ジョースターさんとの話し合いはスムーズに進んだ。
マニッシュ・ボーイの際に私がちらりと話した、スタンド使いによる自治について、真剣に考えていてくれていたのである。
さらに詳しくは、スピードワゴン財団の代表も加えて行う必要があるので、旅の間中は難しいかもしれない。
いやあ、よかった。もし私がこの旅を生き延びたとすれば、初めて就職先ができそうである。
身元を隠したまま給料をもらう方法については後から考えよう。
「ジョースターさんに提案なんだが、こういうことができないかと思って」
「なんじゃ?」
話し合いが終わった後、私はポケットに入れていたハンカチを開き、ジョースターさんに見せた。
中には一本の髪の毛が入っている。
「ここに一人の女の毛髪がある。これを使って彼女の位置を念写で発見することは可能だろうか」
「ふむ、そのような手掛かりがあれば、それなりの精度で可能だろうが……なんの必要があるんじゃ」
「敵スタンド使いだから」
驚きというより、呆れたような顔で見られた。なぜ。
「どっから手に入れたんじゃそれは」
「いや、街にいたから。泊まっていたホテルの従業員になって、ベッドメイキング」
妙齢の女性だ。野宿などしない。
我々に奇襲を仕掛けようとしているのなら、彼女も最近この街にやってきたよそ者であるはずだ。
旅人風な人間に目をつけ、私のスタンドで町中うろうろ探せば、見つけられるものだ。
特に、宿に山を張ったのが良かった。
あるいは彼女が適当な民家を襲い、そちらを拠点にされていたら見つけられなかったかもしれない。
「彼女は磁力を操るスタンド使いで、スタンドに触れることが能力の発動条件だ。触れた人間は磁力がどんどん強くなり、金属を引き付けるようになる。刃物が飛んでくれば危険だし、最終的には車なんかに押しつぶされるかもしれない」
そういえば、雑な忠告だけして詳細を語るタイミングを逃していたと思い、きちんと説明しておく。
だが、本体をたたけるのならばこの説明も不要かもしれないな。
「よかった、位置がわかるなら楽に倒せそうだな。彼女は中距離で戦うから、攻撃を受けたとすれば、距離を取ろうと逃げる彼女を追いかけなければならなくて大変なんだ」
スタンドの名前は相変わらず思い出せない――そして本体の名前もあやふやだ。
マライヤか、マライアだったような気がする。
サイゼリヤかサイゼリアだったら、正解はサイゼリヤだと自信を持って言い切れるんだが。
万が一スタンド使いの名前を求められたら、マライェァ……みたいな微妙な発音をしてごまかすしかないな。
「すでにそれなりに近くにいるから、誰か襲われてないか心配だ。ジョースターさん、義手の調子が悪かったりしないだろうね」
「ム? なんじゃ、最近ギシギシ言うんだが、お前さんにも聞こえてたかね。油をささんといかんなぁ」
「……時計は壊れてないだろうね?」
「買ったばかりなのに針が止まっとる!? 不良品か!?」
「新手のスタンド使いだよ馬鹿野郎!!」
私はジョースターさんを連れて飛び出した。
いかん、私とジョースターさんで敵の正確な位置がわかったとしても、肝心の攻撃担当が誰もいない。
「コンセントに触るなって言ったじゃないか!」
「そんなもん触っ……! ……触ったのう。スイッチの形じゃったが」
「好奇心旺盛な爺だな! いいと思う!!」
「すまーん!!」
誰かー! スタンド使いの人呼んでー!!
「どうしたんです、ジョースターさんと……君だな? そんなに騒いで」
「アヴドゥル! よっしゃ当たりだ! 磁力のスタンド使いだから基本的に飛んでくるとしたら鉄とかだ、君なら融かせるな!?」
「敵か!」
アヴドゥルは即座に状況を理解すると、走っている私とジョースターさんについてきた。
向かっているのは電気屋だ。ジョースターさんの念写を正確なものにするのであれば、カメラかテレビが最適だからだ。
……と思ってたけどもしかして磁力を帯びている今は家電だとまずいか!?
その前に念のため確認しておかなければならない。後方を走るアヴドゥルに叫ぶ。
「一応聞くが、怪しいスイッチとか触ってないな!?」
アヴドゥルは一瞬考え込むと、そのまま手のひらで己の顔を覆った。
これ絶対触ってる人間のリアクション。
「好奇心旺盛だなあ! いいと思うけど!」
「すまない……」
誰かー! まだ攻撃を受けてないスタンド使いの人呼んでー!!
攻撃を受けたとすれば、距離を取ろうと逃げる彼女を追いかけなければならなくて大変なんだ(フラグ)
好奇心を利用して発動するスタンドだから、コンセントからスイッチに形を変えるくらいはできるんじゃないかな。この世界ではできるということで。