番外位階「君主」ネルウス。俺は、あれを人だとは思わない。ただただ無情に、周囲に在るもの全てに関心を向けず、何もかもを凍てつかせる戦い方は、もはや我を失った神も同然だ。
アレとの戦いは戦いじゃない。アレにしてみれば、俺なんて部屋に入ってきた虫と何ら変わらないんだろうね。
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「相棒。もしネルウスってやつに出会ったら、戦わずに逃げる事をおすすめするよ」
「いきなりどうしたの?」
此処は璃月。七神の一柱たる岩神モラクスの領域である「契約」の国。神託より栄光ある「神と共にある地」である。
知恵の国であるスメールで起きた様々な出来事を終息させ、ようやっと落ち着いた事を期に、旅人である空とお供(非常食)であるパイモン(「非常食じゃないって言ってるだろー!?」)は、久々に璃月へと訪れていた。
見知った人たちと顔合わせを済ませ、偶然にも出会ったタルタリヤと璃月に数ある食事処の一つで食事をしている時、タルタリヤからそんな忠告をされたのだ。
いつもの飄々とした雰囲気はどこへやら、タルタリヤは真剣な表情を浮かべていた。
「まず、そのネルウスって誰なんだ?」
運ばれた料理をもぐもぐと頬張りながら投げられたパイモンの問いに、タルタリヤは食事を止めて答えた。
「ファデュイの番外位階、『君主』ネルウス。誰が何と言うまでもなく、スネージナヤという国において最強の男だよ。彼は君を探してる」
「えっ、なんで!? 俺何もしてないよ!」
「理由は俺にもよく分からないんだ。ただ、君を探してるのは確かだよ。つい最近まで姿すら見せなかったのに、いきなり現れて旅人を探すって消えたよ。本当、よく分からない人だ」
「タルタリヤは戦った事あるのか? そのネルウスって奴と」
ファデュイの序列十一位「公子」タルタリヤ。
彼は旅人が知る中でも、かなりの戦闘狂である。家族想いな一面もあるが、やはりそれよりも格上に挑むその性格が印象的だ。
そんな彼は、ネルウスと戦った事があるのだろうか? パイモンは純粋に、それが気になった。
「うーん…まぁ、立ち向かった事はあるよ。けど、戦ってはないかな」
「どういう事だ? 立ち向かったって事は、戦ったって事じゃないのか?」
「あぁ、ごめんごめん。言い方が悪かった。
思い出す事すら苦しく、痛々しい。そんな感情が、タルタリヤから溢れていた。
「公子」タルタリヤというよりは、ただのタルタリヤとして「君主」ネルウスが居る場所へと辿り着き、戦いを挑んだ。そこまでは良かったのだ。
だが―――そこから先は、ただの殺戮。もはや蹂躙と例えることすら生温い一方的な虐めが、そこにはあったのだ。
とはいえ、それが凄惨な戦闘であったのかと言われれば、それは違う。一方的な虐めとは言ったものの、しかしネルウスがタルタリヤをいたぶったという訳ではないのだ。
ただ単に―――立ち向かって一秒にも満たない時間で、タルタリヤが氷漬けにされてしまったというだけの話しなのだ。