人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

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【4部】次々の挙手

「さて、この場で私を断罪したい人は他にいないか? そうでないならお開きにして、あとはタイマンで文句を受け付けることにするよ――」

「わしゃちいっと文句があるぞ!」

「どうぞ、ジョースターさん」

 

 即座に挙手したジョースターさんに、私は間髪入れずに発言権を移した。

 後からねちねち言われるより、この場で全員に鬱憤を晴らしてもらった方が気が楽だ。

 

「お前さんがここまで先を見ていたというんなら、仗助たちに音石明の相手を任せる必要はなかったんじゃないかのう!」

「ジョースターさん。私が罠を用意していたらいいな、とかさっきまで言っていたのに……」

「罠どころじゃないもんを用意しとったお前さんが悪いじゃろ!」

 

 体面を保たねばならぬというのに、ぐうの音もでないような正論をぶつけてくるのはやめてほしい。

 

「わかった、言い訳をさせてくれ。私はもちろん、仗助、億泰、康一くんならばこの問題を解決できると信頼していたが、それでもバックアップ体制は万全だった。どうせすぐに事態を理解した花京院が彼らのもとに行くと思っていたし――」

()()()?」

「失礼。事態に気づいて()()()花京院が助けに行ってくれるし、そもそも音石明の狙いは私とジョースターさんの命だ。だからこちらには強力な護衛を用意していた――長いこと窮屈にさせてすまないね、もう出てきていいよ」

 

 私とジョースターさんが乗っていたのはコンテナ船だ。

 だから当然、海上コンテナを乗せている。

 

 私のすぐ後ろにあったコンテナの()()から、メキメキという音がした。

 力任せに開けたらしい。まあ、コンテナというのは内側から開けられる想定はされていないので、仕方のないことだ。

 スタープラチナがコンテナの破片を投げ捨てる。

 

「やれやれだぜ……窒息させる気か。いつまで話してやがる」

 

 私も同じことを考えていた。

 皆どれだけ喋ることがあるんだろうと――私の場合、窒息の理由は皆に責められているという精神的なものだが。

 

「は、ハアア!?」

「承太郎さんが2人!?」

 

 コンテナから現れた2()()()の承太郎に対し、新鮮に驚いてくれたのは学生組くらいなもので、アヴドゥルとポルナレフは頭を抱えている。

 私が似たようなサプライズを彼らに仕掛けるのはこれが初めてではないので、飽きられているのだろう。

 呆れられているの間違いかもしれないな。

 

「いつから?」

「そんなに前からじゃないよ。私とジョースターさんが船に乗るタイミングで承太郎も乗った」

 

 花京院の問いに簡潔に答える。

 私がちょろっとジョースターさんの気を逸らしている間のことだ。

 ジョースターさんは年齢の割に元気だが、それなりに耳は遠くなってきているので、誤魔化すのは簡単だった。

 

「お前さんなあ、わしが言わなかったら承太郎を放置か!?」

「そりゃみんな帰った後、あなたには言ってたよ」

 

 承太郎はとっくに成人しているとはいえ、親の事後承諾を得るくらいの事態ではあると考えていた。

 

「花京院は気づいてたろう?」

 

 花京院は表情を崩さず、()()()に冷たい視線を向けた。

 表情を大きく崩したのは、花京院の隣にいた承太郎の方である――つまり、偽の承太郎(オインゴ)である。

 

「もっと演技の指導を受けたほうが良い」

「花京院、オメーがッ! とんでもねえカマかけしてくるからだろーがッ!」

 

 既にスタンドによる変装を解除し、承太郎のコスプレをしただけになったオインゴがヒステリックに叫んだ。

 一瞬にして姿の変わったことに学生組は驚愕していたが、花京院は歯牙にもかけず、淡々と忠告した。

 

「それくらい躱せないと、承太郎には成れないな」

「本当かよ!? おい承太郎、お前はマジで花京院に『今日は一緒のベッドで眠れるのかい?』とか言われて眉一つ動かさねえってのか!? お前らデキてんのかと思って震えちまっただろーがッ!」

「……やれやれだぜ」

 

 それはちょっと面白すぎるので、私でもスルーするのは無理かもしれない。

 流石だ。花京院、カマのかけ方が桁違いである。

 

