【3部】ジャン=ピエール・ポルナレフの勉強
「しょうがないなポルナレフ。私がナンパを手伝ってやる」
「はぁあ?」
ラバーソール襲撃への警告がうまくいかなかったため、私はポルナレフのナンパを妨害する形になった。
それに彼が随分とすねているため、私はそう提案したのである。
「お前にナンパができんのぉ?」
「結構得意だぜ。やったことないけど」
「だったら得意だっつー根拠はなんだよ」
根拠を示したほうが良いか。私は少し考えた。
「ふーむ。じゃあやってみよう。まず私が今借りている男の顔だが、どのくらい格好いいかね」
「普通だな。俺様には全然及ばんね」
「では、この男で成功すればポルナレフでも成功するということだ。見ていろ」
見ていろ、と言った私だが、即座に動き出したわけではない。
まずは道行く人間の観察だ。人通りの多い道であるので、女性はそれなりにいる。
いけそうだ、と思う女性がいたので、私は建物の壁にもたれかかるのをやめた。
ふらりと彼女とすれ違う形を取り、彼女のポケットからはみ出していたハンカチに指をひっかける。
「失礼。落としましたよ」
「え? あら、すみません!」
私は落ちていたハンカチを拾う振りをして、彼女に話しかけた。
本当はほとんどスリ――ポケットから飛び出しかけているのをちょいと引っ張り出したのである。
ハンカチを受け取ろうと彼女が手を伸ばしたが、私はすぐに渡そうとせず、そのハンカチを自分の目の前に持ってきて、しげしげと眺めた。
「素敵な刺繍のされたハンケチーフですね。これをあなたが失くしてしまわなくてよかった」
「うふふ、お上手ね。その刺繍、私がやったんですのよ」
「なんだって? プロの作品だと思いましたよ! ああいえ、裁縫が仕事でしたか?」
「いいえ。ただの素人趣味ですわ。うふふ」
「うーん、見れば見るほど素晴らしい出来だ。お時間さえあれば、もう少しよく見せてはいただけませんか」
ここまでくればお茶に誘うくらいはいける。
私は唖然としながらこちらを見ているポルナレフにウインクして、女性を連れてカフェへと入店した。
と、いうのが実践編である。
私はそれなりに彼女との会話を盛り上げてから、スタンドを使ってその場を離れた。
そこに残されたのは、嬉しそうにお茶を飲む女性を目の前に、寸前の記憶を失った男であるが――あわよくば何かの出会いになると良いね。すっごく無責任だが。
別の男の体を借りてポルナレフの元へ戻ると、彼は興奮した様子であった。
「どうやったんだよ!?」
「見てたんだろ?」
「いや見てたけどよ、ハンカチギるとこから」
「ギるとか言うな、人聞き悪い。返しただろ」
私は借りた男がかけていた眼鏡を、これ見よがしにカチャッとやってみせた。
「で、私にナンパのコツを聞きたいのかな、ポルナレフくん?」
「聞かせてください、先生~!」
ノリのいい男である。
「ネタばらしするとスタンド使ってる」
「おい!? ここまで来て、オチは女操ってたってのか!?」
「やってるわけないだろ、私は意識を分裂できない。一人二役は無理だよ、私はずっと男の方に居た」
これには、私のスタンド能力について、改めて詳しく説明する必要がある。
「私のスタンドは人の体を乗っ取る。これには簡単な場合と難しい場合がある」
「スタンド使いが相手だと難しいんだろ?」
「そうだ。だが、根本的な理由としてそれは、スタンド使いの意思が強いからだ。スタンドを使えない一般人でも、強い意志を持っていれば操りにくい。逆を言えば、意志薄弱な人は操りやすい。操りやすい人間というのは、基本的にぼーっとしている。ぼーっとしているということはつまり、暇だということだ。やるべき急務がない。だから話しかけても、焦って切り上げようとはしない」
「暇な人間を見繕って声かけたってことか?」
「そうだ。私は能力の都合上、実際に乗っ取らなくても、その体が乗っ取りやすいかどうかは判別できる。あとは、意志薄弱ってことは言われたことそのまんま受け取る人が多いからね、褒めたらすぐその気になる場合が多い」
「カァーッ、なるほどなあ。でも俺にはお前のスタンドがねえからよ、意味ねえぜ」
ネタばらしを聞いてポルナレフは感心したが、同時にあきらめもした。
自分のナンパに役立つ話ではないと思ったのだろう。私は指をチッチ、と振った。
「だから、暇そうな人間を見極めるコツを教えてやろうか、という話だったんだが?」
「お願いします、師匠~!」
やはりノリのいい男である。
この後すぐインドで喧嘩するんだよなってコメントでウケてた。そうです。