待ちに待った、というべきか。
私はそんなに待っていなかったが、待っていたものもいるだろう。
「ちょっと先に行っててくれるか……後で追いつく。最悪、私の体じゃなくても許してくれ……」
私は、空港で死にかけていた。
アヴドゥルに、最近は調子がいいから空港に迎えに行けるだろう、と言ったのはフラグだったかもしれない。
「大丈夫ですか」
「ちょっと座れば落ち着くだろう。歩くのはしんどい」
花京院と、承太郎、それから車椅子のジョースターさんに、キャリーバッグに入ったイギー。
イギーは老犬になり、すっかり落ち着いて、キャリーに入れられようとしても大暴れすることはなくなった。
財団の人はたまに油断していると髪を引きちぎられるというので、その性格は健在らしい。
ジョースターさんはポルナレフとアヴドゥルに先んじて杜王町へとやってきた。
その際スタンド使いに襲われるということはなかった。なにしろスタンド使いを生み出す矢は、すでに回収済みだ。
だから私は彼らと一緒に空港に迎えに来たのだが――途中でダウンした。
ちょっと足のコンパスの差というのを舐めていたかもしれない。
それでも十分、私に合わせてゆっくり歩いてくれていたように思うが――いや認めよう。
私はちょっと歩くだけで死にかける貧弱な女だ。
古い友人との約束も守れねえ、情けないやつだ。くそう。
「だったらいい案があるぞ」
そう言ったのはジョースターさんだった。
それから――私は車椅子に座り、羞恥に耐えていた。
「御年78歳になるジョースターさんの車椅子を奪っている恥知らずは私だ……」
「わしが貸したんじゃよォ」
持ち前の病弱を発揮し、歩けなくなった私は、ジョースターさんが座っていた車椅子に座らされ、なんと承太郎に車椅子を押されている。
自分より圧倒的年上のお義兄ちゃんに車椅子を譲られるなどということがあってもいいのか。
ジョースターさんはこの歳になっても私より元気そうだ。嬉しいが、同時になんか悔しい。
私、第二部主人公に車椅子を譲られ、第三部主人公に車椅子を押してもらってるって……コト……?
逆に考えるんだ。借りちゃってもいいさと考えるんだ。
私は車椅子を借りることで、スターダストクルセイダースみんなでの再会に間に合うことができた。
それから、羞恥に身を震わせていることで、紙のように白い顔色を晒さずに済む。
赤面しているから、少しばかりは健康的に見えるだろう。そうだと良いな。
人込みの中でもお互い、すぐに見つけられた。
こちらは承太郎と花京院という背の高い美丈夫がいて、すでに周囲の女性がきゃあきゃあと騒いでいる。
ポルナレフは髪色と髪型で目立つし、アヴドゥルも日本の空港で十分目立てるくらいには服装と髪型が個性的だ。
走り寄ってきたポルナレフは一番に、私に声をかけた。
「お前か! ……本当にお前かぁ?」
「疑われても証明が難しいな。話すことで私だとわかっても、この体が本体だと信じさせられるわけではないものね」
「ああいや、喋ったらわかったぜ。これがお前かぁ……」
だから、話して中身が私だとわかっても、外身も私であるかの証明は難しい、という話ではなかったのか。
私が話し出せば、ポルナレフはすぐに納得した様子だった。
納得しているのなら、それでいいのか。いいことにした。
可能な限りの親愛をこめて、私は手を差し出した。
「東方素子だ。よろしく」
「クゥーッ! この自己紹介をずっと聞きたかったんだ!」
ポルナレフは喜びを噛みしめた後、私の手の骨が砕ける勢いで握手してくれた。
ちょっとマジに痛かったが、ここで言うのも無粋なので我慢した。
たぶん私が貧弱すぎるのがいけないので。骨の作りから違うのか?
ポルナレフは女性の扱いに慣れていそうなので、やっぱり私は普通の女性の骨より柔いのか? だからポキポキ折れるのか?
「喜んでもらえてよかった。尚更、DIOを倒した後に死んだふりしなくてよかったと思える」
「しっかし、こんなにガキだとはな。当時何歳だよ」
ちょっと聞き捨てならないセリフだなそれは。
「私は君と同い年だよ、ポルナレフ」
「なっ……なにぃーッ!?」
なんだその驚き方は。スタンド使いとのバトルでもあんまり見ない驚き方だぞ。
ポルナレフは私を上から下まで何度も確認すると、両手で口を覆って、驚愕を示す。
「ジャ……ジャパニーズの不思議、東洋の神秘ってやつか……ヨウカイ?」
「おい。それは誰に言ってもぶん殴られるぞ」
人を妖怪扱いするんじゃありません。
「うーん、これでも不健康極めてるから、日本人の年齢基準でいったら老けてる方だぞ」
「マジかよ!?」
「そんなことはないと思いますがね」
「あはは。お世辞お世辞」
花京院を指さして笑っておいた。
「アヴドゥル、会えて嬉しいよ」
「私もだ、素子」
こうして実際にアヴドゥルとハグをすることができて嬉しい。
私が彼らに会えるときというのはすなわち、仗助の存在が露見するときであったので、私にはかなり憂鬱なイベントとして数えていたのだが――やはり、こうして会えると嬉しいものだ。