ポルナレフとアヴドゥルは、窮地に陥っていた。
イタリアという慣れない土地の中、危険なスタンド使いがいるという噂を聞き調査に来た両名だったが、その噂は確かなものではなかった。
危険なスタンド使いは確かにいた。だが、1人どころの話ではない。
確実に組織化された動きで、ポルナレフとアヴドゥルは静かに追い詰められかけていた。
かろうじて連絡の取れたスピードワゴン財団から、とある場所に向かってくれという指示を受け、2人はなんとか無事にそこにたどり着こうとしていた。
その場所は空港ではない滑走路で、そこに置いてあったのは、小型飛行機であった。
2人が近づけば、飛行機の中からパイロット風の男が一人降りてきて、片手をあげた。
「
「おいおい、お前か!? 飛行機の運転ができるなんて聞いてねえぞ!」
――というわけで、私である。
2人が窮地に陥っていることは私の知る由のないことであったが、彼らに用があったのでちょうど、助けに駆けつけることができた。
「ふふふ。結構前、ジョースターさんに教えてもらったんだ。役に立つ時が来るとは思ってなかったぜ」
全員が飛行機に乗り込んで、離陸してしばらく。
「しかし、すまないね。私はスピードワゴン財団に、イタリアにスタンド使いがいるだろうと話をしたが、それが一人どころではないって話、しそびれてたかな」
「いいや、複数人いるだろうって話は聞いてた。だが、その全員が徒党を組んでいるとは思ってもみなかったのだ」
「事態はもっと悪い。彼らはスタンド使いだから徒党を組んでいるのではない。ある組織に所属しているから、スタンドに目覚めた。無論、もともとスタンド使いだったものもいるだろうがね」
「矢か!」
「ああ。その一つが確実にここにある」
そう言い切れる根拠を掴むまで、彼らに情報を出し渋ったのがいけなかったのだろう。
エジプトへの旅路の中で、何度も後悔したはずなのだが、この慎重すぎる性格はなかなか直らない。
イタリアのスタンド使いへの対処がこの
私の体はひとつしかない。東方素子の生活もある以上、あまり体を留守にもできないのだ。
それから純粋に、パッショーネが手ごわいというのがある。
ボスの情報は当然つかめないし、それ以外の情報もなかなか難しい。
「矢があるなら回収しなけりゃならん。こっちももっと数を増やして対応するしかねえか」
「んー、まあ今すぐでなくともいいんじゃあないの。君ら働きすぎだし、ちょっとは休みなよ」
「おいおい、んな悠長なこと言ってっとよ」
「情報の少なさで負けかけた。なら再び挑むには、きちんとした準備が必要だ。急いてはことを仕損じる、という」
私の言葉に、ポルナレフも一応は納得したようだ。
「んじゃ、この飛行機はどこに向かってんだ?」
「ひとまずはスイスの空港だ。そこから乗り換えて、日本行き」
「日本だぁ?」
私は振り向いて、ウインクしてみせた。
「アヴドゥル。約束の日が来た」
「そうか! 君は今、日本にいるのだな」
アヴドゥルは喜んでくれたし、ポルナレフも嬉しそうに膝をたたいた。
「ついに会えんのか! おっまえ、本当に長いこと待たせやがって!」
「いやー、初対面の時に宣言したとおりだけどね。10年くらいしたら、と言ってたろう」
「有言実行にも程があるぜ。んじゃ、俺らが一番乗りか? お前に会うの」
「いや、花京院が一番だった」
「何ィ!? もう会ってんのかよ!」
それはもう、実は10年前に会っている。
わざわざ言う必要もないので黙っていることにするが。
「承太郎とジョースターさんも、もうすぐ日本に来る。彼らの方が到着は早いかな」
「じゃあ最後かよ。まっ、いいぜ! どんなツラしてるか楽しみだ」
「美人ではないのでそこには期待するなよ」
「美人だったとしても、性格がこれだって知ってるからなァ」
「君の命は今、私の手の中にあることを忘れてるんじゃあなかろうね」
「私のことも、忘れないでくれよ」
アヴドゥルも乗っているから、飛行機を墜落させることはできないな。
もちろん冗談で、本気ではなかったけど――しかし私がジョースターさんに運転を習ったというの、今更ながらに不安だな。
墜落のジンクスも継いでないだろうね。
「最近は結構調子いいからね。空港に迎えに行くくらい、できるだろう」
「無理はしなくていい。時間はあるのだ。会えるということがわかっただけで、十分だ。楽しみにしている」
本当にアヴドゥルはいいやつだ。飛行機は安全運転でいかせてもらおう。