人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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DIOその1

「ああ、お助けください!」

「なんだぁ?」

 

 DIOの館に再突入する前に、奥から女性が息も絶え絶えといった様子で走ってきた。

 お助けくださいと言いながら、屋敷から一歩も出ないあたりでお察しである。

 全員がわかった顔をして、スタンドも使わずにタコ殴りにしてみせた。

 

「ど、どうして俺の無敵の能力がバレたんだぁ~!?」

「両手が逆だなあ」

「ハッ!」

 

 これでどうやって無敵だとイキれるのか不思議だ。

 この吸血鬼は、体の背面に女の体が縫い付けられたような姿をしているというだけだ。

 背中の女性の姿で油断を誘い、殺すということだろうが、これは一般市民にしか通用しまい。

 スタンドはスタンドでしか攻撃できないという鉄則があるのだ。

 スタンド使いにこの程度の能力で挑んでくるのは、さすがにノータリンというとこだろう。

 

「こいつを案内人にするか?」

「どうせ大したことは知らないだろう。DIOは棺桶の中にいる、とかくらいじゃあないのか」

「な、なぜそれを知っているんだァ~!?」

 

 吸血鬼なんて大体棺桶の中にいるだろ。これは私の偏見か?

 なんにせよ、さすがにこんなやつよりは私の方が詳しい。

 DIOの館を特定した時点で、もともとの館の内装がどうであったかくらい調べてある。

 その情報は幻覚のスタンド使いを撃破するまでは役に立つものではなかったが、今は十分参考になるだろう。

 DIOが自分の棺桶を置きそうなところといえば、まあ高いところかな。

 そのあたりを目指せばよい。

 

 おそらく私の気配察知や、アヴドゥルの生体探知、イギーの嗅覚でもDIOを探せるだろう。

 それができないのはヴァニラ・アイスだけだ。

 とはいえ、探知不可能な範囲から、一気に時止めで近づいてくるリスクは十分にある。

 

「では、要らんということだな」

 

 承太郎のスタープラチナが、吸血鬼にオラオララッシュを叩き込む。

 しばらく暴力が場を支配したが、承太郎は少々眉を上げると、攻撃をやめた。

 

「死なんぞこいつ」

「そら一応吸血鬼だからな。ヴァニラ・アイスと同じ」

「一緒にするんじゃない、このヌケサクよりあっちのが何百倍も強かったわい」

 

 死にはしなかったが、瀕死のような状態にはなった。

 回復が追い付かないのだろう。ボコボコの顔のまま、ヌケサクは言う。

 

「ど……どうしてわたしのあだ名がヌケサクだとわかったんです?」

「……やれやれだぜ」

 

 本当に要らないので、ヌケサクはジョースターさんが波紋で灰にした。

 別に腹の底からザマミロ&スカッとサワヤカの笑いが出てくることはなかった。

 さて、ラスボス戦前の息抜きにはなっただろう。気が抜けたという方が近いか。

 

 そうして、DIOの棺桶が置いてある部屋に向かったとき、その男は棺桶の中に入るでもなく、その場に立って我々を迎えた。

 

「こ……こいつが! この男が!」

「すべての元凶……」

「DIO!」

 

 私は彼を見ても、ジョースターさんの言うドス黒い感覚というものを覚えることはない。

 ただ、心臓が圧迫されるような威圧感と、鳥肌が立つような恐怖に体が支配される。

 

「私の能力はすでに知っているな? だとすればなぜ、勝てない戦いに挑むのだね」

 

 私がDIOの能力を十全に伝えたためか、DIOは原作のようなふざけた行動はとらなかった。

 階段を上ろうと思っていたら下っていたということもなければ、棺桶を開けたやつが棺桶の中にぶちこまれることもない。

 だからこの調子で、腹に穴をあけた花京院が時計をぶち壊すような事態にもならないはずだ。

 

 外は明るい。

 DIOが吸血鬼である以上、室内での戦いが強いられる。

 それだけでも、ほんのちょっぴり、きっと原作よりこちらが有利だ。

 

「君こそ私の能力は知っているんだろう。ここまで全部言い当てて、戦いに勝ってきた。どうして自分が勝てると信じられるんだい、DIO」

 

 DIOに勧誘されたあの時よりは、ずっとマシな強がりを言うことができた。

 なにしろ私は今、一人ではない。

 誰も欠けていないままの、スターダストクルセイダースとともに、DIOに対峙している。

 それは私の自信になり、不安を和らげた。私は己の知っている未来を変えて、ここに立っている。

 

「では死ぬしかないな」

 

 DIOがそう言って――時が止まる。




タイトルをDIOにするかヌケサクにするかで随分悩みました。
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