場所はちょっとした野原である。
レッド・ホット・チリ・ペッパーは通電している場所ならどこにでもいけるという意味で遠距離型である上、使用電力に応じて近距離型並みかそれ以上のパワーを発揮することも可能なスタンドだ。厄介極まりない。
だからこそ電気のある場所が非常に
それなりに想定内で事が進んでいるはずだったのだが、私は開幕頭を抱えた。
「確認していいか。私は今回の件に手を貸してくれるスタンド使いを集めてくれと言ったのだが、ここにいるのは全員スタンド使いか?」
この場にいるスタンド使いは私を含め、10人と1匹。
私とともに来たイギー、ジャン=ピエール・ポルナレフ、花京院典明。
それから空条承太郎、モハメド・アヴドゥル、ジョセフ・ジョースター。
東方仗助、虹村億泰、虹村形兆。そして
私がざっと調査した追加のスタンド使いから、康一くんは漏れていた。
そうか、そうだな。彼も当然、矢に射抜かれてスタンド使いになった人物だ。
原作で
「康一くん……」
「は、はい!」
康一くんとはすでに顔見知りだ。
承太郎と出会ったとき彼もその場にいたし、高校では仗助と仲良くやっているようで仗助からたびたび話を聞いている。散歩中に彼からあいさつされたことも何度かある。
彼が良い子だということは知っているつもりだ。
だからこそ、スタンドという物騒な力など持たせまいと、そう思っていたのに。
「この力があろうがなかろうが人は幸せになれる。だが特殊な力は責任を伴い、時として君に重大な役割を強いるだろう。もしスタンド能力を持ったことを恨む日が来たのなら、その時は私を恨んでくれ」
康一くんは私の言葉を聞き終わると、決意に満ちた表情でこう述べた。
「僕は自分の人生を誰かのせいにしたりしません。誰かのおかげで幸せなんだって思うことはあっても、誰かのせいで不幸だって思うようなヤツにはなりたくありませんから。今の僕にできるだけのことをさせてください」
私は思わず康一くんをぎゅっと抱きしめてしまった。
「うわあ!?」
「いい子だね、よしよし。親御さんも君のような息子がいたらさぞかし誇りに思うことだろう」
思わず頭まで撫でてしまった。えらいえらい。
「そのへんにしとけって」
康一くんから抵抗がなかったのでしばらく撫でてしまったが、仗助に引きはがされた。
気が付かなかったが康一くんは顔が赤くなっていたので、子ども扱いが恥ずかしかったのだろう。
これはすまないことをした。ついあまりにもよいこだったので褒めたくなってしまった。
仗助は髪型をリーゼントにするようになってから頭を撫でさせてくれなくなったからな……あの時代がはるか昔のように感じる。
「そんでよぉ、な~んでねーちゃんがこういうメンツを集められるかについては説明してくれるんだよな?」
そして私は仗助からの詰問ターンに入ってしまった。すごろくだったら一回休みのマスだ。
「仗助。今まで言っていなかったのは大変申し訳ないが……」
大仰な前置きをしてから私は言った。
「実は私、スタンド使いだ」
「はあ!? 今それか!? 言っただろちょっと前に! ちょ~っとだけ、前によォ!」
「冗談のつもりだったのに鋭いカウンターが返ってきた……心が痛い……」
「自業自得過ぎるだろ」
言うなポルナレフ、私も心からそう思っている。
私だけが小粋と思っていたジョークを挟んだのは、これから言いにくい話をするからだ。
本題を始める前に、私は仗助に怒られた。
「いいか、俺ももうガキじゃあねーんだからなッ! 危ないからって全部隠すんじゃねえぞ……って、今まだガキだろって顔したな!? そういうのわかるんだぜ、仗助くんはよ~ッ!」
「わかったよ。全面的に私が悪かった」
せめて仗助があと2歳ほど歳をとっていたら、昔の承太郎や花京院と同じくらいだと思って、当時の彼らと同じくらいの扱いを意識することも可能なのだが。
そうだとしても、仗助に関しては生まれた時から知っているのでなかなか難しい。どうしても小さい頃の姿が重なってしまうので、過剰にこども扱いしてしまう。
「大層壮大に言えば、私はスタンドを使って世界の平和をそれなりに保っているわけだが、個人でやるにはデカすぎる仕事なのでね。パトロンがいる。それがスピードワゴン財団にして、それと繋がる彼らなわけだ」
このあたりに関しては、ホル・ホースとのつながりがうっかりバレたときにも仗助にちらと話したことがある。そのときには組織名を伏せたが――それは万が一にもジョースターさんについて、仗助にバレるとまずい時間軸だったからだ――今となってはスピードワゴン財団について述べても問題がない。
「それから億泰と形兆くんについてだが。スタンドを発現して間もなく、仗助にそれを使ってくれと頼んだことがあっただろう」
「ああ……あの難病っつってた男か?」
「それが億泰の父親だ」
億泰たちの父親は、なにもDIOが死んだ瞬間、原作のような化け物になったわけではない。
1年ほどかけてゆっくりと、人間と肉の芽が混じり、不死の化け物へと変化したのだ。
完全に混ざり合う前だったからかはわからないが、クレイジー・ダイヤモンドが、アスファルトを原材料のコールタールに戻すように。億泰の父を、『人間』と『肉の芽』の原材料ごとに分類することができたというわけだ。分類した後の肉の芽は紫外線照射装置で焼いた。
「やっぱしそうかァ。俺ァ先生が親父を治すスタンド使いを見っけてくれたことしか知らなかったけどよ。今まで治すスタンドっつーのは、トニオさんのか、仗助のクレイジー・ダイヤモンドしか見たことがねえ。うすうすそうだったんじゃあねえかと思ってたんだ。なっ兄貴、仗助は俺らの親父の恩人だぜ!」
「ふん……」
形兆くんは非常に不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「というわけで彼らとは幼少期から親交があってね。それで他のみんなは」
スターダストクルセイダースの面子を見やる。
「友達」
「グレートに説明を省きやがったな」
「仗助、友情というのは説明できないものなんだ。感じるものだぜ」
「ああ。でもどこで出会ったのかくらいは言えるもんだろ」
「……」
実際それぞれ初対面はどこだったかな?
一方的な出会いという意味ではエジプトより前に顔を見ている者も多い。
特にジョースターさんに関しては、私は
私の本体、東方素子として彼らに出会ったのは間違いなく杜王町だ。もうそういうことでいいだろうか。
私は仗助に紹介しなおした。
「では友達じゃなくて仕事仲間だ」
「友情を簡単に捨てんな」
「ビジネスというのは時として情を排除しなければならぬ場面があるものだ」
おっといけない。甥と叔母の和やかコントをやっている場合ではなかった。
皆の私を見る目が徐々に詐欺師を見るそれに変わりつつあるような気もする。
あまりのらくらと未成年の追及を躱すのは、人として信頼を失う行為のようだ。
「詳しくはそのうちね」
問題は先送りするに限る。未来の私が何とかするだろう。