 オインゴはこれまでに演技の指導を受け、あの頃よりも格段に演技がうまくなった。

 そんなオインゴでもポーカーフェイスを保てないほどの衝撃を、花京院は軽々と与えて来る。

 演技の指導は専門ではないからと口を出してこなかったが、花京院に監修してもらった方がオインゴはもっと成長できそうだな。

 

「イギーをつけたんだから、わざわざ正体を暴かなくとも、作戦なんだろうなあで流してくれてもよかっただろう?」

 

 イギーの鼻ならば、承太郎が偽物であることなど即座に看破できる。

 しかし、イギーは既にオインゴと何度か組んで仕事をしたことがある故に、わざわざ吠えたりはしない。

 またかと呆れた顔をする程度だ。

 

「作戦内容を聞かされていればそう思ったかもしれませんね」

「今後は言語によるコミュニケーションを大事にしようと思う」

 

 やはりどこにいっても報告・連絡・相談は大事だというわけだ。

 信頼を言い訳にするのはよくないと私も学ばせてもらった。

 

「では、役者は揃ったということでそろそろ解散――」

 

 この場をお開きにしようとしたが、まだ手が挙がったので諦める。

 

「はあ……どうぞ、ポルナレフ」

「おいッ、今回は俺もまともなこと言うからな!? 敵がスピードワゴン財団の内側にいるとわかっていたんなら、俺たちの作戦は筒抜けかもしれねえってことだろうが! お前がせっかく考えた作戦も全部知られてんなら意味ねえだろ!」

 

 ポルナレフらしからないが、確かに彼の言う通りまともな内容だった。

 

「だから君たちにも話さないままだったわけだ」

 

 そのくせ、ここにいるオインゴには話していた、とかいうのが気に食わないのだろう。

 こちら側にもたくさんの理由があるから許してほしいものだ。

 ほとんど私兵になりつつあるオインゴたちと比べて、敵側に戦力として警戒されている皆のもとに情報を届けるのは、難易度が随分と違う話なのである。

 

「さて、今財団では、絶対に信頼がおけると判断した職員を集めて、私がチームリーダーになって進めている極秘作戦があってね。情報通信網の増強だ。今昔、戦争で最も重要なのは情報であるからして、敵に悟られないように情報を通達する方法はいくつあってもいい」

「するってーと、盗聴できねえ電話とか?」

「電気を使用している時点で音石明にとっては盗聴し放題だっただろう。もっと昔ながらの方法だ」

「じゃあハトか! 伝書バト!」

「正解。最も優秀な配達屋には作戦名と()()、サヴェジ・ガーデンという名前を与えることにした」

 

 珍しく理解の早いポルナレフに同意して、私は彼らに正解を示した。

 私に名前を呼ばれたサヴェジ・ガーデンはそそくさと近づいてきて、なつっこく私の手のひらの匂いを嗅いだ。

 

「紹介しよう。今回の立役者にして、当代のサヴェジ・ガーデンだ」

「リスじゃねえか!?」

「伝書リスさ。可愛かろう」

 

 ポルナレフが驚愕した通り、私の手のひらの上に乗ってきたのは可愛らしいリスである。

 日本にはリスが意外と繁殖している。

 公園などに近づかない者は気づいてもいないだろうが、東京なんかの都会であっても、自然の多い場所にはいるものだ。

 都会であってももっと目にする生き物――鳩よりも、リスの方が隠密が上手いという証拠でもある。

 

「生身の私は主に公園にいるのでね。そこにいても違和感のない動物で、配達ができるのなら、鳩でもリスでも構わないのさ」

 

 犬や猫では少々目立ちすぎる。どこかから逃げたペットではないかと疑われたり、保健所を呼ばれるリスクがある。

 野良で生息している生き物で、それなりの知能がなければならない。

 私もリスにそれほどの能力があるとは思っていなかったが、財団職員の仕込みが良かったらしい。

 この世界では動物もスタンドを使うし、知能もきっと種族ごとよりは個体ごとに決定されているのだろう。

 

「もちろん、リスを通した作戦内容すら知られていたのなら、もっと別の敵がいることも想定できたが、そうはならなかった。私はこういったことを繰り返し、スパイの知っている内容で彼の居場所を探ったわけだ――他に文句のある者は?」

 

 私の苦労を少しは想像してくれたのか、これ以上の文句は飛んでこなかった。




立てたフラグを回収するのに1年以上かかってしまった。
公園でリスと戯れるお姉さんに惚れる間田くんの話は一瞬で書けたのに……。
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