「失礼、ちょっと思い出したことがあったので追加したいのだが」
「……あなたですか?」
「私だよ」
通行人の女性を借りて、プールサイドで寝ころんでいた花京院に話しかけると、直ぐに私だと気づいたようだった。
私も両手を上げて、アイデンティティと無害さをアピールしておいた。
というか制服のままプールサイドで寝ころんでいる花京院はなにをしているんだ? まさか日光浴とか言わないよな。
「どこで襲ってくるかはまだわからないんだが、腫瘍のスタンド使いがいたなあと思ってね」
「腫瘍ですか?」
「正しくは寄生と言うべきか。人の体に寄生するスタンド……だったと思うのだよな。人面瘡ができたら気をつけてくれ」
「そんなものができたら、スタンドでなくともすぐ対処するでしょう」
「病院に行ったら医者を巻き込むじゃないか。とにかく頼むよ、言うだけ言ったからね」
人面瘡のスタンド使いは少女の姿に偽装した醜女……というのは覚えているが、どのタイミングで登場したのだか、記憶があやふやなのだ。スタンドの名前を思い出すことはできないが、タロットカードの名前だったように思う。つまりエジプトに上陸する前に襲ってくる敵だということだ。情報が後出しになってなんの役にも立てないよりかは、早めに情報を提供しておいた方が良い。
目的は果たしたので、スタンドを使ってこの場を離れようとしたが、花京院が「待ってください」と引き止めた。
「あなたは女性ですか、男性ですか」
「急にどうしたんだい、花京院。スタンド使いじゃなくて、私について聞くなんて」
「本当はずっと興味がありました。ただ、あなたはいつも敵について言うだけ言って去ってしまうので」
「あー、だから私がじゃあねと言う前に割り込んできたのか」
「ええ。それも答えられませんか?」
初めて雑談らしいものを振られたのだ。ここでこれを無視しては、あなたたちとは仲良くなる気はありませんよと表明しているようなものだ。信頼を勝ち取りたいと願っているのだから、この会話を避ける手はあるまい。
「そうだなあ。別にそれくらいは……構わないような気がするね。何しろ世界の半分は男で、半分は女でできているのだから。言ったところで私のことを特定できまい」
「ええ、いくらスピードワゴン財団の力を借りたとしても、性別だけで特定するのは不可能でしょう」
病弱でベッドの上から動けない、という情報までは出しているが、そんなものは男女問わず世界中の病院にいくらでもいる。問題なかろう。
「参考までに、花京院はどちらだと思っているんだい」
「僕は女性だと思います。承太郎も。ジョースターさん、アヴドゥルさん、ポルナレフは男性だと」
「なんで君以外の意見まで出てくるんだ?」
「賭けをしていましてね。で、教えてくれるんですか?」
「仲いいな君たち。それじゃ、花京院と承太郎に、おめでとうと言っておこう」
「やっぱり、女性でしたか」
「一応聞いておこうかな。私は男性のようだったり、女性のようだったりする?」
「どうでしょうね。僕はなんとなく、あなたから柔らかい物腰を感じたので」
「ははあ。承太郎は……聞いても教えてくれなさそうだな」
「はは、どうでしょう。今度聞いておきますよ。ポルナレフはあんなに色気のない女はいないと言っていましたが」
「ひどいな。わざわざ君に色気を振りまいていないだけだと言っておいてくれ」
花京院は口元を覆った。結構本気で笑っているようで、何よりである。
「アヴドゥルは話し方が硬いので男性的だと。ジョースターさんは勘だと言っていましたね」
「適当だなあ」
「でも、女性でよかったです」
「どうして?」
「あなたは旅に協力しながらも安全圏にいられる。女性が傷つくところは、見たいものではありませんからね」
「男だったら卑怯者ってなじってきたってわけかい。別に構わないけどね。女でも卑怯者だから」
「そうでしょうか。僕は卑怯者なんて思いませんよ。合理的で、適材適所だ。傷つかないということは、それだけ能力を使いこなしている証拠でもある。あなたの情報は僕らの旅にとても役立っています」
「紳士だなあ。ポルナレフが女だったら、傷つくのを悲しんでたってこと?」
「それは……面白くてそれどころではないな」
結構ウケているので、彼は紳士ではないかも知らない。
息抜きに書き始めた小説なので、発端は「原作参照して矛盾ないか確認する作業だるいな。そもそも俺はジョジョが好きなんだから、ジョジョなら何も読み返さなくても原作沿い書けるんじゃねえかな。やってみっか」という思い付きです。
うろおぼえで書き始めれば、転生主人公がやたら原作覚えすぎているという違和感を排除し、ほどよい原作知識で書けるのでは!? と思ったのですが、俺がキモオタすぎて本当にほとんど覚えていたので、その思い付きは失敗に終わるのでした。でもキャラとスタンド名はあんまり一致してない。前話のうろ覚えスタンド名はその思い付きの名残です。
うろ覚え二次創作、流行ってくれ。