「暇ですね」
「そうか?」
「僕たちは学生ですから酒も飲めませんし」
「おいおい、いつ敵に襲われるかわからん旅の中じゃ、わしだって酒は飲まんぞ」
一行は酒場に来ていた。
といっても酒を飲みに来たのではなく、まともそうな飯屋がここしかなかったという理由でここにいる。
そして当然私もここにいた。人が多い場所には潜入がしやすいので。
「クイズでもするか」
「うおっ、なんだ急に」
「
「それにしても急だろ。クイズぅ?」
私は給仕の男の体を借り、彼らに話しかけ、暇つぶしの提案をした。
「私は今から、この酒場の誰かの体を借りよう。注意深く観察して、私が一体誰の体に入っているか、当ててくれ。制限時間は3分。3分経ったら私が入った体で挨拶して、答え合わせといこう」
「おもしれーじゃねえか」
「ではスタートだ」
そう言った後、男はすぐにポカンという顔になった。
自分が見つめられていることに気づくと、おびえたように「は、はは……」と無理矢理愛想笑いをして、気まずそうにその場を去った。
「どいつだ!?」
ポルナレフが酒場中の人間の顔を見回すが、その誰にも目立つ異変はなかった。
何人か連れだっている人は全員、その集団の中で会話を続けているし、首をかしげているような人間もいない。
「そろそろ3分だな。正直言って全然わからんが、俺は斜め向かいのテーブルに座っている女に賭けるぜ」
「私もわからんが……彼女が寸前に、確かにそちらのテーブルの方を見ていた気がする。そして彼女は、女性よりかは男性の体に入っている気がするので、私はそっちの男にしよう」
ポルナレフとアヴドゥルが指したのは、彼らの座っているテーブルから最も近いテーブルの2人だ。
どうやらデートで来ているのか、仲睦まじく会話を重ねている。
花京院は、そのテーブルの反対、家族連れの席を指さした。
「僕は大穴でそっちの子供にしましょう。彼女は子供の体に入るのを嫌いますが、それは子供を危険に晒したくないからだ。今はお遊びで、そこまで危険がないと思っているから、入るんじゃあないですか」
「客だと思い込んでいるのがいかんのかもしれん。わしはあのバーテンダーの男に賭けるぞ」
これは賭けではないのだが。賭けてないよな?
私は他人の体を渡り歩いている関係上、現金は手元にないので、賭け金が発生していても支払い能力がない。
同時に稼いだとしても困るだけだ。金を持っておく体がないので。
「承太郎は?」
「どこにも行ってねえ」
承太郎は、確かに
「俺たちに、最初に問題を出した男のままだ」
少し離れたところで仕事をしている、彼らに最初に話しかけた給仕の男。
私は確かにその男の体を借りたままであったので、拍手しながら彼らに再び近づいた。
「ビンゴ。さすが承太郎、やるね」
「マジかよ! なんでわかったんだ?」
「わからん。ただ、誰かに移ったように誘導する性格の悪いやり方を、こいつならしそうだと思っただけだ」
「どっか行ったように見せてそのまんま中にいたってわけか。お前演技派だなぁ」
他人の体に入って情報収集をする以上、その人に成りきる演技力は必要だ。
大体は直前までの動きや、できれば話し方を確認してから中に入るようにしている。
特に、あらゆる人が、私が乗っ取るのをやめた直後のぽかんとした挙動は、何度も見てきている。
真似るのも簡単というわけだ。だから私が体を出て行ったフリをしたのだ。
それにしても承太郎にはすんなりバレてしまったな。
「性格読みか、参ったね。こうして君らと長く一緒にいるから、傾向も読まれてしまう。うーん、今まで友達がいなかったから、知らなかった弱点だ」
これは彼らを
私というスタンド使いがいることが、流石にもうバレているだろうから、DIO側にも警戒されている。
私がどこにいるか、探そうとして探せるものなのか――という試しだったのだが。
ポルナレフとアヴドゥルはまんまと私の視線誘導に引っかかってくれたが、花京院は私の癖をしっかり読んでいるし、ジョースターさんが言ったのも私がやりそうな手だ。
承太郎には完全に癖を読まれており、もう意外と、私が
「勉強になったよ。君らも少しは暇が潰せたかい」
「もう1回やろうぜ! 次はぜってー当ててみせる!」
「ポルナレフには無理だ」
「なんだと花京院、オメーだって当たってなかっただろうが」
回数を重ねるごとに不利になるのは私なのだが、まあ別に何も賭けてないし、もう少し付き合ってもいいかな。