人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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ケニーG

 意外にも、テレンス戦は一度で勝負がついた。

 私の魂が入る用の人形を用意してるんじゃないかと思ってちょっとわくわくしていたのだが、それは見れずじまいだったな。

 

 流れとしては、原作通り。役者が変わっただけだ。

 原作では、プレイヤーの承太郎と、裏で代わりにコントローラーを握ったジョースターさんだった。

 今回はプレイヤーの私と、代わりにコントローラーを握った花京院だったというだけである。

 

「しかし意外じゃのう。お前さんがテレビゲームを嗜むとは」

「私は病弱でね。外で走り回って遊ぶようなことはできないから、テレビゲームは結構好きさ」

 

 別にそういう理由がなくとも、もともとテレビゲームは好きだ。

 アクションよりパズルゲームの方が好きだけど、花京院はアクションの方が好きらしい。

 テレンスと決着をつけたのは格闘ゲームだった。

 

「花京院とはたまにそういう話をしてたぜ」

「ええ。いろんな国のゲームを知っているので彼女の話は面白い」

 

 話が好評でよかった。

 私が日本のゲームを知っていることも、やはりオタクだからという理由で見逃してもらえそうだ。

 テレンスと戦った格闘ゲームを選んだのは私だが、以前に花京院がプレイしているという話を聞いていたからそれを選んだのだ。

 

「しかし、いつのまにイカサマの仕込みをしたんだ?」

 

 ポルナレフの疑問に答えてやる。

 

「『ジョースターさんと花京院の命は守らなきゃな』、だ。私がなんでわざわざそんなこと言ったと思う」

「仲いいから?」

「……ポルナレフ、私君とも仲いいと思ってたんだけど、その認識は改めたほうが良いか?」

 

 2人だけ贔屓すると本気で思われていたんならショックだ。

 私が贔屓するとしたらイギーである。犬はかわいいので。

 

「2人さえ残っていれば後々勝てるだろうと踏んだ。コントローラーをこっそり握れるスタンドは、体を伸ばせるハイエロファントグリーンか、茨状のハーミットパープルだ」

 

 私がわざわざ指名してその2人を残したがった意味を、花京院は正確に読み取った。

 過去、デスサーティーン戦の際にも似たような理由で、2人にだけ指示したことがあるのも理由かもしれない。

 だからイカサマは言葉を交わさずとも、一度ですんなり成立したのである。

 

「テレンスは心が読めるが、誰がプレイヤーかわからなければ、心を読むべき相手を見誤る」

「そういうことか!」

 

 手を打って納得したのはポルナレフではなく、アヴドゥルだった。

 

「安心してくれアヴドゥル、君ともちゃんと仲いいと思ってるからな」

「ああ、いや、そこを心配したわけではないのだが、うむ。なにか意図があるだろうとは思っていたが、詳しくはわからなかったのでな」

 

 アヴドゥルがちょっと照れた風であった。もしかしてマジでハブられたと思ってたのだろうか。

 だとしたら申し訳ないが、かわいいものである。承太郎はそんな心配をしてくれてないのに。

 

「結局私も館の中に入ってしまった。……あ、イギー、そこ」

「イギィーッ!」

 

 私がふと気づいて言うと、イギーは私が言う前から気が付いていたようだ。

 すでにザ・フールを出しており、対処は終わっていた。

 我々がテレンスと戦っていた場所は、南の島に見えるような頓珍漢な場所だった。

 それが見る見るうちに、普通の室内に見えるような場所に代わっていく。

 

「なんだ!?」

「敵」

「はあ!?」

 

 事実をそのまま伝えただけなのに、ポルナレフは素っ頓狂な声を上げた。

 イギーが唸りをあげている先――ちょうど角になっていて今いる場所からは確認できない――をアヴドゥルが見に行くと、「たしかに人間だ」と見えたものを報告してくれた。

 私はイギーにお礼を言って、そうして次のお願いをした。

 

「そのまま塵を周囲に巻き上げていてくれるか。いつ襲撃があるともわからないから」

「ウゥ」

 

 しかたねえな、という唸り声での返事であった。

 

「どうやって気づいたんです?」

「イギーは鼻が良い。私はスタンド能力の関係上、能力の範囲内にいる人間の数がわかる」

「能力の範囲内だと? 見える範囲にいないと使えないんじゃなかったかね」

「あはは。いやいや、ジョースターさん」

 

 まさか本当に()()()()()()と思っていなかったので、つい笑ってしまった。

 

「『次に操る人間は、今操っている人間の視界に入る()()()の距離にいないといけない』と言ったが、別に視界に入っていないといけないとは言っていないぜ」

「おっ……まえさんなあ! またそういう言葉遊びか!」

「敵を騙すにはまず味方からだな~ホント」

「騙す理由も適当か!」

 

 だが、この誤魔化しはおそらく有効だった。

 私はダービー兄を撃破した後、弟についても助言している。

 その際、弟のことを「兄によく似たスタンドだ」と称した。

 そして戦う前、テレンスは「あなたは私と兄のスタンドが似ているとお思いのようですが」と、確かに言ったのだ。

 いつ、どこまでかはわからないが、私の言うことは敵に聞かれていると思って良い。

 

 だから今から話すことも、こんなにギリギリになってからしか言うことができなかったのだ。

 

「承太郎、最後にお願いがあってね――DIOの日記を見つけても、中身を見ないままに焼いてくれ」

「なぜだ」

 

 私は、承太郎の目をまっすぐに見た。

 

「理由は、私には説明できない。だから、()()()だと言ったんだ。これは忠告ではない。判断は君に任せる」

 

 承太郎は、私の目をまっすぐに見た。

 

「たしかに聞いたぜ」




テレンスとはそもそも戦わなくても良かったという大ガバ
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