「わしらを見捨てるなんてひどいじゃないか!」
承太郎と、元の年齢に戻った花京院とポルナレフを引き連れて戻ったら、ジョースターさんに責められた。
「悪かったって、こっちもスタンドバトルになっていたんだ。若返る攻撃を受けてしまった」
「なんじゃそりゃうらやましいの~ッ」
「ジョースターさんに攻撃が当たってたら強くなってお得だったのにな」
第二部の主人公ビジュアルを拝みたかった。
「若返った私はなぜだか記憶まで持っていかれてしまった。というわけですっかりジョースターさんとアヴドゥルの記憶まで失ってて、すまん、ごめん、途中で投げ出す形になって悪かったと思っている」
私は持っていた敵の毛髪をジョースターさんに渡し、増援を呼ぶために承太郎たちを探しに行ったのだ。
そうしたらなんということでしょう、別の場所で承太郎たちも敵スタンド使いの襲撃を受けているところだったので、まんまとそれに巻き込まれた。
アレッシー戦に関しては決着をこの目で見届けたが、ジョースターさんの方の戦いがどうなったのかはわからずじまいだ。
無論、2人がこうして無事にここにいる以上、撃破できたのだろうが。
「恐ろしい敵だった、バステト女神は……」
そんな名前だったのか、マライェァ……のスタンドは。
あのアヴドゥルがそこまで言うほどの敵だったとは。これは私の不手際だ。
アレッシーに関しても、もっと詳しく情報を伝えられたかもしれない。
「すまない、すでに敵を捕捉していたのに。これだったら逃げられることを覚悟しても寝込みを襲っておけばよかったな。足でも折っておけば機動力が削げた」
私の判断ミスだ。
あそこで物理的な攻撃に出て、私が操る体が始末されることを恐れてしまった。
……それを恐れることは倫理的に間違ったことではないが、旅の安全を第一に考えている今、優先度を間違えた。
「やたら足折りたがるのはなんなんだよ……」
「足がなければ追ってこないし、逃げられない。狙うなら足だろ、ポルナレフも自分の足には気をつけろよ」
「俺の足も狙ってんのォ!?」
「なんでそうなる、敵に狙われるぞって話だろうが。私のこと未だに敵だと思ってんのか、傷つくぞ」
ポルナレフもイギーも足を怪我していた記憶がある。
機動力を削ぎたいというのは誰しもが考えることだ。
「だが、これでおおよその敵を撃破した。残りのスタンド使いはおそらく館の中で待ち構えている。あとはDIOを倒しに、館に行くだけだな」
原作における詳しい日程まで把握していないが、おそらくかなり短縮できているはずだ。
ホリィさんの容体は依然として良くはないものの、今すぐにでも死んでしまいそうだという話は聞いていない。
若干の猶予があるのだから、館に攻め込む前に作戦会議くらいはやってしかるべきだろう。
スタンド使いを倒した後だ、怪我の治療と休憩もかねて一度宿に戻ろうということになった。
「おい、待ちな」
珍しく、承太郎から呼び止められる。
もうすぐラスボス戦だ。主人公とのコミュの機会を逃すわけにはいかないだろう。
私は「なんだい」と承太郎の隣に立って、彼が話し出すのを待った。
「ポルナレフはてめえを老人だと思っているようだな」
「ああ。落ち着きのある人間はみんな年寄りだと思っているんだろう。ジョースターさんを近くで見てるはずなのに、不思議な発想だよな」
「ふっ」
えっ。今笑いました?
確認する前に承太郎が話し出す。
「セト神のスタンド攻撃を受け若返ったお前は、俺をJOJOと呼んだ」
「エッ」
あれ。もしかしてポンコツをやらかしたか?
若返っている間の記憶はある――そうだ、私は確かに承太郎を見てJOJOと言った。
しかも完全にやらかしたことに、私はそれを最も使用している言語――日本語で言った。
私は普段彼らと話す時、英語を使用している。それが共通言語だからだ。
ポルナレフとだけ会話するときはフランス語を使ったり、花京院と話す時は日本語を使ったりもする。
これは私の勉強の賜物だ。色んな体に入って、実際その国で過ごせば、言語はすぐに覚えられるものだ。
そういうアレだと思ってくれればいいのだが……どうですかね……。
「お前が何年若返ったかは知らんが、そのJOJOは俺じゃねえ。他のJOJOを知っているな」
「アッ……ワッ……」
ちいかわみてえな声しか出ない。
ここからどう弁解すればいいんだ私は。泣いちゃうしかないのか。
「問い詰めたいわけではない。俺が勝手に納得したというだけの話だ」
「ちなみに何を納得したの、カナ……」
「お前が命を懸ける理由だ。ジョースター一族の誰かを昔から知っているのなら、DIOとの因縁があっても不思議じゃねえからな」
そういうもんなんすか。
それが見当違いだと否定してもいいものか。
何だかよく分からないが、承太郎が納得して、私になんだか良い感情を向けてくれているというのなら、そのままにしておいても良いのか。だがあとから真実がわかった時に、誠実でないと詰められないだろうか。
「承太郎。私は君の血縁じゃないし、吸血鬼ハンターでもないぜ」
「フン。答え合わせが楽しみだな」
本当に、問いつめる気はないらしい。
私は肩の力を抜いた。承太郎から尋問されたらすぐゲロってしまいそうだから怖い。
「だが君の味方だよ。正直、旅のメンバーの中で誰をいちばんに守るかって言われたら承太郎、君だ」
「要らん」
「手厳しいな、実際そうだろうけど」
二番目が花京院だ。やっぱり未来ある若者から守らねばという気持ちがある。
三番目にイギー。犬はかわいいからな。
「でも君より守りたい人がいるから、君に不利益になることもする。不誠実を許さなくていいよ」
「俺は守ってもらわんでいい。そいつを守りな」
「ありがとう。でも君はまだ未成年だし、大人に守られるべきだ」
これだけしっかりしているし、とてつもなく強いが、彼はまだ高校生だ。
一応大人として、彼を守る責務というやつがあると思っている。
「俺はお前を、赤ん坊かなにかなんじゃあねえかと思ってたんだがな」
「こんな赤ん坊いたら嫌じゃないか?」
「嗚呼」
嗚呼じゃないよ。
「てめえがやたらに赤ん坊のスタンド使いの肩を持ったからだ」
「ああ。そりゃ同じように、若い命だからだね。こどもは大事にするべきだ」
どれだけ邪悪だろうが、まだほんの少ししか生きていない命を殺すことは私には難しかった。
デスサーティーン戦は私の頭を大いに悩ませた。
最も安全をとるならば、間違いなく赤ん坊を殺すのが正解だ。
しかし赤ん坊を生かすならば、懲らしめるために戦わなければならない。
その結果、未成年の花京院を危険にさらすことになったわけで、あ~クソ、だから私に戦闘能力があれば、こんなことで悩まなくて済むのに。
「お前の守りたいやつも子供か?」
「それは内緒だ。でも恋人ではないと言っておこう。愛と情熱に生きると思われたらなんか恥ずかしいし」
「その感覚はわからん」
ジョースター一族はみんな愛と情熱に生きて、一人の女性を愛し抜くらしいし(ジョセフは除く)、それもそうか。
承太郎も、愛と情熱に生きる人間を恥ずかしいとは思わないだろう。未だ最愛の人を見つけていなくとも、彼自身が愛に生きる人間なのだ。
私だって情熱的な人間を見ても恥とは思わないが、でも自分がそういう人間だと思われるとなると話は別なわけで……うん。
私はとにかく、シャイなのだ。