人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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【3.5部】空条承太郎の帰還

「隣に失礼」

「……帰ったんじゃあなかったのか?」

 

 私がスターダストクルセイダースの一人一人に別れの挨拶をしてから、数時間後のことである。

 エジプトから日本に向かう飛行機の中、承太郎の隣の席の男の体を借りて話しかけている。

 全身は痛いが、座っているくらいなら耐えられる。というか耐えなきゃいけない、飛行機が最短ルートだ。

 

 ちなみにジョースターさんもホリィさんの安否を確認するため、当然この日本に向かう飛行機に乗っている。

 ジョースターさんと一緒に乗った飛行機は一度しか墜落しなかったので、承太郎はジョースターさんと一緒に飛行機に乗ることを拒否しなかったのだろう。これも私の変えた未来というわけ……か?

 ジョースターさんは現在爆睡中なので承太郎にだけ話している。

 

「偶然行き先が同じでね。みんなには内緒だぜ」

「ったく。秘密にしてえのは構わねえが、それを俺にまで押し付けんじゃあねえぜ」

「うーん、そう言われると弱いな。じゃあ言ってもいいよ。日本も広いしな」

「わざわざ誰かに言うほどのことでもねえ」

 

 虚勢だったので非常に助かった。嘘だよ、世界基準でいったら日本は狭いよ。

 探されたら一瞬だよ。私の本体はもうすでに全身骨折で入院キメてるだろうし、バレバレだよ。

 

「私が生きていると思っていた根拠を聞いても?」

 

 さて、エジプトから日本へのフライト時間は長い。

 半日以上空の上なのだ、のんびり会話をする時間は十分にある。

 エジプトで私が顔を見せたとき、承太郎だけは私の生存を確信していた。

 その理由が気になっていたのである。

 

「お前が退場した後、DIOの野郎がお前を使った世界征服の話なんざしてみせたからな。殺してねえと思った」

 

 なるほど。だとすれば恐ろしいな。私はあれでいて()()()されていたというわけか?

 あるいはかつて私がDIOに特定されたように、私の場所が彼にはわかるのか。

 DIOは私の知らない間に、私をダシにして承太郎を煽ったらしい。やめてくれ。

 

「あの場で私が死んでいたとしても、スタンドの使い過ぎという私の自滅だからDIOに殺されたわけじゃないだろ?」

「そう思うやつが果たして何人いるかな」

 

 私はそう思いたいんだが……DIOに全身の骨折られたと思ったら大変に悔しいし。

 あと、ホル・ホースの動きを止めて痛めた右腕の件は結局彼を恨みそうだし……。

 自業自得だと思うのが私の精神衛生上は良いのだが。ダメか?

 ダメそう。承太郎の目の奥に怒りが見えるので。私は違う話をした。

 

「日記は見ずに焼いてくれたのか?」

「嗚呼」

「ありがとう」

「俺がそうするべきだと思ったからそうしただけだ。理由は、お前に聞かずとも大体わかったからな」

「……なるほど?」

「今までお前が忠告してきたことは、敵とその能力についてだ。今回もそうだろうと思ったまでのこと。お前が日記の中身を見ていないことを祈るぜ。でなけりゃ、お前が狙われるということになるんだからな」

 

 これは、かなり正確に状況を読んでいる。

 

「一応推理を聞こうか?」

「さてな。日記に何かまずいことが書いてある――それは知っているだけで危ういことだ。本を燃やすだけで事が済まないのは、人の記憶を読むスタンド能力が存在しているためだ、と受け取ったが」

 

 受け取りすぎでは?

 尚更この旅の道中、私がうかつなことを言って余計な情報を与えていないか心配になってきた。

 なにかやらかしていたとしてももう全部手遅れだが。

 

「おおむね間違っていないな。私は日記の中身を全部読んだわけではない。一部を知っているというだけだ。それだけでも狙われるかもしれないが、まあ私のことはいいんだ。ともかく君が標的にされないだけでも十分だ、ありがとう」

「やれやれだぜ。お前は良くとも俺は違う。俺のいないところで勝手に死ぬんじゃねえ」

「すごいこと言うな君」

 

 ……いや本当にすごいこと言うな!?

 看取ってくれるということか? ああいや、死なせないということか。

 にしてもすごいな。ヒーローは言うことが違う。

 

「ふふ。難しいことだが、承太郎の気持ちは嬉しい。君が成年になったら頼ろうかな」

「敵がわかっているなら待つ必要はねえだろう」

 

 今の私の言葉で、やはり正確に状況を読んでくる。

 私がこう言うということは、すでに敵を捕捉しているのだと、彼は正しく理解した。

 まあ私のことだから、敵を見つけていなかったら正直に言うものね。旅の中で私のことをよくわかってくれたようだ。

 

「準備が必要だからね。それより前にやることもたくさんある。私はまず骨折を治さなきゃいけないし」

 

 エジプトの旅は無事に終わったが、それ以外にも私の頭を悩ませる厄介な未来は山ほどある。

 それを考えて憂鬱になっていたが――そう悲観することもないのかもしれないな。

 

「君がいたら誰にでも勝てる。いつか私を助けてくれ、承太郎」

 

 私は一人ではなく、仲間がいる。

 承太郎は帽子のつばを下げ、ため息をついた。

 

「どっかで囚われの姫でもやってんのか、お前は」

「あはは。いやいや、そんなことはない。ちゃんと城じゃなくて病院にいるだろうよ」

 

 病弱な肉体に囚われているという意味ではそうかもしれないが、姫という柄ではないな。

 承太郎も騎士というより……なんだ? 彼を言い表す言葉は思いつかないな。

 私にとって空条承太郎はずっと主人公だから。




他の二次創作5万字書いてる間に投稿予約があと3日分しかなくなっちゃったので途切れるかもしれない
岸辺露伴出すまでは完結にしない予定ではあるんですが、何回書いてもキモくなりすぎて……岸辺露伴のほどほどのキモさが再現出来なくて……
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