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此処「スネージナヤ」には、『ファデュイ』と呼ばれる組織が存在している。
彼らは女皇に仕えし侵攻部隊。表では合法的な圧力を掛け、裏では傾国の策略を巡らせる他国の悩みの種である。
そんなファデュイは、『執行官』と呼ばれる十一人の幹部の指揮によって動いている。
執行官―――ファトゥス。それこそ女皇の衛兵。十一人の彼らは、皆等しく悪徒と呼ぶに相応しい。或いは、不明瞭と言うべきか。
しかし、まぁ―――いつの時代、どんな世界にも居るものなのだ。『常識』の外側、『理解』から逸脱した存在が――――――『例外』が。
十一位という位階に分けられている彼らは、しかし正しく言うならば、決して十一人で構成されているという訳ではない。訂正するならば、正しくは十二人。
「公子」―――タルタリヤ。
「富者」―――パンタローネ。
「淑女」―――シニョーラ。
「傀儡」―――サンドローネ。
「散兵」―――スカラマシュ。
「雄鶏」―――プルチネッラ。
「召使」―――アルレッキーノ。
「少女」―――コロンビーナ。
「博士」―――ドットーレ。
「隊長」―――カピターノ。
「道化」―――ピエロ。
そして、最後に――――――「君主」ネルウス。
《番外位階》。ファデュイにおける唯一無二の戦力にして、ファデュイが最も危険視する存在。
凍てつく地の最果て。スネージナヤに有る神殿の更に奥深く、天蓋無き大穴にひっそりと佇む孤高の者。
誰にも興味を示さず、何にも関心を持たず、故に寛容であり、寛大であり、されど残酷で、無情である神の如き者。
それが今―――動き出した。
「わぉ…これは、どういう事かな?」公子は驚き、そして訝しんだ。
「はて、天災でも起こるのですかね? 貴方が出てくるなど」富者は奇心を抱いた。
「遅い参加ですね」傀儡は警戒した。
「久しいな。まさか君が参加してくれるとは思わなかったよ」雄鶏は驚き、喜んだ。
「……」召使は口を閉じ、僅かに構えた。
「久しぶりー」少女は微笑み、語り掛けた。
「珍しい事もあるものだな」博士は笑った。
「彼女の死は、彼が出る程のものだった様だな」隊長は死者へと告げた。
「よく来た、君主」道化は歓迎した。
「―――あぁ」君主は、ただそれだけを発した。
ロザリンは死んだ。これはその葬儀であり、鎮魂であり、見送りである。
亡き仲間の旅立ちに、遂ぞ君主すらもが参加した。だが、それは決して仲間を想った訳でも、義務を感じたという訳でもなかったのだ。
単なるついで。“彼ら”がこの世界に訪れた事を知り、外へと顔を出してみれば偶然的にソレが行われていた。
一応、立場としてはファデュイに入っているのだから、参加するか。そんな、気紛れの様な感覚で出てきたのだ。
君主は棺の中央へと立ち、一つの花を置いた。
「名も知らぬ同士よ。見知らぬ地に果てた者よ。凍てつく棺に永き眠り、この空より頂の熱い碧から我らの路を見届け給え」
何を想うでもなく。しかし、彼を知る彼らはそれ故に疑問も不快も抱かなかった。