アヴドゥルとはここでしばらくお別れだ。
タイミングは正確に思い出せないが、鶏かなんかに餌をやりながら再登場していた気がするので、離脱している間は平和だろう。
私は危険の多い――引き続きスタンド使いが何度も襲い来るであろう、ジョースターさんたちの方についていくので、やっぱりアヴドゥルとはしばらく話すことができない。
だから最後に軽く話しておこうと、アヴドゥルの検査を終えた医者の体を借りている。
「悪かったねアヴドゥル。意識がなかったとはいえ、人に体を操られては気分のいいものではないだろう」
黙っていることもできたが、彼はそういう陰湿なのを嫌いそうなタチだ。
なによりあの花京院の推理を見て、彼らに隠し事をするのは難しそうだと観念した。たぶんいずれ全部バレる。だったら早めに自白しておいた方が心証もよかろう。
無断で体を操ったことを正直に話して謝ると、予想外の返事が来た。
「いいや、そうでもないさ。私の体を操っていたのは仲間なのだから」
不意打ちだったので、ぽかんと口を開けてしまった。
「花京院に聞いた。君は自分の身を犠牲にして、花京院とポルナレフを守ったのだな」
「いやいや。そんなに大げさなものではないよ。ちょっとした筋肉痛みたいなものなんだってば」
ちょっと無理をして、私は右腕をあげてみせた。
私の体は貧弱なので、承太郎だったら半日で治しそうな怪我も、1週間くらい寝込まないと治らないだろう。
この右腕が完全に痛まなくなるにはひと月くらいかかってしまうかもしれないが、現状動かせはするので問題ない。
アヴドゥルは深刻な話をするかのように、目を伏せた。
「白状しよう。私は君の能力が卑劣なものに思えていた」
「それは実際そうだって」
「いや。君は常に安全圏にいて、なんのリスクもなしに行動できると勘違いしていた。そんな都合の良い能力など存在しないと、もっと早くに気づくべきだった。君は我々に気づかれないよう、ずっと危険を冒していたんだな」
なんだかアヴドゥルのなかで、私が思慮深く、大層仲間思いの善人になっている気がする。そんなことはない。
「アヴドゥル、私がスタンド使いに能力を使ったのはホル・ホースが初めてだよ。これまでにずっとリスクを背負ってきたわけじゃない」
「だが今回、君はその力を使った。今までの旅路も、いつでも使えたし、いつでも使う気だった」
それは――実際そうだ。そうしなければならないのだったら、いつだってリスク承知で使用しただろう。
なにしろスターダストクルセイダースの面子が減っては困る。原作から逸れそうだったり、原作が思い出せない戦闘中に彼らが死にそうだったら、今後も迷いなくこの力を使うだろう。マジで痛いし最悪死ぬから嫌だけど。
「今までの非礼を詫びよう。すまなかった」
「え非礼!? なんかあった!? ……いや、ない……ないな!? 謝る必要ないって!」
頭を下げられてしまったので、私は大変慌てた。
アヴドゥルから失礼な扱いを受けた記憶はひとつもない。
女性にビンタされた件について、私がもっとしっかり謝らなければならないほどだ。
「それから、彼ではなく、彼女だったのだな」
それも花京院から聞いたのだろう。
「どっちでもいいだろう、どっちの体も借りるから」
「いいや、仲間のことを誤解したままでいたくない。それにこの旅が終わればいつか、会ってくれるんだろう?」
「……それはまあ。そうだな」
私はおよそ、四部が始まるころまでは、彼らに正体を秘匿しておきたい事情がある。
もしも原作通りに進んでしまえば、そこにアヴドゥルはいない。
「君に会いたいよ、アヴドゥル」
私はその未来を覆すためにここにいるのだ。だから彼にこそ、直接会いたい。
思いを告げれば、アヴドゥルは微笑んだ。
「私は君の覚悟を知った。DIOを倒す仲間として、君ほど頼もしい者もいないだろう。しばらくは別行動だが、これからもよろしく頼む」
「過大評価だぁ……」
私は確かに、彼らの信頼を勝ち取るために努力してきたつもりだ。
だがここまでは望んでいなかった。めちゃめちゃ期待されている気がする。
彼を失望させたくはないがしかし、その、私もそんなに能力の高い存在ではないので……。
結局返す言葉が見つからなかったので、私はスタンドで逃げた。
息抜きで書いているので、一話あたりの文章量にえげつねえバラつきがありますが、まあ息抜きだし……そんな細かいこと気にするより先を書いた方がみんな嬉しいよな、ハム太郎?