人の体を乗っ取るスタンド使い   作:九条空

83 / 83
【4部】素敵な後始末

 退治したドブネズミに向かい、仗助が啖呵を切る。

 

「お……お前なんか全然怖くなかったぜバ~~カッ!」

 

 ――結局大体原作と同じになってしまったな。

 

 どれだけ巧妙な奇襲を仕掛けても、敵が2匹いる時点で、あっさり仕留められるのは1匹だけだ。

 私にできることと言えば相変わらず助言だけ。

 主人公が2人もいるとなれば頼もしすぎて、私がいる意味などほとんどなかっただろう。

 原作の承太郎は多少溶かされていた気がするので、その傷がない分多少はマシだっただろうか。

 

「ねーちゃん、これを一人でどうするつもりだったんだよ」

「そりゃ当然、一人じゃないさ。私に戦闘能力はないから、できることといえば先の承太郎のように囮だけだ。代わってくれてどうもね」

 

 囮という発言に眉を寄せたのは仗助だけではなかった。

 並んで似たような表情をしていると、本当に似ているな。

 これを見れば、2人の間には誰でも血縁関係を感じるだろう。

 私は2人が同時に呆れるのを見たくはなかったが。特に呆れられているのが自分の場合。

 

「一人じゃねえってのは……」

「君らと違って彼は()()だ。私が一発貰う前に、一撃で決めてくれただろう」

 

 親指と人差し指だけを伸ばし、バン、と銃を撃つジェスチャーをする。

 それで2人は納得した。()が私の相棒的立ち位置であることは2人とも知っている。

 

「仗助にはもうひとつ頼みたいことがある」

「これ以上の厄介ごとじゃねえだろうな?」

「ああ。帰りにスピードワゴン財団管轄の病院に寄って、3人ほど治して来てくれ。それでこの事件は死者ゼロで済むから」

「オエエ……」

 

 やっぱりこの「オエエ……」は私に対して言っているのかな。

 既に犠牲者が出ていることを彼らに伏せ、初期想定では仗助を連れて来るつもりがなかったというのは、人命を軽く見ているととられてもおかしくはない。

 

 仗助は「言いたいことは山ほどあるが」という表情のまま、何も言わずにその場を去った。

 これに関しては、承太郎がいてくれてよかったのかもしれない。

 たぶん仗助が言葉を一旦飲み込んだのは、承太郎の前でいろいろと言うには()()()()と思ったからだろう。

 

 まさか承太郎が我が家に持ち込んだ気まずさが役に立つときがくるとはな。

 仗助が一度冷静になってくれれば、私に言われる文句も少しはマシになっているだろう。

 冷静に考えた分、私の精神にクリティカルを与え得る精度にまで磨き上げられる可能性の方が大きそうなことについては、一旦目を瞑ることにする。

 

「安心して帰ってくれていいよ、承太郎。これから2体目のスタンド使いを倒しに行く、なんてことはないからね」

「確かに聞いたぜ」

 

 嘘だったら承知しねえからな、という副音声まで聞こえた。

 私は肩をすくめて、足を組みなおした。

 スタンド使いを倒しに行くわけではないが、スタンド使いと会う予定はある。

 敵じゃないから承太郎も許してくれるだろう。

 

 承太郎が去った後、その場でしばらく待っていると、ホル・ホースがやってくる。

 

「本業って言い方にゃ文句がある、素子」

 

 いきなり文句だった。お疲れと言う隙もない。

 

「そうかい? しかし射程も君のが長いだろ、ホル・ホース」

 

 仗助はベアリング弾を使って虫食いを倒した。

 近距離パワー型ならばスタンドの応用により、指先で弾丸を弾くことで拳銃なしに発砲できるという例だが、ホル・ホースはスタンドが拳銃なのだ。間違いなく本職だろう。

 

「俺はガンマンであってスナイパーじゃあねえんだぜ」

 

 頷く。

 それに関しては理解しているつもりだ。スナイパーのスタンド使いなら別にいるし。

 

「でも1kmくらいなら余裕だろ?」

「おーっと! スタンド能力について、詳細は秘匿させてもらうぜ。限界伝えるとお前、本当に限界ぴったりで作戦を考えるからな!」

 

 まったくもってその通りなので、ホル・ホースは正しい。

 私が把握しているホル・ホースの射程は約2kmだ。ホントはもっと撃てるのかな?

