人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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【3部】花京院典明の醜態

「実際、どこからついてきていたんです?」

「ん?」

「この旅に、ですよ。あなたが最初に話しかけてきたのは飛行機の中でしたが、もっと前から我々の近くにいたんじゃあないですか」

 

 花京院と話していると尋ねられたので、私は旅の初めの頃を思い出していた。

 

「それだったら、あれはちょうど折り返しでね。DIOの暗殺に失敗したから、仕方がなく、倒せそうな君たちに協力するしかなくなった。だからエジプトから日本に来て、君らの飛行機に紛れ込んだんだ」

 

 エジプトから日本への飛行機に紛れ込み、日本に到着してすぐ承太郎たちを探した。

 花京院の襲撃はすでに終わっており、彼らは旅立つ直前で、私は運よく飛行機での出発に間に合ったのだ。

 

「よかった」

「なにがだい?」

「いえ、醜態をさらしていなくて。ポルナレフの肉の芽は?」

「ああ、見たよ。飛行機でのコミュニケーションを失敗したから、どのタイミングで再び話しかけようかずっと窺ってたものでね。あの頃は今より熱烈に見ていた」

 

 私は言葉でしか介入ができないというのに、その言葉でのコミュニケーションに失敗したのだから、少々落ち込んでいた時期でもある。

 ポルナレフ戦を静観したのはそれが理由だ。

 花京院は己の額をなぞり、苦笑した。

 

「僕にも肉の芽を埋められていた時期がありましてね。とても見せられないような卑劣さでしたから」

 

 花京院が気にしていたのはそれか。

 思い当たって納得する。非常に言い難いが、訂正しなければならないだろう。

 

「すまない、花京院。肉の芽を埋められていた頃の君だったら見た」

「いつですか……」

「エジプトにいる時だ。そうか、君にとっては黒歴史か」

「黒歴史?」

 

 ……しまった、黒歴史という言葉はこの時代にまだない。

 日本語で会話をしていると、こういう時代にそぐわない単語を使ってしまうリスクがあるな。

 花京院と話しているとうっかりオタク用語を使ってしまうんだが、これを花京院のせいにするのはひどいよな。

 つい気を抜いて現代用語でトークしたくなるほど彼の話術が素晴らしい……というところに落ち着けておこう。

 

「黒く塗りつぶしてしまいたいほど嫌な過去という意味、かな。造語だから気にするな」

「面白い言葉の使い方をしますね」

 

 これで歴史が変わったらどうしよう。

 ガンダムが生まれなかったら私もショックだ*1

 肉の芽が埋められていた頃の花京院を思い出す。主にDIOの館で見かけた。

 

「ふむ。確かにあの場に馴染んでいたから、それでいうと卑劣漢か」

「黒歴史と言ったばかりなんですから、思い出さないでください」

「すまない。大丈夫だよ花京院。今の君が本当の君だし、私も今の花京院の方が好きさ」

 

 花京院は「調子のいいことを」とため息をついた。

 

「本当のところを言うと、肉の芽が埋められている間の記憶は非常に曖昧で、特にエジプトにいた頃のことはほとんど思い出せません」

「DIOの影響が強かったのかもしれないな。肉の芽は遠隔コントローラーのようなものだが、近くにいればいるほど力を増すのかもしれない。私も埋められたことがあるが――」

「待ってください。今なんて?」

「DIOの影響が強――」

「そこではなく」

 

 今一瞬コントみたいじゃなかったか?

 

「埋められたことがあるんですか、肉の芽を」

「ある。私の本体ではないので、その体から出た時点で効力を失ったが、私もDIOにコントロールされる気分ならわずかに味わったことがある」

「その際、DIOに何か情報を?」

「話す前に逃げた。幸い、元から肉の芽についての知識があったのでね。埋められたと感じた瞬間に別の体に移ったから間に合った。あれは間違いなく、君たちにとって一番の危機だっただろうね。私は君たちのスタンド能力についてよく知っているし、DIOより上手に君たちを殺す方法を考えられる」

 

 花京院はそこでようやく肩の力を抜いた。

 

「……ひやひやしました。あなたが敵になったら、それほど恐ろしいことはありません」

「ふふ、過大評価だよ。戦闘能力のない卑怯者くらい、君らならなんとかできるさ」

「それこそ過大評価だ。あなたを相手取れば我々も無傷ではいられない」

 

 まあ、確かに少しは謙遜だったかもしれない。

 私がDIOにつくのなら、最低でもエジプト上陸前にスターダストクルセイダースを3人以上は削りたいな。

 

「そうだな、花京院……君の傾向を見るに、肉の芽が埋められると悪党になるから、交渉が下手になりそうだ。会話でしか世界を変えられない私はそれだけで不利だね。敵スタンド使いたちと上手に連携が取れないと思う。悪党は悪党と仲が悪いものだ」

「あなたが見た僕ってどんなだったんです――いや、やっぱり聞きたくありません、言わないで、そして忘れてください」

「ふふ。ああ、そうだね。忘れるためにも、今の君のことをもっと教えてくれ」

*1
黒歴史の語源は1999年放送開始∀ガンダムのため




カメオその2で「花京院とは結構仲いいと思ってるし」と言っていたのの根拠の一つ
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