「お話ししてもよろしいでしょうか」
私が声をかけたのは、かつて私に自らの意思で体を預けてくれた財団職員の遺族だった。
彼に妻はいなかったものの、父親と母親は存命であった。
その悲しみ様を見るだけで、彼がどれだけ愛され、良い人間だったかがわかる。
「彼を殺したのは、私だと言えます」
これからするのは懺悔だ。
「彼の命が危険になることを承知の上で、彼を死地に送り出しました。彼の死の責任はすべて私にあります。謝って済むことではないとわかっていますが、申し訳ありませんでした」
私は深く、深く頭を下げた。
謝るのは、自分が少しでも罪の意識から逃れたいからなのかもしれない。
だが、謝りもしないのは、もっと罪深いように思えた。
私が自分の保身だけを考えて、スターダストクルセイダースに対して死んだふりをしきらなかったのは、そうしてしまえば彼の葬式に参加する権利もなくなると思ったからだ。
「頭を上げてください」
そう声をかけたのは母親で、次に口を開いたのは父親だった。
「息子は立派でしたか」
「はい。間違いなく。彼は……私のために死んだと言っていい。私などよりずっと、彼に生きていてほしかったと、強く思います」
父親は涙ぐんで、私の肩に手を置いた。
「
私は今、ジョースターさんの体を借りていた。もちろん本人の許しを得て、である。
葬儀に来てくれてありがとう、と言われ、私は再び深く頭を下げた。
それからしばらく、私はジョースターさんの体から移り、別の参列者の体を借りて、少しぼうっとしていた。
「おおいたいた、お前さんじゃな」
「……普通に見つけたな、今?」
あんまり普通に話しかけられたものだから、私は驚いた。
ジョースターさんはしたり顔で言った。
「体を預けるのも2回目だからのう。見てすぐお前とわかる程度には信頼が芽生えたということだ」
「というのは建前で?」
「ハーミットパープルでちょちょいと」
「やはりあなたの能力も随分成長しているんだな。それとも今まではできないフリをしていただけか?」
「別に必要なかったとも言えるのう。全員に聞けばどれかはお前さんじゃし」
脳筋か?
それで解決できるほど、旅にずっと張り付いていた私も私なのか。
確かに彼らが間違った人に私として話しかけたとしても、その人物に私が入ってしまえば会話は成立してきた。
私が甘やかしたのがいけないのか……いや、こうして私を判別する方法が明確にある、とわかると心中穏やかではなかっただろうから、後から教えてもらうくらいでよかったのだろう。
DIOも似たような方法で私を判別したのだろうか。
「遺族への挨拶に付き合ってくれてありがとう、ジョースターさん」
「責任はわしにも同じだけある。殴られても構わんと思っとったが、彼に似て、いい人たちじゃったな」
「ああ。彼のことは忘れないよ。私が初めて、許可を取ったうえで体を借りた人だ」
「違うのう」
「ん?」
「初めてはこのわしじゃろーが! スタンド使いの体を借りるのは初めてと言うっとったじゃないか」
「ああ……言われてみれば、確かにそうだな。スタンド使いの体を許可済みで借りると、スタンドが使えるというのはそこで初めて知ったわけだし。では彼は2番目だったか」
なんでそんなところにこだわるんだか。
「では、墓参りのときにもまた体を貸してくれるのかい」
「構わんがね、それより本人が来たらどうじゃ」
「……耳が痛いな。もちろん、いつかはそうしたい」
私がジョースターさんに身元を明かせるような状態になって、かつ私の体調がアメリカへの長旅に耐えられるようになる、という条件はかなり厳しそうだ。
「少なくとも全身骨折中の今は無理だな」
「だから波紋でちょちょいとやってやろうと言っとるのに」
「要らん」
私は強く断ったが、若干心が揺らいではいた。なにしろ全身マジで痛いので。
でもこの時期にジョセフ・ジョースターが杜王町に来たらものすごく困るので、その選択は、絶対になしだ。