人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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【4部】音石明の情報

「というわけで各自、ある程度報告を貰おう。入院患者とじゃんけん小僧は懲らしめたんだったかな?」

 

 言っておいてなんだが、この言い方だと患者とこどもをいじめた外道に聞こえるな。

 一番に話したのは花京院だ。

 

「山岸由香子とは話すだけで終わりました。聞き分けが良いだけか、後から暴れるつもりなのかはそのときになってみないとわかりませんね」

 

 増えてしまったスタンド使いは、私が先ほどざっと調べたところでは4人。

 じゃんけん小僧の大柳賢、交通事故で入院中の噴上裕也。それからラブ・デラックスの山岸由香子に、ゆすり屋の小林玉美だ。

 

「小林玉美は……」

 

 アヴドゥルがものすごく目をそらした。

 

「まあその、しばらく悪さはできまい」

「歩けもしねえだろうな」

 

 現場を見たらしいポルナレフが付け加えた。ロクなことにならなかったようである。

 正義感の強いアヴドゥルとゆすり屋は少々相性が悪かったかもしれない。主に懲らしめすぎるという意味で。

 

「俺と仗助も戦ったぜ」

「ああ。鉄塔のスタンド使いは誰かにそそのかされただけみてえだった」

「豊大くんがどうかしたのか?」

「知り合いなのはマジなのか……」

 

 話を聞くと、仗助と億泰は鉄塔のスタンド使いこと豊大くんと交戦したらしい。

 鉄塔から出ようとでも思わない限りそんなことにはならないだろうに、と思ったが、彼は鉄塔から出ようと、億泰をハメて鉄塔の中に閉じ込めたらしい。

 戦闘になり、最終的に負かされた豊大くんの発言によれば、友人が危篤状態らしく、見舞いに駆けつけるためにはこのスタンドから抜け出すしかない。そのために一時的にでも誰かを閉じ込めるしかなかったのだ、とのこと。そんでもって、その友人というのは私、東方素子のことだという。

 ええー……マジか。

 

「それは責任を感じる。私のせいと言ってもいい」

 

 豊大くんと友達になったことを悪いとは思わないが、豊大くんに私が危篤だという嘘をあっさり信じさせてしまうほど病弱であることには負い目を感じる。あるいは、もう承太郎たちに名前を告げたから構わないだろうと、豊大くんにも私の本名を告げたことが不味かっただろうか。

 

「なるほど豊大くんを使うとは。彼が急ぎ私の安否を確かめるためには、誰かを閉じ込めて外に出るほかない。その誰かをこちら陣営のスタンド使いにすることで、豊大くんが私の安否を確認するまでの間は拘束が可能で、確実にこちらの戦力を削ぐことができる。最小の嘘で最大の効率を叩きだす作戦だ。向こうもやるじゃないか」

「感心している場合ではないぞ」

 

 はい。その通りですアヴドゥル。

 

「あんなに鉄塔から出たくないと言っていたのに、私のために出ようと思ってくれたとは嬉しいね」

「友情を感じている場合でもねえぞ」

 

 はい。その通りですポルナレフ。

 

「……あとで治しに行くか」

 

 仗助が気まずそうに言うくらいには、豊大くんは結構ボコボコにされたらしい。

 私もお見舞いに行かなければなるまい。甥の非礼を詫びなければ。

 

「さて、そのほか新手のスタンド使いとの接触などは? 今日だけの話でなくとも構わないよ。矢が盗まれたのが発覚したのは2日前だが、もう少し前から盗まれていた可能性はあるのでね」

「ちょっと前に、間田敏和っつースタンド使いには俺が一発グレートなのをお見舞いしてやったけど」

「は? 聞いていないぞ。いつの間にそんな危ないことしたんだ、仗助」

「危ないことしてたのはアンタだろッ!」

「私か!?」

 

 危ないことの心当たりは山ほどあるが、仗助にバレそうなものとなると急に心当たりがなくなる。

 生身ではそれほど危ない橋を渡っていないはずなのだが……。

 これはもしかして私、ポルナレフを馬鹿にできないほどの失態を何か犯したか?

 

「青少年を誑かしただろーが」

「それは本当に心当たりがないな」

 

 ……? ……。……いや、心当たりはやはりないな。

 

 まあいい。このことは後で聞けばいいだろう。

 他にスタンド使いとの交戦について報告しだす者はいなかったので、私は話を進めた。

 

「他にないな? では肝心の矢を盗んだ犯人についてだ。先にポルナレフに言っておくことがある」

「なんだ?」

 

 私はちょいちょいと手招きをして、ポルナレフを近くに呼んだ。

 内緒話をすると思った彼が私に顔を近づけてくれたが、私は小声にすることもなく、彼に言った。

 

「油断したら死ぬぞ」

「わかったよ!」

 

 ポルナレフはハンズアップして私の忠告を聞きいれた。

 それを確認して、私は知りうる情報を語る。

 

「名前は音石明、音楽好きの青年でギターを持ち歩いている。主な情報源は財団のようだから、財団が知り得る情報のすべてを把握している前提で動くべきだ。彼のスタンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーは電気の通っているところならば通り抜けられる。射程距離は電気のある限りの場所、出力に関しても電気がある限りならば相当なパワーが出せるはずだ。彼に引きずり込まれたら電気の中で焼け焦げて死ぬことになるから、その前に体の一部でも切断して置いて行ってくれ。その場に仗助がいれば体の再生が間に合うよ、きっと」

「人の能力前提にスプラッタを推奨すんのはなんだかなあ……」

 

 仗助は嫌そうだが、やめろと言ってこないのは、己の役割を認識しているからだろう。

 

「なんでそんなに詳しいんだよ」

 

 俺のときはじゃんけんすんなしか言わなかったくせに、という不満をポルナレフは隠しもしなかった。

 

「なんでだと思う?」

 

 ここにいる皆は比較的温厚なので、質問に質問で返すなと突然キレることはない。

 かといってこの程度で誤魔化されてくれるほどやさしくもない。

 一番に発言したのは、意外にも康一くんである。

 

「もう襲われているから?」

「惜しい。警告を受けただけさ」

 

 私は珍しいものを見た。承太郎の呆れ顔だ。

 

「同じだろう」

「殺す気があったかどうかは大事だろう、裁判でも?」

 

 未必の故意とかいうやつだ。私も法律家ではないので詳しくはない。

 実際、レッド・ホット・チリ・ペッパーにされたことはそれほどないはずだ。

 ちょっと静電気でビリビリしただけだ……ああ、あとは。

 

「ギリギリ殺人予告までしか受けていないぞ」

「なんのギリギリだ?」

 

 そうだねアヴドゥル。殺人予告は立派な犯罪であるため、なにもギリギリではないね。

 余裕でライン越えである。

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