彼のペースに完全に飲まれてしまった。

 再びコンタクトをとる機会を窺ったが、しばらくDIOの館への侵入は難しそうだった――いつだって餌の人間が中にいるというわけではないのだ。とくに私という存在が明らかになってから、当然彼らも警戒している。

 そう思えば、私が体を借りた女性は、DIOの餌ではなく私を誘き出すための餌だったのかもしれない。

 館内にスタンド使いでない人間が1人しかいなければ、私はその人間の体にしか入れないのだから。

 

 アヴドゥルが疑問を呈した。

 

「我々が襲撃されたという根拠はなんだ?」

「スタンド使いが近所に入院してたから」

「はあ!?」

「その様子じゃ気づかず撃退したんだな」

「そんなことあるか!?」

「あるだろう。例えば私から襲撃されたらどうなる?」

「困る」

「違くて。え? いや、困るんじゃないよ、一般人に襲われた程度で困るな、しっかりしろ」

 

 あなたが一般人であるかはともかく、と花京院は前置きした。

 

「一般人に擬態して襲われていたら気づかないかもしれませんね」

 

 そんな前置きは必要ない程度には私は一般人だが、ともかく。

 続けて花京院が質問したので、私はそれに答える。

 

「参考までにどんなスタンド使いだったんです」

「変装と未来視だ」

 

 近所の病院に入院していたのは、オインゴ・ボインゴ兄弟だ。

 

「すべての未来がわかるわけではない。自分に有利な未来であるとも限らない。漫画形式で表示された未来は解釈の幅があり、上手くやらないと自分が追い詰められる場合もある。変装はとてもうまいから、君たちもこれまで気づかなかった。今回は運良く自滅してくれて助かったね」

 

 各々、変装した人間の心当たりを探しているようだ。ここまで考え込まねばわからぬとは、オインゴ――こっちが兄であってるっけ――の変装能力は確かなものらしい。

 

「あ! お前の様子がおかしかったときがあったな」

「私?」

「変だったよな、ジョースターさん? 急に敬語が下手になったり、腹が痛いだの言い出したり」

「そうじゃったかのう」

 

 絶対それだろうが。

 私は操っている体で、わざわざ痛覚を感じたりしない。

 もし操っている体が腹を下していたとしても、痛いとは言わずにもっと冷静でいるだろう。

 最悪その体が社会的な尊厳を失う前に私は体から脱出するし、トイレ程度で必死こいたりしない。

 

「言っておくが、君たちに会うのは久々だからな」

 

 アヌビスをしれっと処理したのもそうだが――DIOが拠点の位置を変えようとしているのを察知して、しばらくそっちに張っていたのだ。

 

 その結果がDIOからのダイレクト勧誘なわけだが。

 しまったな、きっと今頃彼らは拠点を移しているだろうし、私はその特定を一からやらねばならない。

 原作ではどうやってDIOの館を見つけていたのだったか。イギーか?

 ともかく、私は情報を得るくらいしか取り柄がないのだから、これくらいは働かなければなるまい。

 

「イギーと会うのもヘリコプターぶりだ。元気かい? あまりポルナレフを虐めてやるなよ」

「アゥ」

 

 イギーはだるそうに鳴いた。

 結構リラックスしているようでなによりだ。過酷な旅だが、イギーなりに普通にやれているということだろう。

 

「お前、この犬のことも知ってたんだな? しかもやけに仲良いみてえじゃねえか。躾られねーのかッ」

「イギーは賢い犬だから、真剣に話せば話を聞いてくれるよ。ポルナレフの誠意が足りないだけでは?」

「はああ!?」

 

 ポルナレフが初対面の時に舐めた態度をとったから、舐められないようにイギーだってやり返したのだろう。

 基本は紳士な犬なのだ。人の毛髪をむしり取って顔に放屁している様を見ると、それを信じられなくなるが。

 

「しかし、変装ができるのに()()()()()私に化けたのか。変なことをするものだな」

 

 何があってそうしなければならなくなったのかは、彼ら兄弟に話を聞かなければわからないだろう。

 それに関しては後で本当に聞きに行く。確か、弟の方だけはもう一度襲ってくるはずだ。

 せっかく未来の敵の居場所が割れているのだから、説得なりトドメなり、やれることがある。

 

「わかっている限りを事前に伝えておこう。この先襲ってくるだろうスタンド使いの能力は他に、磁力、氷結、若返り、心を読む、空間を削る、幻覚」

「待て待て待て一気に言われてもわからん!」

「そう言われると思って今まで一気には言ってこなかったんだが、すまないちょっと急いでいてね、もう一度離脱するし次も間に合わないかもしれない。できるだけ早く帰ってくる。次は磁力か若返りの能力者あたりが襲ってくるんじゃないか、他はあまり拠点を動かないからね」

 

 私が今できるざっくりとしたアドバイスといえばこれくらいだ。

 万が一敵の誰かが聞いていても対策の取れないようにと考え始めると――うーん、難しいね。

 

「とりあえず、コンセントと影に触るなよ」

 

 私は一息にそれだけ伝えると、再びスタンドを使って移動した。




どんどん情報と対応が雑になっていく主人公
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