 今後の作戦はもうちょっと彼を遠くに配置してもいいのだろうか。

 私がにやり笑うと、ホル・ホースがため息をついた。

 

「俺の歳を考えろよ、嬢ちゃん。スタンドは精神力だ、衰えもする。いつまでも最盛期の俺のつもりで計画を立てると、どっかで狂うぞ」

 

 なかなかの至言だ。

 承太郎だって衰えている。ホル・ホースだってそうだろう。

 

「だが、見栄のために己の衰えを秘匿して、私の作戦を失敗に導くような愚策を君が取るわけがない。これは未だ()()()()忠告ということだ。衰えて尚、私が君の限界と思っていた距離くらいは撃てるんだろうね?」

「用事を思い出しちまった! 俺は帰るぜ、じゃあなッ!」

 

 逃げるように退散するホルホースの背中を眺め、私はくつくつ笑う。

 今日も私を諫めるのを失敗した騎士様の勇敢さを称え、ホル・ホースの射撃限界の距離を上方修正するのはやめておこう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ジョジョだったかもしれねェ…(作者:aka1)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

ジョジョをほんのり知ってる(知らない)オリ主が承太郎の双子として産まれて旅についていく話▼見切り発車です▼完結しました。3部以降は書けたら書くって感じで


総合評価:10605/評価:8.35/完結:27話/更新日時:2025年09月13日(土) 23:23 小説情報

一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎(作者:ラムセス_)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

一人歩き型スタンドになってしまった転生オリ主が承太郎に憑りついて原作を走り抜ける話


総合評価:39641/評価:8.95/完結:85話/更新日時:2024年04月21日(日) 12:08 小説情報

ほんの少し思い出してもらうだけの話(作者:氷陰)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

M県S市杜王町。▼主人公は自分がスタンド使いと気づいたので、原作に関わったり関わらなかったりしつつ日常を過ごす。▼名は『藤堂一茶』。スタンド能力を活かして『藤堂霊媒相談所』を運営しながら学生生活を送る。もしかすると原作キャラも訪れる…かもしれない。来ないならこちらから行く。▼ただそれだけの話。▼見切り発車


総合評価:21487/評価:8.63/完結:17話/更新日時:2021年08月15日(日) 23:45 小説情報

【完結】ジョジョの奇妙な実況プレイ_第三部主人公チーム全員生存ルート(作者:すも)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

ジョジョの小説を書いてみたかったのでbiimリスペクトして書いてみました。▼不定期更新となります。▼2022/06/28▼完結しましたが今後は後日談などを投稿する予定です。▼2022/12/03▼蛇足を追加。これにてIF編は終了です。


総合評価:12267/評価:8.59/完結:83話/更新日時:2023年07月22日(土) 20:40 小説情報

転生したら柱の女だった件(作者:ひさなぽぴー)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

気づいたら紀元前だった。▼何を言ってるかわからねーと思うが、つまりは転生だ。▼おまけにどうもわたしは人間じゃないらしい。よりにもよって柱の男の一族に転生って、ちょっとそれってどうなんですかね!▼でも下手するとカーズ様に殺されちゃう。それは嫌だ!▼てな感じで、生きるためにカーズ様の仲間にならざるを得なかった転生者が、それでも人としてジョジョの世界でなるべく原作…


総合評価:15461/評価:7.89/連載:108話/更新日時:2021年01月16日(土) 23:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>